640万人ともいわれる国外へ避難したシリア難民が、アサド政権が崩壊した今、帰国する動きが加速している。番組では、エジプトに家族と避難しながらも夢を追い続けるシリア人男性を現地で取材した。

■アサド前大統領が声明

シリア アサド前大統領 「私は辞任や退避は考えなかった。唯一の方針はテロリストと戦い続けることだった」

 ロシアに亡命したシリアのアサド前大統領が、16日に政権崩壊後初めて声明を出した。

 一方、およそ640万人いるとされる国外に避難したシリア難民の間では、今、故郷に戻ろうとする動きが加速しているという。

■祖国帰還望むシリア難民

 2012年にエジプトに避難し、現在家族4人で暮らしているアミール・アワドさん(40)。

アミールさん 「ついにみんなが本来の祖国に帰れるのです。壊れた家を再建し、兄弟に会い、みんなが再び集まって…こういったことを我々は願っているのです」

 昼はシリア料理店で厨房(ちゅうぼう)に立ち、夜はスポーツジムでトレーニングを指導。アミールさんは9歳からレスリングを始め、国際大会での優勝経験もある。

 エジプト避難後は、2021年の東京オリンピックに難民選手団の一員として出場を目指し、トレーニングに励んでいたが、そのさなか、スマートフォンに思いもよらぬメッセージがきた。

スマートフォンにきたメッセージ 「大会に出場すれば家族を誘拐し殺害する」

 アミールさんによると、これはアサド政権から送られた脅迫メッセージだったといい、2019年から2年間で合わせて30通以上も届いたというのだ。

アミールさん 「シリアにいる家族に対する侮辱や、彼らへの脅迫もありましたし、私も妻もたくさんの脅迫電話などを受けました。東京オリンピックに出ることができれば、私は自分の人生を誇ることができたでしょう。でも、あの政権のおかげでそれもかないませんでした」

 アサド政権に翻弄(ほんろう)され、レスリング選手としての夢を奪われたアミールさん。今は、エジプトの子どもたちなどにレスリングの指導を行っている。

アミールさん 「現在は国際的なレベルのコーチとなれるよう動いています」

 アミールさんには、故郷のシリアで実現させたい夢がある。

アミールさん 「シリアに帰って国を再建したい。そしてスポーツやアスリートのための強い土台を作りたい。世界中のスポーツ関係者に協力してもらって、若者たちがスポーツをする環境づくりができればと思います」

(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年12月19日放送分より)