子どもたちの未来のためにできることとは。アフリカのナイジェリアで、新たなプロジェクトを立ち上げたベンチャー企業の社長の挑戦を追いました。
グローブを買った親子 「(Q.アフリカで作られたことについて)初めてだって聞きました。応援したいと思います」
「アフリカ初の野球グローブ」のお披露目は11月23日。埼玉西武ライオンズのファン感謝イベントでの出展でした。ブースには「アフリカ製グローブ」がずらり。作ったのはカファンドアミドウさん(26)。愛称はアミールです。
アミールさんは野球のブルキナファソ代表として、2019年に行われた東京オリンピックアフリカ予選に出場しています。
今回、ナイジェリアで作ったグローブを展示販売するために来日しました。
アミールさん 「自分が作ったグローブを日本の子どもたちに見てもらって、とてもうれしいと思います」
なぜナイジェリアでグローブを作ることになったのでしょうか。そこにはベンチャー企業社長の熱い思いがありました。
嶋泰宣さん(44) 「大きく2つありまして、1つ目はナイジェリアに新規産業、並びに新規の雇用を創出したい。2つ目が世界中の経済的な理由で野球を断念してしまう子どもを1人でも少なくしたい」
嶋泰宣さん自身はサッカーをやっていましたが、息子さんは野球で甲子園を目指しています。実のお兄さんは、2004年にセ・リーグ首位打者を獲得した「赤ゴジラ」こと嶋重宣さんで、今シーズンまで西武の打撃コーチを務めていました。
ある時、嶋さんはナイジェリアの実情を知りました。貧富の差が激しい国で、道具が高くて買えないなど経済的理由で野球を諦める子どもたちがとても多いそうです。それでも現地の野球少年はこう話します。
ナイジェリアで野球をするブライトくん(16) 「野球の好きなところはチームスピリット、そして平等に打席が回ること」
嶋泰宣さん 「野球は打席が平等に回ってくる。『平等』という世界に引かれたという話を聞いた時に、この子どもたちに僕らは明るい未来を野球を通して作りたいなと」
野球振興と雇用創出、どちらも同時にできることを、嶋さんは考え付きました。それは「ナイジェリアでグローブを製造する工房を作ること」。嶋さんはグローブ製造を教えてくれる技術者を探し出し、アミールさんを日本で弟子入りさせました。
そして、最初は日本の会社から規格外となった革をグローブ用に提供してもらい、今年アフリカでグローブに使える革を見つけ出したといいます。
佐藤眞那人さんは、ナイジェリアのグローブ工房と野球振興プロジェクトの現場責任者です。現状を聞きました。
ナイジェリア現場責任者 マナトさん(24) 「給料(月収)が1万5000円くらいなんですね。しょっちゅう停電したり、多分皆さんきょうを生きるのに必死だと思うので。生きるのに必死な人がそんな(高い)グローブを買わないと思ったので、値段をもっと落としていくしかないな。地元ローカルの(安い)革を見つけるのを急ぎました」
今回のブース出展はプロジェクトを一人でも多くの人に知ってもらうためでした。
この日、西武の選手も販売ブースを訪れました。
アミールさん 「初めての経験なんです」 渡部選手 「そうなんですか」
ファンへのアピールはばっちりで、持参したグローブは完売しました。
アミールさん 「(Q.グローブを作れる人が増えてほしい?)いや本当に増えてほしいですね。オーダーたくさん来た時に自分一人で難しいので」
しかし、プロジェクト全体としては、まだ道のりは険しいようです。スタートからおよそ2年。進捗を聞くと…。
嶋泰宣さん 「15%くらいですかね。まだまだ本当にようやく一歩二歩出れたかなっていうくらい」
それでも大きな夢を持っています。
嶋泰宣さん 「2028年のロサンゼルスオリンピックにナイジェリア代表を初めて出場させる。そこで世界中のスカウトの方の目に触れる機会をまず提供していきたい。子どもたちに対してはあの選手みたいになりたいという目標を作りたい」
彼らの挑戦は、始まったばかリです。