4年前、仙台市泉区で小学2年生の女子児童と母親がいじめを苦に心中したとみられる事件についてです。仙台市の第三者委員会は、いじめに関する調査結果を12月上旬にも教育長に提出する見通しです。これまでの経緯と遺族の思いを取材しました。

 「いじめられてなにもいいことないよ」「しにたいよしにたいよ」
 女子児童が亡くなる3カ月前につづった手紙です。
 父親「妻も私もすぐに解決するものだと思ってたんです。本当は学校も大好きで、友達も大好きで」

 2018年11月29日。仙台市泉区の寺岡小学校に通っていた2年生の女子児童と母親が、自宅で亡くなっているのを帰宅した父親が見つけました。女子児童へのいじめを苦に、母親が女子児童と心中したとみられています。

長女と妻を亡くした父親(手前)

 父親によると、長女は小学1年生の時から仲間外れにされるなどのいじめを受けていたと訴えています。夫婦で再三にわたって学校や教育委員会にいじめへの対応を求め続けましたが、適切な対応が取られなかったと言います。
 父親「学校からはもう少し待ってくださいと引き延ばしをずっとされ続けて、対応しますからとずっと言われ続けてきてこの事件が起きた」

 一方、学校側は「いじめには対応し、仲直りの会を設け解決した」としています。
 しかし、妻が残した詳細な記録からは、いじめ問題が解決せず、精神的に追い詰められる様子が分かります。
 父親「もういじめは解決してるから学校はちゃんと対応したってなっているので、事実が全然違っている」

 2人の死といじめの因果関係を解明してほしい。父親は、仙台市に第三者委員会の設置を要望。事件から約4カ月後の2019年3月に、第三者委員会が設置されました。
 父親「(学校や加害者などを)訴えたいとかそういうのよりは、事実(娘と妻に)何があったのかを知りたいっていうのが一番」

第三者委員会

 第三者委員会は、医師や弁護士など教育委員会が推薦する4人と遺族が推薦する3人の計7人で構成されています。
 仙台市からの諮問を受け、いじめの事実関係のほか亡くなった子どもへの学校の対応、両親に対する学校や教育委員会の対応について調査してきました。

 この問題をめぐっては、遺族と学校側に大きな認識のずれがあります。
 その一つが、児童が亡くなった2018年の欠席日数です。いじめ防止対策推進法では、欠席日数が30日になると重大事案として教育委員会が調査を始める基準になっています。
 遺族は34日と主張。学校側も当初30日としていましたが、事件後に28日に訂正しました。教室ではなく、校長室に登校した日を出席としました。

 もう一つ争点となっているのが、女子児童が「しにたい」と書いた手紙についてです。遺族は「いじめで悩んでいた」と捉えていますが、学校側は「宿題で悩んでいた」としています。

 また、遺族は第三者委員会の在り方にも疑問を抱いています。これまで3年半にわたり、約50回の調査部会を重ねた第三者委員会。しかし、ほとんどが個人情報の保護を理由に非公開でした。

第三者委員会の在り方に疑問

 そして、解明を求める2人の死といじめの因果関係は、市からの諮問事項に入っていないとして調査されませんでした。
 小野純一郎部会長「いじめの因果関係というのは、ここに入ってないわけですよね。諮問の中に。だから、ご遺族がそういうものを知りたい、答申で明らかにしてもらいたいと言っても、私どもに与えられている課題からはちょっとずれがあると言わざるを得ない」
 父親「第三者という機関なので、公平に見る組織なので、であれば諮問内容にもし無くても当然そこは議論されるんだろうなってのは、普通に考えたらそうだと思うんですけど、それは諮問内容に入ってないから議論しないっていうのはちょっと強引だなと思います」

 この点について、いじめ問題に詳しい法務省人権擁護委員の神さんはこう話します。
 法務省人権擁護委員神春美事務局次長「これまでの第三者委員会の全国的な答申を見ても、諮問事項が限定されている。大体3項目とか4項目程度の中にくくられてしまっているんですね。何が起こったのかを解明していくのが第三者委員会の役割になりますから、諮問事項に無い事項であっても、踏み込んで調べていくべきだと思いますね」

 第三者委員会は、6月に答申案を遺族側に公開しました。12月上旬にも、教育長に答申する見通しです。
 父親「今までがほぼ非公開できたので、中身を答申案を見て初めて知ったことがたくさんあって。正直な一言で言うと、3年以上かかってこんな、これなのかなってちょっとがっかりしました」
 第三者委員会は、12月上旬にも教育長に答申する見通しです。