2021年に新型コロナワクチンを接種後に亡くなった宮城県の男性に対し、国は2023年1月、接種と死亡との因果関係が否定できないとして、死亡一時金の支給を決めました。家族を守るために接種したワクチンで、なぜ。男性の妻が無念の思いを明かしました。
宮城県大和町に住む須田睦子さん(34)。夫の正太郎さんは2021年10月、2回目の新型コロナワクチンを接種した3日後に、妻と4人の子どもを残し帰らぬ人となりました。
須田睦子さん「不安が大きかったですね。やっぱり悲しさと不安っていうのが一番ありました」
当時36歳だった正太郎さん。接客業に従事していたことや、睦子さんのお腹の中に4人目の子どもがいたことからワクチンを接種しました。
須田睦子さん「打ってすぐは何ともなかったんですよ。その日私仕事だったので、帰って来てから『体調どう?』って聞いたら『まだ腕が痛むぐらい』って言うので」
接種の翌日になると39度台の高熱に加え胸の痛みや息苦しさを訴えましたが、その翌日には症状がなくなり、睦子さんの目にはすっかり回復したように見えたと言います。
須田睦子さん「『本当に死ぬかと思った』ってその時、夫が言ってて、すごい苦しかったんだろうなと思ったけど『元気になって良かったね』っていう話をして、『じゃあまたあした仕事行くから』って言って寝たんです」
それが2人が交わした最後の言葉になりました。最初に異変に気付いたのは翌朝、時間になっても起きてこなかった正太郎さんを起こしに行った小学生の息子でした。
須田睦子さん「(息子が)走って戻って来て。『パパ大きい声で起こしてるけど起きないよ』って言われて、嫌な予感がして。息子の顔がすごい焦ってるんですよ。
ただごとじゃないような感じがして」
睦子さんが慌てて寝室へ向かうと、布団の中で変わり果てた夫の姿がありました。
須田睦子さん「一瞬でもう息してないっていうのが分かるぐらい、顔の色が変わってて」
駆け付けた救急隊員が応急処置を行いましたが、病院に搬送された約1時間後、死亡が確認されました。
須田睦子さん「何が起こったか分からなくて、これから子どもたち上の子たち3人いるしお腹にもいてこれから、あと2カ月くらいで産まれてくるのになんでパパ死んでるんだろうって」
CTでは死因が特定できず、その後の解剖によって告げられた死因は、血圧の低下により全身に十分な血液を送れなくなる急性循環不全でした。
須田睦子さん「絶対ワクチンしか考えられないし、今まで大きな病気もしていなかったし、健康診断とかも何も引っかかってなかったし、納得できなくて」
国の救済制度では、ワクチン接種後の副反応で障害が残ったり死亡したりした場合に、その健康被害が接種を受けたことによるものと認められると、医療費や死亡一時金などの給付が受けられます。
睦子さんは正太郎さんが亡くなった2カ月後の2021年12月に申請。ワクチン接種により家族を亡くしたとする遺族らとともに、国に救済と実態の解明を求めてきました。
そして、1年以上が経った2023年1月、接種が死亡の原因になった可能性が否定できないとして死亡一時金の給付が認められました。
須田睦子さん「1年でもすごく長いって私は思ってるんですけど、でもそれ以上に認定ずっと待っている方いらっしゃるんですね、2年近く。(申請が)早い方だと」
宮城県によりますと、3月24日時点で新型コロナワクチンをめぐる申請が145件あり、36件が認定されたということです。
このうち、死亡した事例の申請は17件、認定されたのは正太郎さんを含め2件です。
睦子さんは自分と同じ境遇の人たちの力になりたいと、全国を回り自身の経験を伝えています。
須田睦子さん「泣き寝入りしているご遺族、すごく多いんです。声を上げられない方、救済制度のハードルが高すぎて諦めてしまう方、すごく多いんです。その方たちに知ってもらって、何か一歩踏み出すきっかけになれば良いなと思いました」
最愛の夫の死から約1年半。睦子さんが今、伝えたいことは。
須田睦子さん「実際に、宮城県でワクチンを打って亡くなっている人がいるんだよっていうこと、今までの当たり前の日常が一瞬で無くなるっていうのをまずは知ってほしいです。それを知ってもらった上で、追加の接種どうするのかとかお子さんへの接種をどうするのかっていうのをしっかり考えていただきたいなと思っています」