宮城県で27人が亡くなった宮城県沖地震から6月1で46年です。各地で地震や津波、原子力災害の発生を想定した防災訓練が行われました。

 仙台市宮城野区の障害者福祉施設で行われた訓練は、長町-利府線断層帯を震源とする最大震度6強の直下型地震が発生した想定で職員や利用者ら約30人が参加しました。

 職員たちは停電でエレベーターが使えない中、車椅子の利用者を安全に避難させる手順を確認しました。

 職員「色々な障害のある方がいる中で、災害時にエレベーターが使えない時に外に逃げる、上の階に上げることは必須と思っているので、(訓練を)継続的にやっていく必要はあるのかなと思ってます」

 宮城県庁では、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の地震が発生し大津波警報が発表された想定で訓練が行われました。

 62機関から約700人が参加し、災害対策本部を立ち上げ被害情報の収集などに当たりました。

 新田智紀記者「原子力災害を想定した訓練では、道路が寸断された牡鹿半島先端部など避難が困難な地区の住民をどう避難させるかについて調整が行われています」

 女川オフサイトセンターでは、女川原発2号機の冷却機能が失われ原発から5キロ圏内の住民が避難を始める全面緊急事態に陥った際の初動対応を確認しました。

 能登半島地震の教訓から道路が寸断し住民が孤立したことを想定し、警察や海保、自衛隊などが県の対策本部と連携しながらヘリコプターや船で避難させる手順を協議しました。

 県が原子力災害を含む複合災害に備えて、関係機関と大規模な訓練を行うのは初めてです。

 県庁での災害対策本部会議では、村井知事が出席し事故の経過や住民の避難状況などについて報告を受けました。

 村井知事「いざという時にどのような形で行動すれば良いのか、どのような形で住民の皆さんに情報を伝えるのかを繰り返し行っていくことが重要だと思います」

 1978年6月12日に発生した宮城県沖地震では、住宅などの倒壊が相次いだことから、建物の耐震基準が見直されました。しかし、高齢化が進む地域では耐震化率の低迷が続いていて、専門家は早急な対応が必要と指摘しています。

 宮城県沖地震では、約7500棟が全半壊するなど、建物への被害が相次ぎました。

 このため国は住宅の耐震基準を震度7程度の揺れで倒壊しないレベルに引き上げ、耐震化率を2030年までにおおむね100%にすることを目標にしています。

 宮城県の住宅の耐震化率は92パーセントと、全国平均を5ポイント上回っています。

 しかし、地域ごとに見ると仙台市が95パーセントと最も高い一方、最も低い七ヶ宿町では30パーセントと大きな差があります。

 七ヶ宿町でそば店を営む吉野一夫さんは、東日本大震災後に建物の2階と3階を耐震化しました。

 吉野一夫さん「地震で揺れがとんでもなかったから、壊れないのが幸いでしたので。耐震化して安心でした」

 七ヶ宿町では人口の44.8パーセントが65歳以上と宮城県で最も高齢化率が高く、住民が耐震工事に踏み切るのは難しいと話します。

 吉野一夫さん「年配の人が1人暮らしや2人暮らしが多いから、耐震化なんてもうとてもとても年金暮らしの人は無理です。みんな70坪や60坪の家でしょ。だからいざ耐震するとなったら大変だと思います」

 耐震工学が専門の東北大学の五十子幸樹教授は、高齢化が進む地域では高い工事費用と住宅の使用年数との費用対効果を鑑みて、耐震化が進まない傾向にあると指摘します。

 東北大学災害科学国際研究所五十子幸樹教授「いつ来るか分からない、もしかしたら来ないかもしれない地震、あと何年使うか分からない住宅というところで、大きなお金をかけて耐震化しようという気持ちにならないことが背景にある」

 五十子教授は、家のリフォームなどに合わせて耐震工事をした場合に費用を助成するなど、耐震化を促す取り組みが必要と話します。

 東北大学災害科学国際研究所五十子幸樹教授「耐震化だけで工事しようと思うとなかなか重い腰が上がらないと思うが、何かのついでに補助金が出るならちょっとやってみようかなということにつながると良いのではないかなと思います」

 30年以内に宮城県沖で地震が起きる確率は、おおむねマグニチュード8以上が20パーセント、マグニチュード7以上は90パーセントに上っています。

 宮城県の各自治体では、住宅の耐震化を進めるため国と県の補助と合わせて改修にかかる費用を最大100万円助成する補助金を設けていて、利用を呼び掛けています。