宮城県大郷町が計画するスポーツパーク構想をめぐり、町議会が予算案を認めず計画が暗礁に乗り上げています。町が未来を懸ける計画は実現するのか、先行きが不透明な状況となっています。

 議員「きょうこいつ(資料)出されてきょう精査しろなんてそんな話無いでしょ。人をばかにしてるんでねえの。議員をばかにしてんでねえ」「この事業もう少し時間をかけてやるべきかと思うんですがいかがでしょうか」

 6月7日の大郷町議会で議員から厳しい声が上がったのは、町が計画するおおさとスマートスポーツパーク構想についてです。2019年の台風19号で被災した粕川地区に、サッカー場12面や宿泊施設などを整備する構想です。

議員から厳しい声

 観光資源が乏しい町ににぎわいをもたらし、多くの人に町を知ってもらうことで将来的な定住人口増加につながると期待されています。台風被害からのまちづくりの中で、町が抱える課題解決につなげようと町長の肝入りで進められてきました。

 この日は「町民への説明が不十分」などとして議長を除いた11人の議員のうち7人が反対し、土地の購入費などを盛り込んだ予算案は認められませんでした。議会が計画に「NO」を突きつけたのです。
 田中学大郷町長「町民にとっても町にとっても大変残念で、スポーツパーク構想に代わるものは今の段階では見当たらない」

 突然浮上した計画頓挫の可能性に、この日から町の混乱が始まりました。
 中粕川地区住む高橋精男さんは、台風で自宅が床下浸水する被害を受けました。地区の区長も務めた高橋さんは、この計画が町の将来を左右すると話します。
 高橋精男さん「色々話聞くと地権者や住民が結構集まっている中で、その期待度っていうのはもう大きい。今回のチャンスを逃せば、全く今と変わりない大郷町になるんじゃないか。ここがうちの土地ということで、今は大豆を作っている土地でございますけどね」

「町の将来を左右」

 高橋さんは、スポーツパーク予定地の地権者の1人でもあります。両親から引き継いだ愛着のある土地ですが、手放すことにためらいはありませんでした。
 高橋精男さん「私は本来売りたくないというような形ですけども、このスポーツパーク構想の中では今後大郷町を発展させるためには、そんな損得言ってられない。人が集まるような地域になってもらいたい、それが夢ですね」

 「町民への説明不足」という議会の声を受け、大郷町は7月8日、2度目の住民説明会を開催しました。事業の概要のほか経済効果や定住人口の増加など計画を通じて期待される効果が説明され、町民からは賛同する声が多く上がりました。
 大郷町民「この予算案が通らなかったことにすごく残念っていうか、怒りを覚えるくらい悔しい思いっていうかね」「この町に足りないもの、それを補う事業として必要な大切な事業だと思っています」「変わっていきましょうよ、そしてみんなで手を取り合って知恵を出し合ってここを守っていく」

 説明会には田中町長も自ら参加しました。肝入りの事業ということもあってか時折熱くなる場面もありました。
 田中学大郷町長「大郷町に新しい血を入れなければなりません。大郷町に新しい血が入っていないんですよ、だからこのままなんだ!批判などばかりしていたって何もできませんよ、できる人がいたらやってほしいよ!」
 区長「住民を代表しまして私たち要望書という形で出させていただきましたこと、本当によろしくお願い致したいと思います」
 粕川地区6つの行政区の区長が連名で要望書を提出するなど、計画の推進を求める町民の声は高まりを見せました。

 7月26日に臨時の町議会が開催され、関連する予算案が再び提出されました。しかし、議員から再び上がったのは計画を疑問視する声です。
 議員「なぜこの事業に執着しておられるのか」「この事業ではなく転換して企業を誘致するべき、そういう事業じゃないのかなと考えるわけです」

 そして採決の時。
 「賛成の議員の起立を求めます。起立少数であります」
 1人減ったものの反対が11人中6人で、再びこの計画に「NO」を突きつけました。田中町長はこれを受け、住民投票を行う方針を明らかにしました。
 田中学大郷町長「そうでなければ町民にも申し訳ないですよ。調査しても8割の人がこの事業をやるべきだというのに議会が反対ということは、それなりの根拠に基づいたこちらの方もやると」

予算案再度否決

 町民投票の時期について、町は未定としています。しかし、町民投票で多くの町民が賛成しても計画を進められるわけではなく議会を通す必要は付きまといます。
 町の未来を懸けたスポーツパーク構想は、構想のまま終わってしまうのか。暗雲が漂っています。