東北地方を横断している台風5号。記録的な大雨となった岩手県岩泉町では、国の天然記念物でもある観光名所が大きな打撃を受けています。

■東北横断「台風5号」 道路陥没も

 台風5号は東北地方を横断しながら猛威を振るっています。

 岩手県岩泉町では24時間に200ミリ近い雨が降り、小本川は氾濫危険水位を超えました。

 台風が上陸する前の11日の川の様子。護岸では工事が行われていて、重機や大きな土嚢(どのう)も積まれています。それが一夜にして水の底に。川沿いが広く冠水しました。

 さらに、支流にある清水川では茶色くなった水が濁流と化し、法面は崩れ落ちました。

 普段は渓流釣りができるほど穏やかだといいますが…。激しく流れる川の勢いで道路は大きく陥没したとみられます。

 地元の住民によりますと、同じ事態は複数の道路で起きているといいます。

地元の人 「かなり沢の方が増水して町で管理する道路も何カ所か決壊、通行止めの状態が何カ所かある。大雨のたびに浸水する場所もあるので、その人々は大変だと思う」

 清水川の側に掲げられた看板。災害に強い川を作るため、周辺では護岸工事が行われているさなかに台風は直撃しました。

■国の天然記念物「龍泉洞」も打撃

 目の前を清水川が流れる観光名所にも影響が出ています。

 洞窟の奥から雨水が絶え間なくあふれ出ていきます。ここは日本3大鍾乳洞の一つである龍泉洞。洞窟の中には生き物も生息し、地底湖もあります。それが観光どころではない事態に…。

 龍泉洞は数日間の閉洞を余儀なくされました。

観光客(大阪から) 「まさか台風が急だったので予定を変えられなくて、仕方なく様子だけを見に来た感じ」

 実は、鍾乳洞が台風の被害に遭うのは今回が初めてではありません。

 2016年の台風10号。岩泉町に甚大な被害をもたらしました。川の氾濫で高齢者施設に濁流が流れ込み、入居者9人が犠牲になりました。

当時を知る人 「信じたくないトラウマ。まだまだ油断できない」

 台風への警戒が強い岩泉町では上陸前から避難指示が出され、グループホームの入居者は11日のうちに避難所へ身を寄せていました。

グループホームのスタッフ 「自治会の人と避難の協定を結んでいるので、スムーズに(避難できた)」

■ダム放流で一時「緊急安全確保」

 緊急安全確保が出された岩手県久慈市。

 増水した川から大量の水が流れ込んだ場所は、普段は子どもたちの憩いの場でした。わずかに鉄棒が顔をのぞかせていますが、シーソーなどの遊具は見えません。

近隣住民 「心配なのは、この辺まで上がると怖いですね」

 同じ久慈川の河川敷にあるテニスコートも水の下に姿を消しました。ネットの半分近くまで水が押し寄せています。

撮影者 「普段、散歩とか歩ける場所が全く人が入れない状態。上陸することがほとんどなかったので」

 久慈市では24時間に8月の平年の約7割にあたる132.5ミリの雨が降りました。

 ただ、住民に安全が呼び掛けられた理由は記録的な大雨だけではありませんでした。

 ダムに流れ込む水が限界を超え、緊急放流が始まります。その影響もあってか支流の川はみるみるうちに増水。住宅街を水浸しにしました。

 記録的な大雨となった久慈市。12日午前10時23分、「滝ダム」で緊急放流が始まりました。

 いつもなら透き通っているダムの水が12日は茶色く濁り、うねりを伴った状況になっています。

 ダムから5キロ以上、離れた下流の長内川では、わずか1時間足らずで氾濫危険水位を超えました。

 普段は幅も狭く橋脚も見えるほど低い水位ですが、時間を追うごとに水位は増します。緊急放流をした後、急激に上昇したのです。

 周辺の住宅街は冠水する被害も確認できました。

 緊急放流の影響で、周辺では約8300人を対象に一時、緊急安全確保が出されました。

■お盆休みを直撃 新幹線“運休”も

 宮城県気仙沼市でも朝から強い雨風が吹き荒れました。

 気仙沼市では100ミリ近くの雨が降り、これは8月の平年の約6割にあたります。

タクシー運転手 「気仙沼線、大船渡線が止まっているので利用客はほぼゼロですね。最悪ですよね」

 横浜市から気仙沼に訪れた人は…。

横浜から来た人 「電車が止まってしまったのでこれからバスで移動します」 「(Q.目的地は?)石巻だが、きょう石巻まで電車で行けるかどうか」

 お盆期間を直撃した台風5号。帰省や旅行の移動にも影響が及んでいます。

東京から来た人 「友達が今、東北本線が止まっているのか遊べなくなって。早めに帰ろうかなと」

埼玉から来た人 「これから雨風が強くなるとどうなるのかなと。帰省中なのでこれから楽しめるか心配」

 台風5号の影響で在来線の多くが運転見合わせや一部運休の対応。東北新幹線などでも遅れや運休が出る可能性があるとしています。

■お盆直撃 相次ぐ宿泊キャンセル

 この時期、普段は青い空に真っ青な海が広がる気仙沼市内の大谷海岸。

 台風5号は、お盆期間の観光にも影を落としています。

はまなす海洋館 伊藤友貴宣支配人 「普段は太平洋の水平線が一直線に見えて青空が広がっている。すてきな海が一望できる部屋」

 ただ…。

はまなす海洋館 伊藤友貴宣支配人 「これはきのう、これはきょうの(予約状況)。きょうはもう3件キャンセルが入っている」 「(Q.きのうも2件?)交通機関がどうしても来られない人がいたので」

 台風5号直撃のために宿泊キャンセルの連絡が来ているといいます。

はまなす海洋館 伊藤友貴宣支配人 「夏休みは毎日、満室なので本当に痛い。海水浴シーズンなので楽しみにしていた客から来られないという電話を受けた時はつらかった」