旧優生保護法の被害救済への道を開く最高裁判決を導いた、原告と弁護団の闘いを振り返りました。

 障害のある人に不妊手術を強制した旧優生保護法をめぐる裁判で、7月3日に最高裁は憲法違反と認め国に賠償を命じました。

 飯塚淳子さん(仮名・70代)「良かったなあって、じんときました。泣きました。人生は返ってこないんですけど、でも、良い判決で良かったと思ってます」

 全国に先駆けて、27年にわたり国の責任を追及してきた飯塚淳子さん(仮名・70代)は16歳の時、軽度の知的障害を理由に不妊手術を強制されました。被害の訴えは当初、困難を極めました。

 飯塚淳子さん(仮名・70代)「理解してくれる人ばかりではないので、声を上げるまで勇気がいりました。当時は弁護士さんに優生保護の話をした時に、最初は分からなかったみたいね。弁護士さん自体が知らなかったし、私が話をしなかったらこのように広まっていかなかったと思います」

 2013年、相談会で飯塚さんから被害の相談を受けた新里宏二弁護士(72)です。

 新里宏二弁護士「16歳の時に子どもを産めなくされる手術を受けた。何も説明ないで、と言われた時に、そんなことあるのって(思った)。時間の問題もあまりにも壁が厚いなと思いましたね」

 飯塚さんの前に、時の壁が立ちはだかります。飯塚さんが手術を受けたのは半世紀以上前で、不法行為から20年が過ぎると賠償を求める権利が無くなるという除斥期間を理由に、裁判では国の賠償責任が否定されました。

 提訴から6年が経った2024年7月3日、判断は最高裁に委ねられました。

 飯塚淳子さん(仮名・70代)「不安。今までが駄目だったからまたかなって。最高裁だから良い判決であってほしいと思う反面、どうなるのかなという思いがあるので」

 新里宏二弁護士「期待いっぱいという感じじゃないですかね。良い判断が出ればなと、みんなが差別なく救済される判断が出ればなと思っています」

 15人の裁判官全員からなる最高裁大法廷は、旧優生保護法を違憲と判断し国の賠償責任を全面的に認める判決を言い渡しました。

 新里宏二弁護士「被害者が声を上げる、そして社会を変えていけるんだということを、優生手術被害者が実証してくれたのではないかと思っています」

 飯塚淳子さん(仮名・70代)「判決も良かったと思っています。苦しい毎日、長い間苦しみながらここまできました。きょうは最高の日です」

 判決を受け、9月13日には国と原告が和解に向けて合意し、9月24日にも和解が成立する見通しで裁判はようやく終結へと向かいます。

 しかし、再発防止への検証や声を上げられていない被害者の救済など課題はいまだ残されたままです。

 飯塚淳子さん(仮名・70代)「国に謝罪されても賠償されても、優生手術によって傷付けられた体と狂わされた人生は戻ってきません」

 新法を検討する超党派の議員連盟は、裁判で訴えていない被害者に1500万円、配偶者に500万円を補償する方針を固め、秋の臨時国会で法案を提出する予定です。今後も被害者の救済に向け、議論が進められていきます。