東日本大震災以降、高い水準が続いている小中学生の不登校です。居場所を求める子どもたちと向き合うフリースクールを取材しました。
仙台市太白区に9月に開校したフリースクール、ろりぽっぷスクール。後者は、児童数の減少により2015年3月に閉校した、旧坪沼小学校の校舎を活用しています。この日は、小学4年生の福(ふく)君と小学2年生の望來翔(みくと)君が登校してきました。
このフリースクールに通うのは、何かしらの理由で学校に通うことができなくなった子どもたちです。小学2年生から中学2年生までの14人が在籍しています。
学校法人ろりぽっぷ学園加茂光孝学園長「保育園やこども園を経営しているんですけれども、卒園していった子たちが、あれだけ子どもたちがキラキラしていた、元気いっぱいに遊んでいたのに、学校に行った時になぜかしょんぼりしてるとか。あとは宮城県とか仙台市とかの不登校の子たちがすごく多くなっているというのを聞いて、どうしても何かできないかなと」
登校できるのは火水木の週3日間。3日間のうち、何日登校するかや習字や運動といった活動内容から、好きなものを自分で考えて決められるといった特徴があります。フリースクールの通うことで、本来在籍している学校の授業に出席したとみなされます。
午前10時からのはじまりの会。相手の話を聞くこと、そして自分の考えを伝える基本的なコミュニケーション能力を学びます。
この日は「信号機が無くなったらどうなる?」という質問に対し、児童や教師、保護者らが意見を述べ発言している人の話に耳を傾けました。
授業「信号機が無くなったら、50件ぐらい交通事故が起きちゃって、鉄道だったら衝突事故が起きちゃうと思う」
このフリースクールでは、おおむね2人の子どもに対し教師1人が担当します。一人一人に合わせて授業を進められるのが大きな利点です。
学校法人ろりぽっぷ学園久松史奈教諭「ここなら何かできるかもとか、ここなら自分が輝けるかもって思って入ってもらえると。子どもたちのやりたいこと、誰かにやらされてるんじゃなくて、自分がやりたいことができるって思ってもらえるのが良いなと思います」
開校から1カ月。
福君(小4)「意気込みっていうのかな。先生の思いが熱くて」
望來翔君(小2)「ここだとクラスみたいなのが無いから好きに自由に遊んだり、他の学年の子と遊べるのが良いかなって思います」
望來翔君は、小学1年生の時に学校関係者から心無い言葉を掛け続けられ、学校に通えなくなってしまいました。しかし、フリースクールに通い始めて変化がありました。
望來翔君のお母さん「2021年、学校に行っていないころは眉間にしわを寄せてうつむいたり、半泣き状態で今まで来たので。(当時と比べて)目に見えて違ってはいる」
宮城県の不登校の児童生徒の割合は、2015年度から5年連続で全国で最も高くなっていました。2020年度は、1000人当たり22.6人と全国ワースト8位と5年ぶりにワースト1位は脱しましたが、依然として高い水準が続いています。
居場所を求める子どもたち。その受け皿となっているフリースクールですが、限界があると言います。
学校法人ろりぽっぷ学園加茂光孝学園長「今いる在籍校が、その子の居場所というか名前がそちらにあって違う場所のこちらに来る」
現在のフリースクールのシステムでは、保護者とフリースクール側に大きな負担がかかっています。保護者にとっての負担は費用です。子どもたちは学校に籍を置いた状態でフリースクールに通っているため、授業費や備品など2カ所分の支払いが必要になってしまいます。
フリースクール側の負担は、学校との連携です。出席認定のためには在籍校へ授業内容の報告が必要で、各学校や保護者の要望に合わせて書面の作成や学校との仲介を行うことに、かなりの手間と時間がかかっているということです。
このため文部科学省では、不登校の実態に配慮した特別な教育ができる不登校特例校の設置を進めています。ろりぽっぷスクールを運営する学校法人は2023年度から小学校、2025年度からは中学校の不登校特例校の開校を目指しています。国から認定されれば、仙台市初の不登校特例校となります。
小学校には、教師を8人配置し一人一人の興味や関心に寄り添った指導をしながら、自然豊かな環境での体験活動や地域住民との交流を通し、あすまた来たくなる学校を目指します。
学校法人ろりぽっぷ学園加茂光孝学園長「いっぱいあると思うんです。多様な学びが多様な学びの中で、自分たちがやりたいことというのは子どもたちの心に寄り添って、子どもたちが目的を持って活動していく。あすまた来たいな、あすはこれをやりたいなっていう未来に希望を持った1日を過ごせるようにしていくのが今のところの目標ですね」