愛知県・東郷町の井俣憲治町長(57)がハラスメント行為を繰り返しているとして調査が行われていた問題で、第三者委員会が報告書を公表し、会見を行いました。

■108人が“受けた”と回答

第三者委員会 堀龍之委員長 「これだけ長い期間にわたって、明らかに違法といえるものも含めて、パワーハラスメントを中心とした行為が繰り返されてきたことに私は驚きました」

報告書には、井俣町長が職員に向けて発したという言葉の数々が記されています。

調査報告書から 「お前らの脳みそはハトの脳みそより小さい」 「最上級のあんぽんたん」

こうしたパワハラ発言だけにとどまらず、女性職員に妊娠の予定を聞いたり、「育休を1年取ったら殺すぞ」と言うなどのマタハラや、男性職員に女性の前で「エロ本買うの?」などといったセクハラも行っていたといいます。

第三者委員会によると、アンケートに回答した582人中108人が実際にハラスメント行為を受けたことがあると答えたといいます。また、現在2期目を務める町長は、1期目から継続的にハラスメント行為を行っていたことも明らかにされました。

■手術控えた職員に“香典いくら?”

そのなかでも特に、第三者委員会が「悪質なハラスメント」と断罪している町長の言葉があります。それは大きな手術を控えた職員に対する言葉です。

井俣町長 「お前の家って何宗?」 職員 「西本願寺」 井俣町長 「西本願寺って東郷町ではあそこしかないぞ」 職員 「死ぬこと前提じゃないですか」 井俣町長 「お前死んだら香典いくらぐらい?お前がん保険入っとるんか?」 職員 「がん保険出ないです。入ってます」 井俣町長 「それ、うちで臨時職員雇うやん。会計年度任用職員雇うやん。そのために使って良い?」 職員 「嫁が使いますね」 井俣町長 「彼氏と旅行行くんだな。ハワイかどっか行くんだろ。お前の保険金で」

井俣町長はこうした発言について…。

第三者委員会 堀龍之委員長 「(Q.聞き取りを行った際、町長はどのような様子だったか)町長は、ご自分が行ったとされる様々なハラスメント行為について“こういう目的があるんだ”あるいは“こういう正当性があるんだ”と町長の考えをもとに積極的に話した」

町長は、冗談や笑い話だったとハラスメント発言の真意を述べたといいます。

さらに、会見で明らかになった事実があります。ハラスメントが原因で退職したと考えられる職員もいるといいます。

第三者委員会 堀龍之委員長 「直接ヒアリングができなかったので確実とは言えないが、他の方々の聞き取りの結果等を総合すると、ハラスメントが原因で、大きな原因で退職された方がいると考えている。それから、降格になった方も同様にいると考えている」 「(Q.ヒアリングを行おうと打診した結果、聞き取りにすら応じられないほど、心に傷を負った方もいたと)私はそう理解している」

■町長の行為に“規制”存在せず

なぜハラスメント行為を止められなかったのか。報告書では、その構造的な欠陥についても言及しています。

東郷町では、町長がハラスメントを行った際に処分を下す規定がそもそもなく、苦情処理委員会が立ち上げられることもありませんでした。そのうえで町長については、こう指摘しています。

調査報告書から 「過去に自分が厳しい指導を受けて、時にはパワハラと評価され得る言動を受けて、成長してきたと思っている人にありがちな言動である」

■副町長も“役割果たしていない”

また、近藤悦規副町長副町長についても、本来は町長のハラスメントを監視する立場にあったが、ハラスメントだという認識がなく、その役割を果たしていなかったとしています。

第三者委員会 堀龍之委員長 「副町長ご自身のヒアリングから感じたのは、副町長はハラスメント、特に“パワハラ”については、これはいけないことだと理解はしているが、正確な意味のハラスメントを“パワハラ”にあたらないという認識をどうも持っていたようだ」

役場のトップ2人による認識が一因となり、声を上げる職員がいなくなったことで、ハラスメントはよりまん延していった可能性があると指摘します。

第三者委員会 堀龍之委員長 「町長がこれだけの不適切な行為、ハラスメントに該当する行為を長年繰り返してきた背景には、職員側にも諦めというか。一種、迎合的な雰囲気がだんだん強くなってきて、当初は町長の不適切な行為に対して異議を言った人も、そのことによって自分が攻撃の対象になると。あるいは、周りがそのようなことをされるのを見聞きするなかで、だんだん声を上げられなくなってきている」

しかし、名指しされた副町長は、会見の内容に不満を見せています。

近藤悦規副町長 「職員から聞いたことは、必ず町長に伝えて注意を促していた。(Q.ハラスメントをされた職員が訴えた結果、降格や異動もあったと。組織的に問題点は)きょう、第三者委員会でそのような話があったが、そのようなことは全くありません。断言できます。(Q.どのような感情で会見を)第三者委員会の立場と我々の立場は違うので、私たちが思っていたハラスメントという認識について、改めて考えさせられた」

一方、町長は…。

井俣憲治町長 「(Q.25日にどういった説明を)25日にまたお話しますので」

井俣町長は25日に会見を開き、進退などについて説明するとしています。