中国・蘇州市でスクールバスを待つ日本人親子が男に襲われた事件で、男を阻止しようとした中国人女性の死亡が28日に伝えられると、現場となったバス停には雨の中、市民らが続々と献花に訪れました。

 事件から4日後の28日、蘇州市内は朝から雨が降り続きました。

 「英雄のお母さんどうぞ安らかに」。ある中国人女性はこんなメッセージを花束に添え、目に涙をためてバス停のベンチに供えました。

 ほかに、友人たちから預かってきた四つの花束もあります。

 このバス停で24日午後、日本人学校のスクールバスを迎えに来た日本人親子と、車内にいたガイド役の中国人女性が、刃物を持った男に襲われました。

 男を阻止しようとして刺されたのは、中国人の胡友平さん(54)です。

 中国国営の新華社通信によりますと、胡さんは親子を襲った男を引っ張って止めようとし、背後から抱きかかえるように制止して、数カ所を刺されたということです。

 胡さんが亡くなったと報じられた28日には、傘を手にした市民らが続々と献花に訪れました。

 知人と2人で花を供えた中国人女性は、「胡さんにとても感謝しています。バス1台の子どもたちを全員、助けてくれました。『感謝』以外の言葉が見つかりません」。

 停留所の片隅に花を置き、深く頭を下げていた別の中国人女性は、「愛情に国境はありません。私ならその場にいても、胡さんのように勇敢なことはできません」と語りました。

 北京の日本大使館は胡さんを悼んで半旗を掲げ、金杉憲治中国大使は「勇気ある行動にあらためて深い敬意を表するとともに、心からのお悔やみを申し上げます」と、哀悼の意を示しています。