8日夕方、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生し、津波も観測されました。これを受け、気象庁は専門家による検討会議を開催。新たな大規模地震が普段と比べて相対的に高まっているとして、初の「南海トラフ臨時情報・巨大地震注意」を発表しました。私たちはどのように備えるべきなのでしょうか。

■南海トラフ「巨大地震注意」初発表

南海トラフ地震というのは、駿河湾から日向灘沖まで東西500キロほどの範囲で、海側のフィリピン海プレートと、陸側のユーラシアプレートの境界で発生する地震です。

地震発生の可能性の高まりについて、気象庁が発表するのが、今回初めて発表された『南海トラフ臨時情報』です。まずは『調査中』という情報になります。

■“時間差”で地震発生の過去も

調査の基準になるマグニチュードは6.8以上など。今回はマグニチュード7.1ということで、有識者たちが調査に入りました。

なぜ調査を急ぐのかというと、過去に南海トラフ沿いで起きた大きな地震は“時間差”をおいて、想定震源域内で連続して起きているためです。

1854年(幕末)には、安政東海地震(M8.6)が起きた約32時間後、安政南海地震(M8.7)が発生。1944年(昭和初期)には、昭和東南海地震(M8.2)が起きて2年後、1946年に昭和南海地震(M8.4)が起きました。この時の2つの地震で死者計2000人以上という甚大な被害が出ました。

■臨時情報 3つの“キーワード”

専門家らの検討の結果、出される情報は3種類あります。

【巨大地震警戒】 先に起きた地震がプレート境界でM8.0以上と判明し、さらに新たな巨大地震が起きる可能性が高まったと判断された時に出されます。津波からの避難が間に合わない地域では自治体が住民に避難指示を出します。そして、その期間が1週間継続されます。

【巨大地震注意】 今回出されたのがこの注意です。これは先に起きた地震がプレート境界でM7.0以上などと判明した場合に出されます。日頃からの地震への備えを再確認することが求められます。

【調査終了】 いずれにも当てはまらない場合は調査終了となります。

■発生の可能性“相対的に”高い

気象庁は午後8時ごろ、記者会見で今回の判断についての発表を行いました。

気象庁 「今回の震源は『南海トラフ地震の想定震源域の南西の端』。今後、大規模地震が発生すると、強い揺れや高い津波が生じるとみられる。新たな巨大地震の発生の可能性は平常時より相対的に高まっている。異常な現象が観測される前に比べて“数倍高い”。ただ、特定期間に必ず起こるものではない」

■取るべき対応とは?専門家に聞く

地殻変動や地震のメカニズムが専門の京都大学防災研究所・西村卓也教授に話を聞きます。

(Q.今回、巨大地震注意が出されましたが、私たちは具体的にどんな行動をすれば良いですか)

西村卓也教授 「平常時と同じように通常の生活を送りますが、地震への備えを改めて確認する。家具の固定や避難路の確認などを改めて見直してみましょう。そういう意味で注意となっています」

(Q.これからお盆シーズンに入りますが、移動する時はどうすれば良いですか)

西村卓也教授 「今回の情報によって帰省を控えたり、移動を控えたりする必要性はないと思います。ただ、旅行先などで地震が起きた場合、海の側であれば津波が来る可能性もあります。自分のいる場所がどういう場所かを確認して、何かあった場合に逃げられる場所を確認する。テレビ・ラジオ・携帯電話などで情報を常に確認しておくといったことが重要です」

(Q.今回の震源は『南海トラフ想定震源域の南西の端』でした。注意が必要な範囲はどこまでですか)

西村卓也教授 「南西の端ですが、注意が必要な範囲は駿河湾から日向灘沖までの全域になります。今回の地震から離れた地域でも注意が必要です」

(Q.気象庁は『今後大きな地震が発生する確率が数倍高い』としていました。これはどの程度、高いですか)

西村卓也教授 「考え方は非常に難しいですが、南海トラフ地震は長期的に見ると30年での発生確率が通常時でも70~80%と言われています。特に今後1週間くらいは発生する確率がより高くなります。ただ、確率の数値1つで一喜一憂、行動を変える必要はありません。あくまで将来的に南海トラフ地震が起こる可能性が高いことを意識するための数字だと考えてください」

『巨大地震注意』の発表後、私たちが取るべき対応について、政府は1週間程度を目安に、日頃の地震への備えの再確認。揺れを感じたらすぐに避難できる準備をする。非常用袋やヘルメットなどを枕元に置くなどを挙げています。

(Q.注意が必要な期間は1週間で大丈夫ですか)

西村卓也教授 「いつまでと言うのは難しいです。どうやって決まっているかというと、世界中でM7くらいの地震があった時、その後M8の地震がどのぐらいの間隔を空けて起きたかを統計的に調べて、1週間と出しています。ほとんどの場合は3日くらいで起こりますが、2週間くらい経ってから起こった場合もあります。1週間というのはあくまで目安で、1カ月は相対的に発生確率が高まっていると考えた方が良いと思います」

(Q.私たちは、どのような準備・心構えが必要ですか)

西村卓也教授 「今回、注意が出ましたが、地震の予測は現状難しいです。そのなかで、南海トラフ地震は過去の経験、発生間隔から今後数十年以内の起こる可能性が非常に高いと知られています。1度起こると甚大な被害が出るのは確実に言えるので、もしもの時への備えを普段から行い、今回の情報も改めて身の回りの点検をするきっかけとしていただければ良いと思います」