“迷走台風”による経済への影響も広がっています。夏休み最後の週末、進路が定まらない台風に、日本各地が振り回される事態となりました。(8月31日OA「サタデーステーション」)

■経済効果50億円超「大曲の花火」開催は

報告・松本茉子 (秋田・大仙市) 「午後3時前です。花火大会に向かう道は多くの人で賑わっています」

夏休み最後の週末。秋田県大仙市では、日本三大花火大会の一つで、全国の花火師たちが腕を競う、「大曲の花火」の準備が着々と進められていました。

東京から来た家族 「きのう夜中から高速で休み休み来て、トータル6時間くらいですね。足立区の花火大会が(中止で)見られなくて」

一時は台風10号が「大曲の花火」に直撃する予報も出ていましたが、その後、予想外の迷走。台風から離れた地域でも大雨による被害が相次ぐなど、先の読みづらい状況が続いていました。今回の「大曲の花火」で打ち上げに携わる花火師・齋藤さんは…

響屋大曲煙火 齋藤健太郎 社長 「風が風速10mを超えてしまうと、法律上、花火を打ち上げることができなくなりますので開催できないことになります。(携帯電話に)天気のアプリがいっぱい入っているんですけども、朝昼晩みたいな形で確認して」

打ち上げ予定の花火玉は湿気から守るために、大会当日の朝まで乾燥室に保管されていました。 1年かけて構想を練り、4か月かけて花火を製造してのぞむという「大曲の花火」。経済波及効果は50億円を超えるとの試算も出ていて、万が一、中止となればその影響は計り知れません。7年前の「大曲の花火」では、大会前日に大雨となり、観覧会場や打ち上げ会場が水没。しかし、賢明な復旧作業が夜を徹して行われた結果、なんとか開催にこぎつけた、ということもありました。そして迎えた花火大会当日。 朝6時に開催が正式決定。しかし、開始時刻が近づくと…

報告・渡辺裕也ディレクター(午後3時ごろ) 「今、雨が強くなってきました。この状況で開催は出来るのでしょうか?」

その後、降っていた雨も止み、秋田の夜空に色鮮やかな花火があがりました。首都圏から秋田まで足を運んだ観客たちは…

東京から来た家族「来たかいがありました。迫力があって楽しかったです」 埼玉から来た家族「晴れ男です!」

■予約キャンセル半数超…結果晴れ

一方、台風が接近していた近畿地方。

報告・富樫知之ディレクター(大阪市) 「夏休み最後の土曜日ということで本来であればにぎわっているそうですが、閑散としています」

繁忙期だという大阪市内のキャンプ場は、台風に振り回されました。2018年9月に非常に強い勢力で上陸した、台風21号。こちらのキャンプ場では、BBQテラスの屋根が飛ばされるなど、被害額は億単位にのぼったといいます。今回の台風のルートが2018年と似ていたため、先週時点で、27・28日の営業をやめることを決め、客にも断りの連絡を入れたといいます。ところが…

パームガーデン舞洲 大村美恵副支配人(大阪市) 「台風の進路がずれたというのもありまして、(休業をやめ)再度お客さんの方に連絡して予約を復活するという作業をした」

元々営業予定だった31日は、19件あった予約のうち12件がキャンセルに。

大阪から来た客 「きょうの朝まで行くか悩んでいたので 晴れてよかったです」

しかし31日だけでも、100万円ほどの損失になるといいます。

■駅弁工場「損失2000万円」売れ残りは廃棄

兵庫県姫路市の工場で午前2時から始まっていたのは、駅弁作りです。普段は2つの製造ラインを使っていますが、31日に稼働していたのは1つだけ。

まねき食品 毛利繁 常務取締役 「普段は、駅弁は2500~3000食作っていまして、今日は台風の影響ということで700食まで落ち込んでいます。(台風が)いつ来るかいつ来るかみたいな話になっていたので、皆さん結構早めから注文を控えているような状況で…」

駅弁は姫路駅など、新幹線の停車駅で販売していますが、台風で新幹線が運休する度に大きな影響が…。売れ残った場合も全て廃棄となり、今月は2000万円近い損失が出ていると言います。

まねき食品 毛利繁 常務取締役 「書き入れ時のはずだったんですけど、台風でお盆の一番稼ぎ時にも(新幹線が)止まってしまいましたので、結構しんどい感じになっていますね」

■「ネギが入って来ない」物流も余波

同じ兵庫県内のスーパーを訪ねてみると…

報告・富樫知之ディレクター(兵庫・伊丹市 30日) 「台風の影響による品切れ、品薄のお詫びと案内が表示されています」

九州の複数県から仕入れていた肉は、台風の影響で一部の加工工場が営業を停止するなどしたため、品数が減る懸念があるといいます。さらに…

万代 伊丹荒牧店 小宮秀友店長(兵庫・伊丹市 30日) 「ネギは大分産で、台風・大雨の影響を受けていて、産地が収穫できない状況と聞いています。明日明後日になってくると大分県産のネギはもう入って来ないと」

今週、観測史上最大となる雨量を各地で記録した大分県内では、至る所で冠水が発生。スーパーが仕入れていた大分県産のネギについては、30日に農家から「出荷ができない」と連絡が。ほかの産地から仕入れるなどして対応するといいますが、懸念されるのは…

万代 伊丹荒牧店 小宮秀友店長(兵庫・伊丹市 30日) 「台風の動きがあまりにも遅いので、影響する期間が長くなると思う」

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板倉朋希アナウンサー 「全国各地で影響が出ている台風10号ですが、人的被害も出ています」

桝田沙也香アナウンサー 「31日午後8時半時点、台風10号で亡くなっている方は6人です。宮崎県では竜巻とみられる突風が発生するなど台風によるけが人は119人となっています。さらに、鹿児島では現在も9950戸で停電が続いています。そして、観光地の宿泊施設にも影響が出ているんです。京都のリーガロイヤルホテルでは台風10号の影響で、8月25日から31日までに450件を超えるキャンセルが出ていて、損失額は1800万円以上にのぼるということです。航空・旅行アナリストの鳥海さんによりますと、建物や家財などの被害が出た場合火災保険に加入していれば補償されるんですが、台風で予約をキャンセルされても宿泊施設側の損失をカバーする保険は原則ないということです」

板倉朋希アナウンサー 「柳澤さん、この台風10号で本当に様々な人に影響が出てますけど、宿泊施設にとっても厳しい状況ですね」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏 「経済的な損失をカバーする新しい仕組み、あるいは支援策が必要になってくると思います。新幹線が止まったり、高速道路が通行止めになったときに代わりにどういう選択肢があるのか、そういった丁寧な情報提供も必要だと思います。特に外国人観光客にとっては必要だと思います」