「どこまでなぶり殺しにすれば気が済むのか」。被害女性が涙ながらに訴えました。性的暴行について元検事正が一転して無罪の主張するなか、裁判への影響は。
■「すべて失った」被害女性“涙の訴え”
被害を訴える女性検事 「きのう元検事正、北川健太郎被告が自身が犯した準強制性交等の罪について否認に転じ、無罪を主張していることを知り、絶句し泣き崩れました。今の率直な気持ちを申し上げると、被害申告なんてしなければよかった。痛みをこらえながら自分一人で抱えて我慢すればよかった。そうすればこんなにまで苦しい思いをさせられることもなかった。家族を苦しめることもなかった。検事としてのキャリアを失わずに済んだ。一生懸命、仕事をしている職員に悲しい思いをさせることもなかった」
声を上げられない被害者の力になりたくて検事になった。その彼女が涙ながらに訴えました。
被害を訴える女性検事 「被害申告したせいで私は自分の恥をさらしただけで、大切なものをすべて失ってしまった。組織のトップから受けた性犯罪被害を訴えることが、これほど恐ろしく、これほどまでにひどく傷付けられ続けると思いもしなかった」
■「検察庁の王様だった」女性の訴え
事件が起こったのは6年前の2018年。起訴状によりますと、大阪地検トップである検事正だった北川健太郎被告(65)は大阪市内の官舎で酒に酔って抵抗できない状態の当時の部下の女性検事に性的暴行をしたとして、準強制性交の罪に問われています。
被害を訴える女性検事 「彼は人事権もすべての職員の人事権も持っていましたし、彼に逆らう人は誰一人いなかったと思います。王様です。検察庁の王様だったわけです」
■「謝罪は芝居だったのか」被害者怒り
初公判では、検察側が犯行時の様子を語りました。
検察側の冒頭陳述 「抵抗すれば殺されると思い『夫が心配しているので帰りたい』と言ったが、『これでお前も俺の女だ』などと言った」
検察側の主張では、部下の女性検事は表沙汰になれば「大阪地検が立ち行かなくなる」などと口止めされたといいます。
また、女性検事は北川被告側から慰謝料の1000万円を受け取りましたが、事件から6年、意を決して慰謝料を返金し、被害を訴えたのでした。
北川被告は今年10月の初公判で起訴内容について、こう述べていました。
元大阪地検検事正 北川被告 「公訴事実(起訴内容)を認め、争うことはしません。被害者が深刻な被害を受けたことを深く反省し、謝罪したい」
しかし一転、無罪を主張するというのです。今月10日、北川被告の弁護人が明かしました。
北川被告の弁護人 「Aさんの同意があったと思っていたため犯罪の故意がありません。したがって無罪ということになります。北川被告としては相手が抵抗できないほど酔っているとまでは思っていなかった」
また、起訴内容を「争わない」と述べた理由については…。
北川被告の弁護人 「そうすることで事件関係者を含め、検察庁にこれ以上の迷惑を掛けたくないということにありました」
これに対して11日、女性検事が怒りの声を上げたのです。
被害を訴える女性検事 「元検事正が主張を二転三転させて被害者を翻弄(ほんろう)し、世に蔓延(まんえん)する同意があったと思っていたなどという姑息(こそく)な主張をして無罪を争うことが私だけでなく、今まさに性犯罪被害で苦しんでいる人々をどれほどの恐怖や絶望に陥れ、被害申告することを恐れさせているか。被告人は私をどこまで愚弄(ぐろう)し、なぶり殺しにすれば気が済むのでしょう。被告人がどのように主張しようが真実は一つです。司法の正義を信じます」
■一転“無罪主張”裁判への影響は?
元検事の大澤弁護士は、一般的には裁判で起訴内容を認めたことを覆すには新たな証拠などが必要だと指摘します。
元検事 大澤孝征弁護士 「よっぽど確度の高い、裁判所が最初の言い分を覆す、『なるほど』というようなものがない限りは難しいのではないか。彼(北川被告)は専門家であるし、プロ中のプロですよね。こういう人たちがこういうことをするというのは、かなり珍しいんじゃないか」