異例の訴訟にまで発展したこの問題は、今後、どうなるのでしょうか。

 (経済部・島田龍二記者報告)  会見で日本製鉄の橋本会長が明らかにした訴訟は2つです。

 1つは、買収阻止を命じる大統領令を無効にし、審査をやり直すことです。

 被告はバイデン大統領や審査当局のイエレン財務長官らです。

 もう一つは、買収を阻止して市場の独占を狙うアメリカでのライバル企業の「クリフス社」と、これに共謀した「全米鉄鋼労働組合」に対して損害賠償を請求するものです。

 ただ、裁判を進めるうえでの大きな壁があります。30日以内に買収放棄の手続きを終えるよう求める大統領令です。

 アメリカ企業の買収に詳しい弁護士によると、「期間延長の申請が大前提だが、それはかなり困難だ」ということです。

 30日経った時点で大統領令違反となり、買収が認められないだけでなく、アメリカでの企業活動が制限される恐れもあるといいます。

 日本製鉄に残されたのは、いかに期間延長を認めさせ、速やかに勝訴に持ち込むかです。

 日本の1企業がアメリカ大統領を訴えるという前代未聞の事態に産業界がかたずをのんでいます。