アメリカの調査会社が「今年の10大リスク」を発表し、世界をリードする国がいないことによる混乱を最大のリスクと指摘しました。今週、トランプ政権の誕生を前に混乱の兆しが見えてきました。

■「冷戦初期に匹敵する危険な時代」

 ニューヨーク州にある裁判所前で起きた、トランプ支持者と反トランプ派によるけんか。裁判所はこの日、トランプ氏の不倫の口止め料を巡る裁判で、去年5月に陪審員が下した有罪の評決を維持する一方で、拘留や罰金などの刑罰は科さないとする判決を言い渡しました。

 トランプ氏は、有罪評決を受けたまま就任する初のアメリカ大統領になる見通しです。

 一方、トランプ次期政権で要職を務めることになっている起業家のイーロン・マスク氏は、早くも動きを見せています。2月に行われるドイツの総選挙で、極右政党への強い支持を表明し、投票を呼び掛けました。

イーロン・マスク氏 「ドイツを救えるのはAfDだけだ」

 さらに、イギリスの経済誌「フィナンシャル・タイムズ」は、マスク氏がイギリスのスターマー首相の交代を画策していると報じ、ヨーロッパではトランプ次期政権への警戒感が広がっています。

■「今年の10大リスク」にトランプ政権の影

 2025年、トランプ氏のアメリカ大統領就任で世界はどう変わっていくのでしょうか。国際情勢を分析しているアメリカの調査会社は、世界の10大リスクを発表。そのうちの半数以上がトランプ次期大統領に関わるとみられるものでした。

 10位はアメリカとメキシコの対立。

ユーラシア・グループ 国際政治学者 イアン・ブレマー氏 「メキシコから直接の不法移民、あるいはもっと大きな問題は他の国からメキシコを経由してくる不法移民である」

 アメリカとメキシコの関係は、トランプ次期大統領の関税措置や不法移民の取り締まりなどで、さらに険悪になるとしています。

 7位は世界経済への負の押し付け。

ユーラシア・グループ会長 クリフ・カプチャン氏 「米国と中国という2大経済大国は、他のすべての国に混乱を輸出しようとしている」

 中国経済の低迷、そしてトランプ次期大統領の政策は世界経済の回復を妨げることになるとしています。

 4位はトランプノミクス。

国際政治学者 イアン・ブレマー氏 「市場はトランプ政権が経済にもたらすリスクを過小評価しています」

 これまで対米貿易で黒字となっている国々は「タリフマン=関税男」の標的になるとしていて、世界の貿易の流れをゆがめて混乱を生むとしています。

 3位は米中決裂。

ユーラシア・グループ会長 クリフ・カプチャン氏 「バイデン大統領は米中関係において非常に良い仕事をしてきた。トランプ氏の復帰はそれを終わらせるだろう。現在の米中関係の安定は終わり、いわゆる手に負えない分離、または決裂の時代が始まります」

 2位はトランプの支配。

国際政治学者 イアン・ブレマー氏 「彼(トランプ氏)が彼の周りの人々、特にイーロン・マスクとともに個人的な決定を下すという事実です。まさに予測不可能で、不安、変動、リスクを招きます」

 1位は深まるGゼロ世界の混迷。世界的なリーダーシップの欠如は危機的なレベルまで深刻化しているとしています。

ユーラシア・グループ 国際政治学者 イアン・ブレマー氏 「冷戦初期あるいは1930年代以来、最も危険な年になる」

トランプ次期大統領 「メキシコ湾はアメリカ湾に変更しよう。美しい響きだ」

トランプ次期大統領のX 「カナダは51番目の州に。良い考えだと思う」

トランプ次期大統領 「安全保障のためにグリーンランド(デンマーク領)が必要だ」

 大統領就任前に領土拡大の発言が相次ぐトランプ氏。同盟国への軍事的圧力も否定していません。

トランプ次期大統領 「(軍事力を使わないとは)今、約束することはできない」

 果たして今年は、冷戦初期に匹敵する最も危険な一面になってしまうのでしょうか。

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