処理水の海洋放出は、宮城県の経済にどのような影響を与えるのでしょうか。地域経済の専門家に聞きました。
七十七リサーチ&コンサルティング田口庸友首席エコノミスト「全体として見れば、今のところ(水産物の)実取引に(打ち切りなどの)大きな影響は出ていないとみられます。国内産については、国内市場においては(震災直後にみられた)東北産、福島産を忌避する動きはだいぶ、ほとんどなくなってきている」
しかし、中国や香港などへの輸出のストップに伴う国内産の価格下落という間接的な影響は既に起きていると言います。
「北海道のホタテなど、これまで中国に大量に輸出されていたものが、行き場を失って国内市場になだれていくことで相場の下落。需給が緩んで相場の下落を招いている。
国内最大の豊洲市場では(国内産ホタテの価格が)一説には3割ぐらい落ちている。これから需給次第では更なる下落ということも懸念され、生産者には非常に大きな痛手だと言える。影響は極めて大きくて、代替市場を探すのは容易ではないと考えられます」
水産業以外では、中国からの訪日客=インバウンドの回復に水を差す懸念も指摘します。
「宮城県でも7月に(仙台空港と)中国の直行便が再開して団体旅行も解禁された。まさにこれからボリュームゾーンが回復していくという矢先に、今回の件が足かせとなることが考えられる」
こうした影響は、いつまで続くのでしょうか。
「どちらかと言うと政治外交カードに使われているという面があって、政治決着をどうつけるか。状況によっては長引く可能性もある」