社会問題になっているオンラインカジノの当事者が語る実態、そして、ギャンブル依存症からの回復への取り組みです。

 Aさん「携帯で手軽にできるというところが魅力的だったので、少しずつオンライカジノを始めて徐々にはまっていきました」

 若者にまん延するオンラインカジノ、国内の利用者は337万人と推計されています。のめり込むと抜け出せなくなる闇です。
 Bさん「オンラインカジノって30万なんか1分で稼げるんですよね。自分なんか100万円で回して1500万になっていますし、もう桁数がおかしいんですよね」

 依存からどう回復させるのか、支援施設の取り組みにカメラが入りました。
 3月1日に仙台市青葉区で開催されたギャンブル依存症に関するセミナーは、ギャンブル依存症の回復施設を運営する民間団体の東北グレイス・ロードが主催しました。
 東北グレイス・ロード田村仁施設長「条件がそろえば誰もがり患し得る。やめたいのにやめられないという苦しさを感じながら、ギャンブルを続けているケースが多い」

依存症セミナー

 参加したのは、家族がギャンブル依存症になり悩んでいる人たちなど約30人です。オンラインカジノ依存症の男性が登壇し、自らの経験を語りました。
 Aさん「10万円が1分間で1100万円になったり、そういう成功体験みたいなものがどうしても忘れられなくて、ずぶずぶやってしまいました」

 オンライン上でゲームを行いその結果を賭けるオンラインカジノには、バカラやスロット、スポーツの勝敗を競うものなど様々な種類があります。サイトの多くは海外で運営されていて、その国では合法でも日本からアクセスして賭博を行うことは犯罪です。

 セミナーで自らの体験を語った男性Aさんは、東北グレイス・ロードが運営する東北唯一のギャンブル依存症の回復施設に入所しています。ここでは、ギャンブル依存症に悩む全国から集まった20代から50代までの約30人が共同生活を送っています。

 Aさんは、2023年秋から入所しています。
 Aさん「家の中にいて携帯1台あったら、長い時は24時間1日中できるというギャンブルなので、ストレス発散でオンラインカジノを自分は使っていた」

 病院で理学療法士として働いていたAさんは、コロナ禍で外出ができない中スマートフォン1台でできるオンラインカジノにのめり込み、借金は700万円ほどに膨らみました。違法と知らないまま気が付くとやめたくてもやめられない状態になり、仕事以外の時間を全てオンラインカジノに費やしていました。
 Aさん「自分でもコントロールできなくなって、気付いたらやってるという感覚が強かった。携帯開けばオンラインカジノ、お金を増やすことしか考えてなくて」

 オンラインカジノは、スマートフォンで手軽にできることからゲーム感覚で手を染めてしまい、引き返せなくなるケースが多いと言われています。警察庁の調査では、国内でオンラインカジノを利用したことがある人は約337万人に上ると推計しています。年代別では20代が30%、30代が28.8%と全体の半数以上を占めていて若年層が多いことが特徴です。

共同生活を送る

 Aさんと同じオンラインカジノ依存症で1年ほど前から施設で生活しているBさん(30)は、中学校の教員として働いていましたが400万円ほどの借金を抱え好きだった仕事も手に付かなくなりました。
 Bさん「仕事中にですらギャンブルしてました。離れられないというか、テスト監督の時にタブレット端末を置いて勝手にオートで回して(オンラインカジノをして)みんなをちらちら見ながら自分もこうやってみるとか」
 Bさんは、その後、仕事を辞めることになります。
 Bさん「オンラインカジノって30万なんか1分で稼げるんですよね。自分なんか100万円で回して1500万になっていますし、もう桁数がおかしいんですよね」

 ギャンブル依存症は、個人の意志の弱さや倫理観が低いことで引き起こされるのではなく誰もがなり得る精神疾患です。周りに相談できず、1人で抱え込んでしまうことから孤独な病とも言われています。

 ギャンブル依存症から立ち直らせるためには、自分のギャンブル経験を正直に語れる場や孤立させない取り組みが重要です。施設では、回復プログラムの一環として毎朝それぞれが依存症の経験や感情を正直に話すミーティングが行われます。人の話に意見したり、批判をしたりしない「言いっぱなし」「聞きっぱなし」がルールです。
 東北グレイス・ロード田村仁施設長「過去の経験を話して人の経験を聞くことで、その中でいろんな気付きを得たりとか、自分だけじゃなかったんだという安心感を得たりとか、そういう作業を繰り返しながら治療を行っています」

 AさんとBさんもミーティングで自分自身と向き合います。
 Aさん「ギャンブルは自分のお金だけでやれてれば良かったですけど、周りの人巻き込んでしまって関係ない人まで巻き込んでしまいました」
 Bさん「今、現金100万置かれてそれを一発の増えるか分からないボーナス(オンラインカジノ)にポンッて置けるかと言われたら、俺置けないんですよね。けど数字の100万ってゲーム感覚というか、ちょっと狂ってるんですよね、感覚が」

回復プログラム

 回復プログラムでは、この他、地域のごみ拾いなどのボランティア活動を行い、社会に貢献する喜びを感じことで、ギャンブル以外の楽しみを見つけます。
 Aさん「人を頼るということを今までできなかったんですけど、共同生活してたくさん周りに仲間がいるので、そういう人を頼ったりできるようになってきてて、自分の回復を楽しみながらこれからの人生を生きていけたらと思っています」
 Bさん「もう一度、教育者として逆にこう依存症、ゲーム依存症、そういう子たちの気持ちが分かってあげられるんじゃないかなって。そういう子たちを助けるという活動でも良いのかなというところでやりたいなと思っています」

 誰でもなり得るギャンブル依存症はインターネットが普及した今、その危険性は私たちの身近に潜んでいます。
 オンラインカジノをめぐっては、国も対策に乗り出しています。政府は3月、オンラインカジノの利用者が掛け金を送金するために使う仲介業者への取り締まりの強化などを盛り込んだ基本計画を閣議決定しました。た東北グレイス・ロードでは、電話やホームページから相談を受け付けています。