まずはアメリカ、トランプ前大統領への暗殺未遂事件です。11月の大統領選に向け、テレビ中継もされる中で起きた衝撃の事件でした。

■トランプ氏“暗殺未遂”一部始終が生中継に

日本時間午前7時すぎ、大統領選の激戦州、ペンシルベニア州で演説するトランプ前大統領。銃撃が起きたのは、バイデン大統領の移民政策を批判している時でした。

(トランプ前大統領)「史上最悪の大統領が就任し、私たちの国に何が起こったか見てくれ。2000万人か…このグラフは少し古いな。数カ月前のもので、実際の数字を知りたいなら…」

銃声の後、トランプ氏は右耳に手をやり、うずくまります。騒然とする会場…

さらに銃声がし、聴衆からは悲鳴が…シークレットサービスがトランプ前大統領のところにかけつけます。

「行けるか?行けるときに動くぞ!動け!動け!」

銃で武装した部隊が壇上に上がり、会場を見渡します。

「伏せたままでいろ」

倒れてから1分後…

「靴をとらせてくれ」

「つかまって、頭から血が…」

トランプ氏は、シークレットサービスに支えられながら立ち上がります。右耳から血を流しながら、右手の拳を突き上げるトランプ氏。会場は、悲鳴から歓声へ…その声に答えるようにもう一度、拳を高く突き上げます。

「USA、USA、USA」

自らの足で車へ乗り込みます。

トランプ氏の演説を生中継していたCNNは―。

(キャスター)「ライブ中継の映像ですが、何かあった模様です。警護担当がトランプ前大統領のもとに駆け寄っています。現地からのライブ映像です。何らかの音が聞こえると、トランプ前大統領に『伏せて』と呼びかけました。集会の途中で警護担当が壇上のトランプ前大統領のもとに駆け寄りました」

大混乱となった演説会場。

(逃げながら撮影する男性)「トランプの集会にいたんだけど、誰かが銃撃を始めた。何なんだ」

「あっちに逃げて!」

(動画の撮影者)「銃声が聞こえた。はっきりと分からないけれど、トランプは立っている。ゲートを開ければいいよ」

ゲートが開くと、人々は続々と会場から逃げ出します。

Q.弾は当たった?

「いや、彼は立っていた。最後にはね」

今回の銃撃では、トランプ氏が右耳をけがしたほか、集会参加者1人が死亡、2人が重体となっています。銃撃後に立ち上がり、拳を突き上げたトランプ氏の姿を撮ったカメラマンは、その時の様子をこう振り返ります。

(AP通信カメラマンエヴァン・ブッチ氏)「左肩越しに“パンッ”という音が複数回聞こえて、すぐに銃撃音だと分かりました。私はすぐに演説台に向かい、トランプ氏を守る警護担当を撮影しました。トランプ氏は台から降りる最中、観衆に拳を突き上げ、手を振っていました。写真で分かる通り、トランプ氏は出血していました。警護担当がトランプ氏をエスコートして車に乗せましたが、その間もトランプ氏は拳を突き上げていました。どれくらい経っていたか分かりませんが、一瞬のように感じました」

■銃撃直後に“拳突き上げ”SNSで健在強調

ヘリコプターで病院に搬送されたトランプ氏。銃撃から2時間半後には、SNSに投稿しています。

(トランプ氏のSNS)「私たちの国でこのようなことが起きるとは信じられません。私は銃で撃たれ、銃弾は右耳の上部を突き抜けました。ヒューっという音と銃声が聞こえて、すぐに銃弾が皮膚を裂くのを感じ、何かがおかしいと分かりました。多量の出血があり、何が起きているのかに気づきました。アメリカに神のご加護を!」

■地元出身の20歳高校では“表彰歴”も

容疑者はどこからトランプ氏を狙ったのか…

「屋上にいるぞ。向こうだ。屋上にいるぞ」

地元メディアによると、トランプ氏が演説していた場所と、容疑者が発砲したとみられる場所は直線距離でおよそ125メートル離れていました。

「やつ(容疑者)は死んだ。頭を撃たれて血が出ていると思う」

建物の屋上には―。シークレットサービスは声明で、トランプ氏を狙った銃撃犯を無力化し、銃撃犯は死亡したと発表しました。容疑者は一体、何者なのでしょうか?

「速報です。FBIは容疑者をトーマス・マシュー・クルックスと特定しました」

現場から車で1時間ほどの場所に住むトーマス・マシュー・クルックス容疑者20歳。ニューヨーク・タイムズによると、容疑者に前科はなく、2年前に地元のベセルパーク高校を卒業、在学時には数学・科学プログラムで表彰されるなど活躍していたといいます。さらにクルックス容疑者は、「共和党員」として有権者登録を行っていた一方、民主党に近い団体に15ドルの寄付をしていたと報じています。

(FBIの会見)「動機を特定するために、捜査をすすめています」

クルックス容疑者の遺体の近くからは殺傷能力の高いセミオートマチックライフル(AR-15)が押収されています。FBIなどは捜査を続けていますが、詳しい犯行の動機など、いまのところ分かっていません。先ほどクルックス容疑者の父親がCNNの取材に応じ、「何が起こっているのか把握しようとしている」と話したといいます。

■発砲直前「屋根にいるぞ」警備から姿見えず?対応後手に

実は会場近くでは、ライフルを持った男が、事件の直前に目撃されていました。

(目撃者)「男が後ろの建物の屋根の上をクマのように這い上がっていくのに気づきました。私たちから50フィート(約15メートル)離れていたと思います」

Q.彼は銃を持っていた?

「ライフルを持っていました。はっきりと分かりました。間違いありません。私たちは彼を指さしました。地上では警察官が走り回っていました。私たちは『ライフルを持った男が屋根にいるぞ!』と言いましたが、警察官は『え?何?』という感じで、何が起きているのか分かっていないようでした。私たちは『すぐそこの屋根の上だ!そこにいる!はっている!』という感じで。私は『なぜトランプはまだしゃべっているんだ?』と思いました。『なぜ彼をステージから引きずり下ろさないんだ?』と。私は2~3分、あの男を指さして立っていました。シークレットサービスは小屋の上から私たちを見ていました。私はこんなふうにその屋根を指さしていました。次の瞬間、5発の銃声が鳴り響きました」

Q.屋根の上の男性が撃ったことは確かですか?

「100%そうだ。100%だ」

銃撃を防ぐことはできなかったのでしょうか。

Q.シークレットサービスは彼を見ることができた?

(目撃者)「おそらく屋根の陰に隠れて見えなかったと思います。でも、なぜすべての屋根にシークレットサービスがいなかったんだ?そんなに広い場所でもないのに」

(親松聖記者)「事件から8時間が経過しました。トランプ氏の演説会場の周辺では今も警察車両で通行止めとなっています」

警備態勢の強化は、トランプ氏の住居があるニューヨークでも―。

(鈴木彩加記者)「ニューヨークにあるトランプタワーです、今回の銃撃事件を受けてこうしたトランプタワーや裁判所の周りなど、市内の警備が強化されています」

警察の会見では…

Q.トランプ氏の警備は十分だったか?

「経験上、シークレットサービスの警備は優秀です」

Q.屋根の上に人がいるという目撃談が複数あるが?

「それについては把握しています。警察は報告された複数の不審な動きに対応しました。その目撃情報についても、事後調査を行っています」

トランプ氏の銃撃を受け岸田総理大臣は、「X」に日本語と英語で「民主主義に挑戦する暴力には毅然と立ち向かわなければなりません。トランプ前大統領の一刻も早い回復をお祈りしています」と投稿。

起業家のイーロン・マスク氏は、「トランプ大統領を全面的に支持し、彼の早期回復を願っている。アメリカにこれほどタフな候補者がいたのは、セオドア・ルーズベルトが最後だった」として、今回初めてトランプ支持を公言しました。

ハリス副大統領は「このような暴力は私たちの国に存在の余地はありません。私たちは皆、この忌まわしい行為を非難し、これがさらなる暴力につながらないよう、自らの役割を果たさなければなりません」

一方で、ロシア外務省のザハロワ報道官は「米国では政敵に対する憎悪の扇動が奨励されている。大統領や大統領候補の暗殺や殺人というのは米国の伝統」と「テレグラム」に投稿。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「暴力は正当化されず、世界中のどこにも存在してはいけない。暴力が勝利することはあってはならない」と訴えました。

■大統領選へ影響は?事件後“勝利の予想”急上昇

今回の銃撃事件は4カ月後に迫った大統領選挙にどう影響するのでしょうか?

(バイデン大統領)「決断力と勇気を兼ね備えたウクライナの大統領、プーチン大統領です」

ゼレンスキー大統領の名前をプーチン大統領と言い間違えるなど失言を繰り返したバイデン大統領。ニューヨーク・タイムズによれば撤退を求める民主党議員は、上下両院で合わせて20人。民主党内からの撤退圧力が強まっていました。事件を受けて急遽会見を行ったバイデン大統領。

(バイデン大統領)「トランプ氏に連絡を試みました。現在医師の手当てを受けており、無事のようです。電話がつながり次第すぐに話してみようと思います。アメリカで政治的暴力は許されません。もうたくさんです。国を結束させねばならないのです。この手の暴力を受け入れてはならず、大目に見てはなりません」

イギリスの公共放送BBCによれば、バイデン陣営はすべての政治的発信を一時停止し、テレビ広告もできるだけ早く取り下げるとしています。

一方、トランプ氏に近い共和党関係者からはバイデン大統領を非難する声も挙がっています。トランプ氏の副大統領候補の1人とされるヴァンス上院議員はXへの投稿で…

(共和党 ヴァンス上院議員の投稿)「今日の出来事は一連の流れのひとつだ。バイデン陣営の主張は、トランプ(前)大統領が権威主義のファシストで、何が何でも止めねばならないことを前提としている。この挑発的表現がトランプ(前)大統領の暗殺未遂に直接つながった」

アメリカの政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめたブックメーカーによる大統領選の勝率予想を見ると…

銃撃事件が起きた13日にトランプ氏勝利の予想が跳ね上がり64.3%に及んでいます。

銃撃されたトランプ氏が東部ニュージャージー州の空港に到着する映像を陣営がSNSに投稿しました。けがをした右耳の状態は分かりませんが体調に問題はなさそうに見えます。大統領候補を正式に決める共和党大会は月曜(15日)から。トランプ氏の陣営は予定通り出席すると発表しています。

(トランプ氏のSNS)「今、何よりも大事なのは私たちが団結し悪に勝たせないことです。(共和党大会が開かれる)ウィスコンシン州から偉大な国民に話すのを楽しみにしています」

7月14日『サンデーステーション』より

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