大手ゼネコンの清水建設が仙台市内で手がけたマンションに耐震対策の施工不良が見つかった問題について、マンションの管理組合の顧問建築士がkhbの取材に応じ「人の命と建物を守る耐震対策の不備で、ありえない話」と批判しました。

 清水建設が20年以上前に仙台市内に建設したマンションで問題になっているのが、地震の揺れから建物を守るために必要な対策=「構造スリット」の不備です。

 「構造スリット」は阪神淡路大震災をきっかけに普及した耐震対策で、マンションなどで広く採り入れられています。

 壁と柱がぶつかり建物が壊れるのを防ぐため、壁と柱の間に数センチの隙間=スリットを設けて壁と柱を離し、そこに発泡ポリエチレンなどの緩衝材を入れ揺れによる被害を抑えます。

 ところが、問題のマンションではこの「構造スリット」が、調査したうちのおよそ1割にしか入っていないことが発覚しました。

 この問題を明らかにした1級建築士の都甲栄充さんです。長年、構造スリットの問題を訴え続け、今回のマンションでは管理組合の顧問建築士を務めています。

 都甲さんは、耐震対策の不備は人の命に関わると厳しく批判します。

 都甲栄充1級建築士「構造スリットは災害が起こった時に、建物の安全と人の命を守るためにある。それが入ってないとか、大切な柱に食い込んで柱の性能を発揮させないような現象が起きているということは、そもそもの設計の前提条件と違うわけです。ありえない話だよね」

 都甲氏は、東日本大震災などで壊滅的な被害を受けなかったからといって、今後も大きな被害が出ないとは言えないとした上で、まずはこれまでの地震の影響を明らかにするよう求めています。

 都甲栄充1級建築士「スリットというのは地震が起きた時のための戦う武器だ。これを入れてなくて東日本大震災、宮城沖、福島沖が来てるわけだから。ボクシングでいうと、ボディーブローを何回も打たれている。スリットが入っていなくて地震被害が起きた現状を(清水建設は)把握しろと」

 清水建設は施工不良について「ずいぶん前のことなので、原因は分からない」としつつも、今後修繕する意向を示しています。

 都甲さんは、「構造スリット」は施工が難しい上、建物の完成後に十分な検査が行われないことが多いため、今回の件は「氷山の一角」だと警鐘を鳴らします。