2024年4月、愛媛県今治市に新しい高校が開校しました。その名も「FC今治高校里山校」。学園長を務めるのは、サッカー日本代表元監督の岡田武史さんです。なぜサッカーから教育の道に?どんな教育を目指す?40年近く前、共に日の丸を背負った盟友である「サンデーLIVE!!」コメンテーター・松木安太郎さんが直撃。教育の未来を考えます。

■岡田学園長が目指す教育古田敦也も期待

 松木さんが訪ねたのは、愛媛県今治市にある「FC今治高校 里山校」。2024年4月に開校を迎えた、男女共学の私立高校です。この学校の学園長を務めているのが…。

FC今治高校 里山校 岡田武史学園長 「この学校の中心になるのは主体性。主体性というのは自分が何をしたいか、どうやりたいか、どう思っているか」

 サッカー日本代表の元監督で、現在はFC今治会長の岡田武史さんです。

 そのFC今治の名を冠していますが、サッカーを教える学校ではありません。

 「定期テストなし」「午後は学校を飛び出して実践学習」といった独自のカリキュラムの学び。生徒は大学進学だけでなく、起業や留学など様々な進路を目指します。

 こうした“型破り”な高校の門をたたいた1期生は、全国から集まった34人。実は、1月に行われた入試で、古田さんも試験官として生徒たちと向き合っていました。

古田敦也さん 「すごい可能性を秘めた若い人たちがたくさんいると思うので、日本を引っ張ってくれるような、そんな人材を育成できるような学校になってくれればと思っています」

■「スマホOK」「自習OK」主体性を引き出す教育

 まず、辻校長先生が案内してくれたのは、理科の授業です。生徒たちが自ら関心のあるテーマを決め、調べたことをプレゼンします。発表に対し他の生徒が質問していくことで、学びを深め合っていきます。その場でスマホなどから調べるのもOK。自ら学ぶ精神が生徒たちに根付いています。

 続いては、英語の授業。一見、みんなバラバラに座っていますが…。

FC今治高校 里山校 辻正太校長 「あそこは会話しながら、問いかけられたことに対して答えて学んでいく。あの2人は英語で会話しながら、左の子は海外に行きたいっていう子ですね。がんがん質問してもらって、そのスピーキング力を高めるみたいな。この辺は黙々と、自分で今教科書を使いながら単語をやっている」

 全員が主体的に学べるカタチを目指して、生徒自身がそれぞれの学び方を選んでいたのです。

 数学の授業でも、先生が教える講義型、友達と教え合う交流型、自分で勉強する自習型の3つのスタイルに分かれています。

FC今治高校 里山校 辻正太校長 「数学と英語は特に個別最適な学びっていうのをすごく大事にしていて、成績で言うと結構バラバラ。(入試で)筆記試験をやっていないのでばらつきがあるので、それぞれが学び方も選ぶっていう形」

 生徒たちも、主体性を伸ばす学びを大切にしているようです。

FC今治高校 里山校1年 山本朔大さん 「将来、サッカーのチームを作りたくて。チームを作るにあたって、主体性を入ってきてくれた人に教えたい。持たせたい」

 岡田学園長の思いに共感して入学を決めたという生徒も。

FC今治高校 里山校1年 山口南帆子さん 「岡ちゃんが、『エラー&ラーン』の教育をしていると聞いて、なかなかエラーさせてくれる学校がないっていうか。中学の時、校則とかに不満があって声を挙げたんですけど届かなくて、ちょっと意味なくない、この教育って思っちゃって」

■松木×岡田対談…「サッカーから教育」の真意

松木安太郎(以下、松木):ということでまず、この今治にこだわった理由をご説明いただきたいなと思います。

岡田武史(以下、岡田):こだわった訳じゃなくて。最初は本当、日本のサッカーがこれから世界で勝っていくのに、主体性と言って、言われたことはきちっとやるけど、自分で判断できないってずっと言われてきた。Jリーグができて30年でかなり良くなった。でも、まだ根本的に解決してないなと思う時は時々あるわけよ。それをどうしたらいいんだろうって考えた時に、もう育成段階から変えていかなきゃいけないだろうなと。で、どうしたらいいかって考えた時に、あるスペイン人の有名なコーチに出会って。スペインにはサッカーの型があるんだけど、日本にはないのかって言ったんだよ。え、型?俺らは型にはめちゃいけないから自由だ、自由だってやってきたのに、あれだけ自由奔放にしているスペインに型があるってどういうことって話していたら、型にはめる型じゃなくて「原則」があって、それを16歳までに教えた後自由にするって言ったんだよ。 日本って、自分で考えなさい、どうするのって、自由にやりなさいって言って、16歳ぐらい、高校生ぐらいから戦術っていう対応策を教えるじゃん。全く逆だなと思って。そうしたら日本も、世界で勝つための日本人の原則を作って、それを16歳までに落とし込んで後は自由にする、今と逆の指導法をするクラブを作りたいって思い始めた。

松木:だから日本の場合は、例えば学校教育の中でスポーツがあるから、学校教育で16~18歳という年代までは結構 ガチガチの、学校にいなきゃいけない時間が多いわけじゃない。その辺がやっぱり日本にとってはすごくネックっていうところはあったと思うんだよね。

■「サッカーと資質は一緒」求められる主体性

松木:このインタビューで話を聞く時に、番組スタッフの人たちは、なんで岡田さんはサッカーの世界から教育の場に入ったんでしょうかって俺に質問したの。 一応、今までの(岡田学園長の)コメントとかいろいろ見たら、あれちょっと待てよと。この今治で学校を作られたベースになっているのは、全部サッカー選手の資質のことを書いてあるなと思ったんだけど。 だから実際僕からすると、今治で教育の場、実はサッカーと離れて、ではなくて、やっぱり相当くっついたものをイメージして作ったんじゃないかなって個人的に思っていたわけ。その辺はどうですか。

岡田:人材としての要素、どういう要素を持った人材が必要かというのは、今サッカー界が必要としているのと、これから社会が必要とするのはすごくマッチしていると思う。おっしゃる通り。 ただ、僕サッカーから学校にいったわけ。サッカーもやっているし、経営もやっているし、学校もやっているんだけど、別に学校教育をやるつもりは全然なかった。 そうしたら、今治明徳学園っていう学校法人から「理事長やってくれ」って言われた。そんな“客寄せパンダ”で学校立て直してどうするの、そんなの意味がないと。新しい教育をするつもりがあるならやらんでもないって、ポロっと言っちゃったんだよ。 それで僕は、教育というのは社会に出るための準備で、その社会がこれだけ変わっているのに、教育が変わらないのはおかしいだろうと思っていたわけよ。 そうやってポロっと言ったら、「新しい教育、やるつもりあります。どういう教育でしょうか」って。 僕がばーっと言ったら、教育関係者がみんな「岡田さん、それ面白いからやりましょう」って。

松木:今の学校教育にも結構限界が来ていて。例えば先生の立場だったり、生徒の立場ってことを考えたり、あとはハラスメントの問題だとか、いろいろ生きていく上で今まで可能だったものが不可能になる。 そういう時代が来ると、やっぱり大事なのは自分。主体性というか一体自分として何ができるかという。そこがやっぱり一番大事なところだと思って。実はそこもサッカー選手の大きな資質。 サッカーの特性もそうだけども、やっぱりある程度、監督さんよりも選手がその現場で自らプレーしなきゃいけないっていうことを考えると、そこに近いのかなと俺は思って。

岡田:結果的に必要とする資質っていうのは一緒だった。今もう社会がこれだけ変わってきて、環境問題も40年ぐらいやっているけど、もう閾値を超えて元へ戻れなくなっているんだよね。 そうするとこれからロールモデルがいない時代が来るわけ。4月に種植えてここで水抜きしたらこうなるってわからないのよ。だってドバイで洪水が起きている。 過去に起きていないからAIも誰もわからない。お上に聞いても先生に聞いてもわからない。自分で考えてやってみるしかない。

松木:データを取っている人でも答えは出ない。だってヨルダンでさ、我々も行ってみるけども、あそこに大雨が降るって、誰も想像しないことが起きているのが現実だからね。

岡田:そういう時に、主体性とかチャレンジ精神とか、そして適応力とか、いろんなものが必要になってくる。そういう教育だって言ったら、ばーっと人が来て。結局、先生も今のままじゃダメだと。 先生ってみんな一生懸命で真面目なんだよ。このままじゃダメだとなんとなく思っているんだけど、正解がわからないから、変えられなかった。で、俺ド素人じゃん。正解わからないけど、やってみようってやったら、ばーっと来られたっていう感じ。

■AI時代の「リーダー論」求められる人材とは

松木:岡田武史という人と松木安太郎という人が、小さい頃からずっと教育されてくるじゃない。俺はどちらかというと、もう自由奔放で。やっちゃいけないことをやって、っていうタイプのところから出ているんだよね。 すると岡田武史さんという人が、「自分が育ってきた時にもっとこんな自由でやらせてくれたら、俺もうちょっと違ったのにな」って、もしかしたら思っているのかなと思って。

岡田:いや、俺も結構、知らないかもしれないけど、自由奔放にやっていた方で、だから俺は家庭環境も自立するのが早かったから。 だからそういう意味では、もっとこうなっていたらどうなったとか、そういうのはあんまり思ったことないけど、ただ、あの頃と今とは、もうAIがこれだけ発達してきて、何が本当かわからない時代じゃん。フェイクだ、何だと。 こんな時代とあの時代はやっぱりもう俺らの価値観で比較できないと思う。

松木:だからその教育の手法っていうのが、やっぱり最終的にサッカーチームを作るベースにしているんじゃないかなって個人的に思っていたわけ。多分それもあるわけでしょ?

岡田:いや、資質的にはさっきも言ったけど同じで、俺たちが子どもたちとかを育成しているのと一緒なんだけど、ちょっと違うのは、我々その中のキャプテンシップって呼んでいるんだけど、リーダー的なやつを作ろうと。 リーダーって言うのは、よし、俺についてこいって引っ張っていくやつなんだけど、そうじゃなくて、みんなが主体的に察して巻き込んでいくような人物、こういうのを作ろうということで、いろんな経験とか、いろんな有名な人、いろんな職業の人が来て実習してくれる。 そういうものから自分がよし、これだって熱中するものを見つけさせたいので、そこがちょっとサッカーと違う。サッカーはもうサッカーって決めているから。

松木:リーダーって役割じゃない?リーダーシップは誰でもいいよっていう話だよね。だからサッカーチームで置き換えると、じゃあキャプテンと監督だけがリーダーシップを取るのかって、そうじゃないからね。 チーム全体として誰もがこうやって、これをこうしたら変わっていくよっていう意見が言えるっていうリーダーシップが本来のリーダーシップな訳でしょ。

岡田:よく言うんだけど、リーダーがいない国がダメなんじゃない。リーダーを求める国民がいる国がダメなんだよ。 要するに、誰かなんとかしてくれる、いや、誰かではダメなんだよ。みんな1人1人が、自分がやるというふうに巻き込んでいかなきゃいけない。 それがキャプテンシップって言っているんだけど、サッカーチームと一緒だよ。

■「自分だけのFCを」FC今治高で学ぶ生徒の資質

松木:FCって高校の名称につけましたよね。

岡田:俺も最初は「未来学園」とかいろいろ考えていたんだよ、みんなで。 そうしたら鈴木寛先生という文部副大臣までやられた人が、「岡田さん覚悟してください。もう腹くくってください。FC今治高校しかありません」って言われて。 え、また俺の責任?って。でもじゃあこれでいいかと。 ただ、FCはフットボールクラブだけじゃないと。フューチャークリエーションとか、自分の「FC」を見つける学校だっていう立てつけにした。

松木:学校で生徒のお子さんたちに何人か話を聞いて、俺の印象としては、例えば、じゃあサッカー選手がブラジルへ行って、ブラジルで日本の選手が質問をされました。 いろいろ授業を聞いているんだけども、日本の選手は一生懸命聞いて、さあ質問ありますかって言った時に、うん…って黙っちゃうけど、どっちかっていうと、南米とかヨーロッパの選手は、授業は適当に聞いているけど、何か意見ありますかって言うと、ベラベラって言い始める。 それが日本の選手とそうじゃない国の選手の資質。これもやっぱり実はサッカーにも今まで出ていて。 そういった意味では、お子さんたちにいろんな話を聞いたら、いろんな自分のいろんなイメージを持っているっていうのはすごい。

岡田:発言するだろ?来てくれた講師の人がみんな、こんなに質問攻めに遭うのは初めてですって。

■主体性をどう育てる? “岡田教育メソッド”

岡田:日本ってみんな一緒の所からスタートする。そこから外れると何か悪いことしたみたいな。それ違うだけなんだよ。人と違うだけ。自分はあの人と違うだけ。 ところが、日本はそれを「間違い」と言っちゃう。あいつ間違っている。あれ、俺間違ってるのかな。いや、間違いじゃなくて、違うだけなんだ。 その違いをお互い認め合って、徐々に落としどころを見つけていく、共通の目的のためにね。これが対話で、これが本当の民主主義なんだ。それを日本の場合、一緒じゃなかったら間違いって弾こうとする。 うちは違う、違うだけなんだ、みんな自分の考えを言いなさいと。全く問題ないと。

松木:そうだね。俺なんかも、どちらかと言ったらダメだって、弾かれる回数の方が多かったから。 やっぱり子どもたちに教育する時に気をつけてるのは、プラス思考っていうか、減点法だとそれが無理なのよ。 減点法だと、100点ずつもらって何か悪いことしたら90点になって80点になっちゃうわけだよ。 ところが0からスタートすれば、1ついいことしたら、それがプラス1になったり10になったりするわけじゃない。 すると10になって、最終的に能力の高い子を1回でも追い越した瞬間があると、人間ってやっぱり自信持つじゃない。 また次に向かっていくっていう部分では、生徒さんのいろんな話を聞いてたら、まさにこれだなっていうのは個人的に思って、その辺も聞きたいなと思って。

岡田:うちの学校っていうのは、主体性と多様性を受け入れる、違いを受け入れるという2つ大きなテーマがあって。 そういう意味で、まず保護者にも最初から言ってあるわけ。 生徒にも、ここで入学式やったんだけど、最初にうちは先生が教えたりなんかしませんよと。 自分で成長して、自分で学んでいく、我々はそこへ寄り添いますと。なんか冷たく感じるかもしれないと。 でも、僕らは絶対見捨てない。いや、うちの子だけほっとかれているって、いやいや、ほっといているんじゃない。 我々は見守っています。だから、何かあった時に、うちの先生っていうのは3つの質問をするわけ。「どうしたの?」って。 その時に先生の考えは言わないでくださいよと。「それで君はどうしたいの?」って聞いてください。その後も先生の考えは言わないでくださいよ。「先生に何か手伝えることある?」。 要は寄り添う、何かを上から教えて引き上げるんじゃなくて、寄り添って、セーフティーネット、落ちそうになったら絶対助けるよ、絶対見捨てないから。 そういうような指導を心がけているんで、我々は減点法なんていう基準がないから、どっちかといったら加点法だよね。

松木:そこはもう絶対俺はベスト、一番いい形だと僕は思っていて。じゃないと俺みたいなこういうところで引っかかってなかったと思うんだよね。減点法だったらね。 だから逆に、何かを持ち合わせて、何かをやりたいという意欲もそこで湧いてくると思うから、考え方としてはすごくいいなと思うし、サッカーに近づいているなとも思うし。

■FC今治高で実践…各界の第一人者から学ぶ意味

 主体性を育むFC今治高校の教材の一つが、四国88カ所を巡るお遍路です。ルート、食べるもの、寝泊まりの場所など、すべてを自分たちで考えます。

 岡田学園長が目指すのは、主体性を持って人を巻き込む力、「キャプテンシップ」を持ったリーダーの育成です。それを実現するための授業が、アートやスポーツ、経済界のリーダーなど各界の第一人者を招く特別講座。

 パフォーマーのEXILE TETSUYAさんや、元アーティステックスイミング日本代表の杉山美紗さん、元文科省副大臣の鈴木寛さんなど、時代を切り開いてきたゲストとの交流を通して、生き様や社会への向き合い方を学びます。秋には、「サンデーLIVE!!」コメンテーターの古田敦也さんも登壇する予定です。

岡田:例えば、この前来てくれた西川悟平さんという7本の指のピアニスト。 東京パラリンピックの最後に閉会式にいた人なんだけど、この人の挫折の話。みんなそんなスムーズに行ってない、いろんな人生を歩んできて、でもこういうふうになった。 ただ、僕は最後に子どもたちに言うのは、それでもここに来ている人は、ひょっとしたら世間的に成功した人ばっかりだよ。同じ苦労していても、こんなに成功してない人もいるんだよ。 そういういろんな人生があって、でも一番大事なことは、人生の成功とは何かと言ったら、競争して勝っても、また次の競争が来る。永遠に競争する。 じゃあ目標達成、目標達成しても人生は終わんないから、次の目標が必要になる。そうすると最終的に、この一瞬一瞬をいかに生きるか。成長するためだったり、自分が生き生きと生きるかだったり、そこに行きつくんだ。 それが結果的に周りから見て成功している人、成功と言われる人もいるし、成功と言われない人もいるけど、それはいいんだと。一番大事なことはそれなんだってことを伝えたくて、俺の授業はやったんだけど。

松木:大事なことだよね。個人的な話で悪いんだけど、学生時代の友達が先生になって。で、安太郎、お前の苦労したことを、実は登校拒否の子がいるんだけど話してやってくれないかって。え、俺別に何にも偉いこと話せないよって言って。でもこんな苦しくてあんなことやったよっていう話をしてくれないかって。 一回その子の所へ行って、雑談を30分やったんだよね。そうしたら、どこが気に入ったかどうかわかんないんだけども、どっか何か感じたものがあったのかもしれないけども、何年か経って電話かかってきて、無事、登校拒否の子が卒業したよって。 もう辛いことばっかりの話をしたのね。決してプラスになるようなことはこれっぽっちも話してないんだけど、でもそういう経験値が、その子たちにとってはもしかしたらどこかで感じたものがあって。 だから今岡田さんおっしゃったように、いっぱいいろんなことを経験した人たちが、一流と称される人たちが来て、そこでいろんなことを話すだけでも、子どもたちに対する影響ってすごい大きいなって思うから、それは幸せな学生生活じゃないかなっていうふうに個人的には思うね。

■3年間の学びと進路「卒業時に何か情熱を」

岡田:うちを卒業する子は、大学へ行く子もいるかもしれない。ただ、入試の勉強はやりたい子には特別やらせますけど、基本的に入っていない。 大体普通の高校は106単位か107単位取るんだけど、うちは文科省の最低の76単位をほぼ午前中に終わらせて、午後は街がキャンパス。いろんな実学とか有名な人が来るゼミとか、そういうのばっかりなんだよね。 それは今、大学入試もAOだとか推薦という総合型選抜が増えているので、そういうので大学行く子もかなりいると思う、結論的には。 ただ僕らとしては、ともかく俺はこれをやりたいっていうものをこの3年間で見つけて、そして起業してもいい、海外行ってもいい、就職してもいい、大学行くのでも。 4年間ちょっと大学一応行っとこうかという生き方はしてほしくない。それは将来的に変わってもいいんだけど、卒業する時に何か情熱を持つ。だって人間、好きなことだったら頑張ってやるじゃん。

松木:いかに好きにさせるかっていう環境づくりじゃない。だからそれは、お子さんたちの話を聞いていて、起業したい子もいれば、今何を準備したいって思っている子が、具体的な言葉として、自分の言葉として言う。

岡田:うちは2年間しか寮入れない。3年になったら街に住まなきゃいけない。家の改修とかも教えるんだよね。 そういうのをやってシェアハウスをしたり、または地元のおじいちゃん、おばあちゃんと親しくなって居候させてもらったり。なんとか自分で生きていかなきゃいけない。 2年になる時に株式会社を立ち上げさせて、コミュニティーを作るようなことをやらせるとかいろんなことをやるので、その中で自分の道っていうものを見つけてほしいなと思って。

■新時代の“先生”はどんな存在であるべきか

岡田:有名な私大から、包括提携したいと。包括提携ってなんですかって言ったら、一般入試の問題って、チャットGPTが満点取りますと。それを競ってもしょうがない、そんなのチャットGPTにやらせとけばいい。 そうしたら、総合型選抜が増えてるんだけど、ちょっとしたエッセイと面接ではわからないと。結局内申点で取っちゃうと。それでは意味ないので、岡田さんの学校のような教育した子どもがどういう特性あるかと3年間一緒に研究して、新しい選抜方法を作りたいと。

松木:先生たちのやりたいこともできなくなった時代。だから、昔と今が変わったんじゃなくて、ルールが変わったので、先生方もなかなか今まではできたことができないことが増えてきたんで、そういう方向に転じていくっていうのも、大学側ももう多分わかってるんだろうね。

岡田:高校の先生、中学校の先生、小学校の先生、みんな真面目で一生懸命なんだよ。この子の人生を背負って、この子の将来のため。いやいや、人の人生なんか背負えませんよ。 僕はコーチによく言うんだよ。育てる?おこがましい。育つ手伝いを?いやいや、育つ邪魔をするなぐらいのことを言うんだけど。寄り添っていって、最後のセーフティーネットでいいんだと。 子どもの成長をああだこうだ言うから、主体性がなくなって、先生どうしたらいいの?先生の教え方が悪いからわからないって。そういうような先生の考え方もこれから大きく変わってきて、そしたら働き方改革もしなくていいんだよ。うちらは個別最適授業だから。 だって帰国子女の子と、今までの子が同じ英会話の勉強するのおかしいじゃん。それぞれがタブレットとかで勉強して、そうしたら先生にみんなが質問してきたら、今までは自分の知っていることを一方的に言えばよかった。 聞いてきたら全部知ってなきゃいけない?いやいや、何も準備しなくていい。聞いてきてわからなかったら先生、わからないから一緒に調べようと。 だから授業の準備も何もしなくていいんですよ。5時に帰れますよって。そうなってくると思う。

■岡田流「教育改革」で未来が変わる?

松木:僕はきょうね、新鮮な気持ちになったのと同時に、こういう試みをしてくれるところが、これからここをベースにどんどん増えていくことがまず大事で。 いい考え方を持っている子どもたちがいたとして、今度はそれを認めさせる環境づくりっていうのは、逆に大人がやっていかなきゃいけないから、そこはやっぱり岡田武史というパワーのある人にますます頑張ってもらいたいなっていうのがありますね。

岡田:僕はいろいろご批判も受けるし、普通の教育をされている方からどう思われているかっていうのは、出過ぎた杭だと思われているとは思うんだけど、ただ僕は普通の受験勉強を否定してるわけでもなんでもなくて、他の選択肢もこれから必要だと思っていて。 それは何かと言ったら、これだけ社会が大きく変わってきて、こんな戦争が起きるなんて誰も想像していなかった。 資本主義が分断と格差で行き詰まって、選挙といったって、何が本当かわからないから、本当に正しい選挙って、誰もわからない時代が来ちゃった。こんな時代に世界の秩序がどうなるって、上から語れる人は誰もいない。 その時に我々が考えているのは、共助のコミュニティーっていう衣食住を保証し合う「ベーシックインフラ」って呼んでいるんだけど、顔の見えるコミュニティー、信頼できるコミュニティーをたくさん作ることだと思っていて、それを作るためのリーダーシップを持った、キャプテンシップを持った人を僕は教育が作らなきゃいけない。 もう教育以外は社会を変えられない。そうやって多様な人をまとめて、お互いを認め合って助け合っていく、共助のコミュニティーを作るキャプテンシップを持った人をうちは輩出して、全国へ飛んでそういうコミュニティーを作っていく。 そうしたらこの国が変わるかもしれない、そうしたら世界が変わるかもしれない。下から変えていける。 ベーシックインフラというのはここを拠点にやるんだけど、衣食住を保障し合う、着るものはみんなで融通し合うし、食べるものは畑も田んぼもやっているし、町のレストランのシェフに月1回ボランティアで作ってもらってみんなで食べる。 空いてる家はいっぱいあるから、生徒を含めて一般のコミュニティーで修理してみんなで住む。そうやって助け合って暮らしていくコミュニティーを作っていきたいなと思っていて。 それがひょっとしたら最後、希望かもしれないと思ってるんだよね。若い人に俺らが受け継げる希望かもしれないと、そう思ってやっているので。教育以外で世界を変えるっていうのはなかなか難しいんじゃないかなって。

(「サンデーLIVE!!」2024年7月21日放送分より)