今年も災害級の猛暑が見込まれるなか、日中の外出の機会が減ることで心身の活力が低下する「フレイル」になるリスクが高まると指摘されています。その対策を取材しました。

■猛暑で高まる“フレイル”のリスク

 この夏、心配されている「フレイル」。そして、猛暑による「フレイルの悪循環」です。

 そもそもフレイルとは、健康な状態と、心身が老い衰えて歩けないなどの要介護状態との中間のことです。

 まず、フレイルの歩き方の特徴を教えてもらいました。

足と歩行のクリニック 戸原遼院長 「手の振りが少ない。足が上がらず、すり足になっている。体の左右のふらつきが大きい」

 また、歩幅が狭い、歩行速度が遅いなどがあります。

 専門家によりますと、急な体重の減少や筋力の低下、疲労感、歩行速度の低下、運動習慣などの5項目で3つ以上当てはまるとフレイルの可能性があるといいます。

 東京都健康長寿医療センターによりますと、日本の高齢者の8.7%がフレイルで、フレイルの手前であるプレフレイルを合わせるとおよそ半数になります。

 また、フレイルは高齢者だけのことではないといいます。実際に歩く様子を撮影、チェックしてみると…。

足と歩行のクリニック 戸原遼院長 「着地した時に比較的(ひざが)大きく曲がってしまっていますので、ももの筋肉でひざの関節を支えられていないような状態での歩き。全体的に筋力が弱くなっているような状態。このまま40年、50年してくると、さらに筋力低下が進行してしまって、最終的には『フレイル』というような状態になってしまう。今、若い人でもそういう状態になってしまうリスクがある人が非常に多い」

 若い人でも懸念されるフレイル。ポイントとなるのが、この“暑さ”だというのです。

足と歩行のクリニック 戸原遼院長 「例えば、今年すごく暑いですけれども、やはり外に出る習慣がなくなってしまって活動量が減ってしまうと食欲もなくなって、食べる量が落ちてしまうとやはりまた筋力の低下に陥ってしまって、活力が減ってという悪循環に陥ってしまうことで『フレイル』のリスクが夏場に高まるというデータが出ているので」

 まさに、“フレイルの悪循環”に陥る可能性があるというのです。

 そんななか、ある画期的な試みが始まっています。電気の使い方でAI(人工知能)がフレイルを検知するというのです。

中部電力 事業創造本部 山本卓明課長 「健康な人は使い方に変動がしっかり見られるんですが、フレイルで弱っている方はあまり変動がないと」

 活動的な人は、出掛ける時には電気を切り、掃除、洗濯などの時には電気のスイッチを入れるなど、電力の使用量の変動が大きいといいます。

 中部電力では、30分ごとの電気の使い方を100以上の観点からAIが分析してフレイルを検知、その人が住む自治体に知らせるサービスを去年4月から開始しました。連絡を受けた自治体が、フレイルが疑われる人に声掛けなどを行うといいます。

中部電力 事業創造本部 傳田純也副長 「(昨年度は)3自治体で導入いただいた。今年度はそれにプラスアルファ10自治体で、13自治体で導入予定」

 フレイルを予防するために重要なのが運動習慣です。専門家に効果的なトレーニング方法を聞きました。

足と歩行のクリニック 山下理沙看護師 「まず股関節の運動からします。少し浅めに、おうちにある椅子に座ってもらって、このまま、ここでかけっこするイメージ。自分に無理のないスピードで、1分間ぐらい。今度はひざの筋肉のトレーニングです。座った状態のまま、足をまっすぐ伸ばします。手を胸の上でバッテンしたりすると、おなかにも力が入ります。テレビ見ながらできます」

 人生100年時代。元気に歩き続けるには、フレイル予防が重要です。