三菱UFJフィナンシャルグループをはじめ、国内大手10社の日本企業が、生成AIスタートアップの『Sakana AI』に総額約100億円を出資しました。

MUFG・山本忠司執行役常務 「Sakana AIは非常に高い技術をお持ちで、金融機関のビジネスモデルを大きく変えていきたいと思っている」

Sakana AI伊藤錬COO 「日本に根ざした企業として、日本の企業や社会が持つ課題の解決に、AIが少しでも役立てるような探求をしたい」

Sakana AIの創業者は、AI研究者のライオン・ジョーンズCTO、デイビッド・ハCEO、そして、数々のIT企業で役員を務めた伊藤錬COOの3人で、去年7月に創業しました。

上場せず、時価総額10億ドルを超える企業は、非常に珍しいことから“ユニコーン企業”といわれ、Sakana AIは、日本にわずか7社しかなかった狭き門に仲間入り。“日本最速”での達成となりました。

その投資の熱は、海を越え、アメリカでも。 今年、時価総額世界1位にもなった半導体企業『NVIDIA』が今月、Sakana AIの大株主になりました。世界中から集まった投資総額は約300億円です。

なぜ、創業1年ほどの日本の会社が、ここまで注目されるのか。

Sakana AIの本社は、わずか10坪ほどの小さな部屋。社員はわずか22人です。しかし、ここで働くのは、世界でも名の知れたトップエンジニアたち。多様な人材が集まっていて、半数は日本人です。

この集団を率いるのがジョーンズCTO。生成AIを飛躍的に進化させた『トランスフォーマー(Transformer)』という仕組みをかつて開発した“スター研究者”です。チャットGPTの“T”も『トランスフォーマー』から来ています。

Sakana AI ライオン・ジョーンズCTO 「大企業を見てみると、彼らはいま(AIを)スケールアップすることだけに完全に気を取られている。しかし、私たちはその競争には加わりたくない」

現在、生成AI企業の多くは、高価な半導体を大量に購入し、膨大な学習データを使って開発競争を繰り広げています。

一方、Sakana AIは、1つのAIを巨大にする方法ではなく、小さくても複数のAIを、つなぎ合わせることで、高性能なAIを作るという新しい技術を提案しています。まるで“小さな魚”が群れを成し、一匹の“大きな魚”になるかのように。

Sakana AI デイビッド・ハCEO 「私たちのロゴを見ると、群れから離れて泳ぐ赤い魚が一匹描かれているが、これは私たちの会社が時には主流とは異なることをやろうとしていること表している」

また、現在のAI開発は、膨大な電力を消費してしまうという問題が起きていて、Sakana AIの“新技術”は、それを解決しうると名だたる世界企業が期待し、投資をしています。

世界が期待するSakana AIの新技術は、すでに研究現場で使われていました。

慶應義塾大学環境情報学部・村松亮さん 「人手が足りないっていうのは、結構、研究の領域でも広くあった。そういったあたりを助けてくれるいい仲間」

このAIは、言語の理解、論文の作成、査読という作業を、AIが連携して担当することで、人間の力を借りずに、新たな研究論文を書くことができます。つまり、“人間の究極の知的行為”ともいえる“研究”そのものを、AIがしてしまうというのです。

慶應義塾大学環境情報学部・村松亮さん 「全然、専門じゃない分野とかの知識も持ってきて、いろいろと提案してくれるので、僕じゃできなかった部分かもしれない」

Sakana AIは、今後、米中で二極化しつつあるAI界の構図を日本から変えていきたいといいます。

Sakana AI ライオン・ジョーンズCTO 「とにかく私たちが取り組んでいる研究に、とても興奮している。他者がやっていないことをやっていると、すでに証明している。残念ながらまだ話せないが、さらにワクワクするようなことも進めている」