新型コロナウイルスの感染急拡大について、専門家は4つの要因が重なったと見ています。

 日本ワクチン学会の理事で長崎大学大学院の森内浩幸教授は、急拡大の要因として4つの理由を挙げました。

 雨や猛暑で閉め切った部屋で冷房の使用による換気不足、ワクチン接種から時間が経ったことによる免疫の低下、行動の緩和による人出の増加、そして、オミクロン株が変異したBA.5への置き換わりです。

 森内浩幸教授「BA.5へ置き換わることにより更に感染力が強くなり、私たちが過去に持っていた免疫からも逃れてしまう。それも非常に大きな要因だと思います」

 変異ウイルスBA.5は、体内の細胞に侵入する時にとっかかりになる突起の形が変化していて、従来の変異ウイルスBA.2よりも感染力が1.27倍高くなるとのデータがあります。

 森内浩幸教授「感染力がこれまで以上に強くなったということと、ワクチンや過去の感染によって私たちが作っていた抗体がうまく働かなくなってしまった、免疫から逃れるようになってしまったという二つの大きな特徴があると思います」

 感染のしやすさに加え、ハムスターによる動物実験では肺でウイルスが増えやすいといった重症化のしやすさも指摘されています。 また、森内教授は来週から多くの小中学校が夏休みを迎えることで、更に感染を拡大させる可能性があるとしています。

 森内浩幸教授「学習塾とか放課後児童クラブみたいなところとか、その他のそういう場所というのは、そこ(学校)まで徹底した感染予防対策をとることが難しい場所が多いですので、逆にそういうところで子どもたちの間での感染が拡大してしまい、それを家庭に持ち込むということも起こりうると思います」

 2021年の年末にかけ、感染者が急激に減った時はワクチンによる感染予防の効果が発揮されましたが、今の変異ウイルスに対する効果はあるのでしょうか。

 森内浩幸教授「今のワクチンは重症化を防ぐということに重きを置くべきワクチンであって、このワクチンを多くの人がどんどん接種をしていけば流行の拡大を抑えることができる、というほどの効果をもたらすことはあまり期待できない」

 感染予防を重視するよりも、医療ひっ迫につながる重症化予防に特化し、リスクの高い高齢者や基礎疾患を持つ人の4回目接種を進めることで、BA.5が更に広まった時の備えが重要だと話します。

 森内浩幸教授BA5が仮にBA.1、BA.2よりも病原性が強いものであったとしても、迎え撃つ私たちの方がしっかりとその準備ができていれば、決して重症者がいきなり増えるということではないと思います」