関西電力が蔵王山麓の宮城県川崎町で計画していた風力発電を断念しました。地元から反発の声が上がり、環境への配慮と事業性の両立が難しいと判断したということです。

 風力発電計画の断念は、関西電力の幹部が29日に川崎町などを訪れ伝えました。

 この中で、関西電力の多田隆司常務は川崎町の小山修作町長に対し「地域の信頼無くしては事業は実施できないと考えた」と断念の理由を述べました。

 関西電力多田隆司常務「大変なご懸念とご心配を与えてしまい大変申し訳ございませんでした」
 川崎町小山修作町長「正直ホッとしていますし対応が早かったと思っています。ここで一旦立ち止まる、白紙にするのは妥当だと思っています」

 関西電力が計画を発表したのは5月下旬で、わずか2カ月で撤回する異例の展開になりました。

 当初の計画は、川崎町の南西部の山林などに風力発電の風車を最大で23基つくるものでした。

 川崎町によると、関西電力は2028年度の着工、2031年度の運転開始を目指していました。

 しかし、計画は蔵王の御釜からの眺望など景観への悪影響は避けられない内容でした。

 予定地が蔵王国定公園にかかっていたことも含め、環境アセスメントを巡る県の審査会から厳しい批判が上がりました。

 関西電力は国定公園への建設をあきらめ、風車を23基から19基に削減し、それでも批判を受け更に減らすことにしていました。

 しかし、風車の数を絞り込むと事業の採算は悪化します。

 県の審査会からは、御釜から風車を一切見えない配置も求められ、計画は事実上行き詰まっていました。

 地元住民らの反対意見書も、川崎町に寄せられただけで3700人分に上っていました。

 栗谷将晴さん「うれしかったですね。良かったと思います。(関電は)僕らが蔵王に対して思っている気持ち自体を勉強していなかったのかなと思います」

 風力発電の計画は、川崎町以外にも各地にあり摩擦も広がっています。大型の風力発電は気仙沼市と石巻市で稼働しているほか、加美町で建設中です。計画段階のものも15件あり、山沿いに集中しています。

 山中での風車の建設は森林の伐採を伴います。2019年の東日本台風で土砂災害が起きた丸森町では、計画が実現すればまた土砂災害が起きかねないなどと住民が反発しています。

 村井宮城県知事「地元の同意(を求める仕組み)というものが本当はあるべきではないかなと思いますね。関電さんがこのような(中止の)申し出をしないで強引に進めようとすれば、進めることはできるんですね。そこが法律の欠陥ではないかなと私は思います」