さまざまな細胞に分化し、臓器の修復が期待されているMuse細胞についてです。研究グループの記録と医薬品開発会社が行った治験の報告書の内容がかけ離れているとして、Muse細胞を発見した東北大学大学院の出澤真理教授が開発会社に対し独占ライセンスの契約解除を求めたことを明らかにしました。

 東京都内で開かれた会見では、Muse細胞を発見した東北大学の出澤真理教授や、治験に協力した医師らが出席しました。

 東北大学大学院出澤真理教授「(開発会社が行った治験に対して)複数の医師から会社が出してきた解析データは違うのではないか、あるいは自分たちが担当した患者のデータとかけ離れているのではないか、こういった疑義が持ち上がってまいりました」

 Muse細胞は私たちの体の中に存在する万能細胞で、血中に投与すると体内の損傷部分から出されるSOSシグナルに反応して血管を通じて損傷部位に向かい、たどり着くと損傷部分の細胞に分化し修復することができます。

 研究チームによりますと、心筋梗塞の患者に対しMuse細胞を投与したところ、梗塞のサイズが半分に縮小したということですが、医薬品の開発会社三菱ケミカルグループの報告書では心臓のポンプ機能にほとんど変化は無かったとされていたということです。

 岐阜大学湊口信也名誉教授「これだけ梗塞サイズが小さくなれば、心臓のポンプ力が改善するのが医学的常識でございます。つまり会社の提示してきた心筋シンチと心エコーのデータは矛盾があることになります」

 出澤教授によりますと今後、三菱ケミカルグループとの共同開発は難しいことから1月31日に独占ライセンスの契約解除を求めたということです。

 東北大学大学院出澤真理教授「我々はミューズ細胞を再生治療として、修復治療として患者に少しでも希望を持っていただける、届けたいという気持ちの一心でここにいる。誰しもが開発している。そういう意思が合うところにライセンスを渡してほしい。あるいは私に返してほしい」

 一方、三菱ケミカルグループは14日、事業化までのタイムラインや今後の事業戦略などを検討した結果、ミューズ細胞を用いた製品の開発を中止すると発表しました。