19日からG7広島サミットが始まりました。ロシアのウクライナ侵攻や世界経済など、様々な課題について議論されます。
東北医科薬科大学藤村茂教授
「私が注目しているのは、G7サミットの提言に盛り込まれる予定の薬剤耐性=AMRについてです。今、世界レベルで大きな問題となっています」
薬剤耐性とは、細菌が抗生物質などの抗菌薬に対して耐性を持ち、薬が効かなくなったり効き目が悪くなったりすることを指します。
この薬剤耐性を持つ菌は、いつくかあります。身近な菌では、黄色ブドウ球菌もその一つでヒトの皮膚や鼻の中などの表面に定着し膿んだりする菌です。このほかにも結核菌、ピロリ菌などがあります。
このような身近な菌の中で、抗生物質などの抗菌薬が効かない細菌が既に多く存在するということです。最新の調査では、世界で約20種類確認されています。
東北医科薬科大学藤村茂教授
「薬剤耐性を持つと、感染症の治療が難しくなります。2050年には全世界の年間の死者のうち、薬剤耐性を持つ菌による死者が1000万人と、がんを抜いて最も高くなると予想されています。更に一般的な手術やがん治療にも影響を及ぼします。
手術や抗がん剤治療では、免疫が低下した時に感染症を予防しなければならないのですが、抗生物質が効かない耐性菌が増えると手術や抗がん剤治療が困難になるので医療の幅が大幅に狭くなるります。
7年前のG7伊勢志摩サミットで、薬剤耐性についての検討委員会の理事を務めました。先ほど紹介した黄色ブドウ球菌が耐性化したものをMRSAと呼びますが、これは2013年の段階で59%が薬剤耐性を持っていて、伊勢志摩サミットではこれを20%以下まで下げようと行動目標を定めました。
ただ、2020年の段階で47.5%までしか実現できていません。MRSAと薬剤耐性を持った大腸菌による死者は、2019年日本で8000人もいました。サイレントパンデミックという形で、耐性菌が広がっています。今回の広島サミットで議論されるので、注目していきたいです。
薬剤耐性を持つ菌が増えている大きな原因は、処方された抗菌薬の服用を自分の判断で途中で止めてしまうことです。体調が良くなったからと服用を途中でやめると、生き残った細菌が耐性を持つ可能性が高くなります。抗生物質を必ず飲み切ってくださいと言われるのはこのためです。何百億円という莫大な費用がかかるので、新薬もそう簡単にはできないので耐性菌を増やさないというのが重要です。
処方された抗菌薬を指示どおりきちんと飲み切ることです。それに加えて、不必要に抗菌薬を飲むことも体内で耐性菌を生む原因になるため注意が必要です。
最近、よく耳にするのはウイルス性の風邪と診断されているのに、抗菌薬を処方してくれと頼む人が多くいます。
ウイルスと菌は全く違うので抗菌薬を飲んでも効果はありません。
そのあたりの理解不足によって、抗菌薬を処方しない、と名指しで医師をSNSで誹謗中傷されることも増えていて、医師側も処方してしまうことがあります。
必要ないのに抗菌薬を飲むと耐性菌を増やすことになるので、本当に気を付けてほしいです。