岸田総理大臣はIAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長と面会し、福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐる評価報告書を受け取りました。

 報告書では、処理水放出に関する日本の計画はIAEAの安全基準に合致すると結論付けました。

 面会は午後4時過ぎから総理官邸で行われ、岸田総理は「国際社会の責任あるリーダーとして、日本や世界の人々の健康や環境に悪影響のある放出を認めることはない」と述べました。そのうえで「報告書の内容を聞かせいただいたうえで誠実に対応していきたい」としました。

 一方、グロッシ事務局長は今回の報告書について「科学的で中立的なものだ」と強調し「日本が次のステージに進む決断を下すのに必要な要素がすべて含まれている」と説明。報告書では処理水放出に関する日本の計画はIAEAの安全基準に合致すると結論付けました。

 海洋放出をめぐっては、宮城県漁協の寺沢春彦組合長は改めて反対する姿勢を示しました。

 県漁協寺沢春彦組合長「処理水の問題は1回とか1年で済む問題ではなくて30年、40年と長期にわたることなので50年、100年先にどういうことが起きるか誰にも想定できない部分があるもんですから、それを考えれば不安が払拭できない状況であれば、我々としては反対だという言葉しか言えない」

 寺沢組合長は漁業者に影響が出ることは避けたいとし、風評の防止策を含め国が全ての責任を持って対処していくことを求めました。

 寺沢組合長は「(放出については)国が判断して決めることだと思っていますので。ただ判断によって決定によって、我々漁業者、何の落ち度もない漁業者が不利益を被ることだけはないようにしていただきたい。風評被害を起こさない責任もありますし、万が一起きた場合の責任の取り方、賠償になるのかは分かりませんがそういったところも含めて全責任を国が果たしていただきたい」

 村井宮城県知事も風評被害への対策を徹底するよう国に求めました。
 村井知事「安全であることは間違いないと思います。丁寧に工事をされていますので。安全である、だから安心であるということにはならない。安全であるということをしっかりと示していただいて、そして県民の皆さんの安全につながるように、風評被害が起こらないような形にするように政府として万全の努力をしていただきたい」