仙台市に住む須知誉さんに初めて会ったのは、10年前です。誉さんは、生まれつき難病を抱えていました。幼くして老化が進むコケイン症候群です。
発症は50万人1人といわれ、根本的な治療法は見つかっていません。4倍から5倍の速さで老化が進み、歩行障害、視力障害、腎不全などの症状が現れます。
誉さんは、多くの人の愛情を受けてきました。
両親「先生たちも本当に良くしてくれて」「抱っこしてもらえる人とか面倒を見てもらえる人に、もうくっついて」「みんなに助けられてんだよな?ね?」
人懐っこい誉さんは、どこに行っても人気者です。2歳下の蒼心さんと7歳下の柚稀さん2人の弟とも仲良しで、毎日がにぎやかでした。
しかし、老化は進み誉さんは11歳の頃から自力歩行が困難になりました。筋肉が固まってしまわないよう、時々マッサージを受けます。
「ほまちゃんは、人が好き。それは、パパとママの愛情がぎっちり入っているので、絶対に僕のことは守る。守ってくれる人たちっていう認識が多分あって、だから他の人とも楽しく遊べたり」
コケイン症候群は、平均寿命が15歳から20歳と言われています。楽しい思い出をたくさんつくろうと、家族は旅行やキャンプの計画を立てました。
家族ぐるみで付き合いのある櫻井さんは、誉さんとわが子のように接してきました。
櫻井さん夫妻「誉は何か不思議な力があると思う。ふぉあっとなる感じがします。抱っことかしていたりすると。ただ年をとるのが速いだけで、普通に幸せに過ごしていると思う。大変だって思うのが一番失礼だと思います」
誕生日やクリスマス、花見。歩くこと、見ること、食べること、たくさんのことを失っても、決して消えない思い出です。
しかし、15歳を迎えようとした頃、誉さんは余命1年と宣告されました。
両親「とても幸せだったので、忘れていました。寿命が短いっていうこと。忘れるぐらい、いろんなこと家族でやってきた」「自分が泣いて、死ぬほど泣いて誉の病気が治るなら泣きますけど、それで病気は治らないので泣きたくないっていう。それは終わってからで良いかな。全てがって決めているというか」
誉さん、16歳の冬。病院で診察を受けた時に、厳しい現実が突き付けられました。一番恐れていた、腎臓の機能が著しく低下しました。
医師「状況としては、限界に近付きつつあるかなというところです。大体、腎臓の機能は正常の1割ぐらいです」
2023年12月27日。誉さんは、息を引き取りました。
両親「今でも笑顔で楽しく足が動かせるようになっていたなら、走り回ってくれていたらうれしいな。もう少し、もう少し一緒に長く生活したかったですね」「もう1回、来てくれないかな。と思うけど、そうはいかないよね。半分では分かっていて、もう苦しい思いはしていないよねって思いもある」
2歳下の弟、蒼心さんは誉さんの遺骨が入ったペンダントを身に着けるようになりました。
「(ここに)いるから、大丈夫。守っていてください。残してくれたものがたくさんありすぎて」
誉さんは、7歳下の柚稀さんにも大きな力を残してくれました。
「自分ができる限り全部の力を使って、最後まで生き抜く力を教えてくれた」
懸命に生き抜いた16年。その命、たとえ尽きても。