飲酒運転とみられるトラックが猛スピードで中央分離帯を乗り越え、対向車線の車に乗っていた家族3人が亡くなった事故で、遺族らが2日、会見を行いました。

群馬県伊勢崎市で5月、酒を飲んだ状態でトラックを運転した鈴木吾郎容疑者(69)が乗用車に衝突し、乗っていた塚越湊斗くん(2)、父親の寛人さん(26)、祖父の正宏さん(53)の3人が亡くなりました。

スピード違反が原因だと思っていた母親は、飲酒運転と知り、「また殺されたようなもの」と感じたそうです。

塚越湊斗くんの母親(30代) 「今でも、事故が起きた日のことが鮮明に思い出されて、それだけでもつらいのに、さらに追い打ちをかけるような飲酒運転という話を聞かされて、本当に耐えられない日々が続いています」

子どもの成長が何よりの楽しみでした。でも、もう成長を見せてくれることはありません。一緒に喜んでいた夫もいません。

塚越湊斗くんの母親 「事故の前日、積み木で遊んでいるのをふと見たら、すごい高さを積んでいて。それを夫に見せたときに『すごい、すごい』と湊斗をほめていたのが、一番、最後の思い出です」

事故当時、会社での乗車前の呼気検査では、鈴木容疑者からアルコールは検出されなかったそうです。しかし、事故直後には、基準値以上の数値が検出されています。つまり、会社での呼気検査を済ませたあと、トラックに乗車するまでの間に飲酒をしていた可能性があります。

実際に鈴木容疑者は当時、異様ともいえる運転をしています。 事故を起こす30秒前の映像。信号待ちをしている鈴木容疑者は、まだ信号が赤のうちに発進します。そして、ほかの車を、どんどん引き離すほど、加速していきます。

警察によりますと、事故のときの速度は、制限速度を30キロ上回る約90キロ。わずか30秒ほどで、一般道で90キロまで加速させているのです。このとき、車内では片手でハンドルを握り、よそ見をしている姿も確認できます。

警察によりますと、鈴木容疑者は「詳しくは覚えていません」と、一部、容疑を否認しているといいます。

塚越湊斗くんの母親 「(病院で)湊斗のところに案内をされて、見に行ったら、 顔が腫れちゃっていて、頭もパンパンになっていて。見慣れているはずの子どもの顔だったのに、全然、違う子に見えちゃって。でも、朝、パパと一緒に着させた服を着ているし、同じところにほくろがあるし、湊斗なんだって思って」

湊斗くんが目を覚ますことはありませんでした。夫・寛人さんは即死だったと説明されたそうです。

塚越湊斗くんの母親(30代) 「(寛人の)顔が傷だらけで、硬くなっちゃっていて、寛人の最期をみてあげられなかったのが、本当に悔しいです」

実は、新しい家族の誕生を心待ちにしていた時期でした。当時、母親は妊娠8カ月。湊斗くんが“お兄ちゃん”になる直前に起きた事故でした。

その姿を楽しみにしていたのは母親だけではありません。会見に同席した寛人さんの家族も同じです。夫と息子、そして孫を奪われた湊斗くんの祖母。

塚越湊斗くんの祖母(53) 「そこまでお酒を飲みたいのなら、なぜトラックのドライバーをやっていたのか、犯人に聞きたい。会社の方も、もうちょっとなんとかならなかったのか。怒りや悔しさ、3人を殺していいの?悔しくて、悲しくて、気持ちがよくわからない感じ」

息子と孫、そして、ひ孫を奪われた湊斗くんの曾祖母も会見に同席しました。

塚越湊斗くんの曽祖母(78) 「この事故は、絶対に避けられた事故かなと思うんですよ。会社は、やっぱりもうちょっと注意をしてほしかったし、一番、基本の部分が欠如していて、こんな事故が起きたわけですから。私、息子の最後の姿を見たんですけど、それはもう見られるものじゃなかった。こんなことで、この3人の命が失われたのかと思うと、悔しくてしょうがない」

事故現場には、お供え物が途切れることはありません。湊斗くんの伯父は、亡くなった3人へ思いを寄せてくれる人に感謝の気持ちを述べました。

塚越湊斗くんの伯父(26) 「最初は、結構、いろんな人が持ってきたペットボトルやお菓子が置いてあって、誰かが掃除しなきゃいけなかったんですけど、誰か知らない方がきれいに掃除してくれて。いろんな方が見てくれているんだなと、すごく救われた気持ちはありました」

防げた事故。その思いは警察にも共通しています。

群馬県警・栗原啓交通安全対策室長 「飲酒運転、これは自分の意思で、故意で行われている違反です。うっかり、ぼんやりといった違反ではありません。防ごうと思えば、防げる違反です。こういった違反をして、ましてやそれで交通事故を起こして、尊い命を奪うということは、絶対にあってはならないと考えます」

湊斗くんの母親は、事故後、出産。家族に支えられながら、子育てをしているそうです。

塚越湊斗くんの母親(30代) 「赤ちゃんがいてくれたから、ここまで来られたということが一番。同じ人たちを亡くしたもの同士、つらいけど、お互いがお互いを支えて来たから、ここまでこられたのかなと思う」

湊斗くんの母親は運転する人に伝えたいことがあります。

塚越湊斗くんの母親(30代) 「たった一人、亡くなるだけでもつらいのに、一気に3人も失ってしまって、3人だけじゃなくて、この3人に関わってきた人たち皆が、しんどい思いをしてるので、大丈夫だろうって思って運転している方、ちょっとの油断がたくさんの人の人生を狂わせるということを覚えていてほしいです」