宮城県女川町の離島、出島と本土を結ぶ出島大橋が12月に開通しました。本土と陸路でつながりにぎわいが生まれる一方、多くの人が訪れることに不安を抱える島民もいます。震災を乗り越え、半世紀にわたる悲願を達成した出島です。
12月19日に女川町の出島と本土をつなぐ出島大橋が開通しました。1日3便のフェリーしかなかった離島と本土が、陸路でつながりました。
出島架橋促進期成同盟会須田勘太郎会長「同盟会発足から45年という月日の中、やっとここまでたどり着け感無量でございます」
出島大橋は全長364メートルのアーチ橋です。総事業費170億円が投じられ、女川原発で事故が起きた際には避難路としても活用されます。東日本大震災での被害を乗り越え、半世紀にわたる島民の悲願がかないました。
出島は、東日本大震災の津波で住宅約350戸が全壊し、主要産業である漁業も大きな被害を受けました。住民は一時、島からの避難を余儀なくされそのまま本土から戻らない人も多くいました。震災前まで約500人だった人口は90人ほどまで減少し女川町中心部で進む震災復興とは対照的に、にぎわいを取り戻せない日々が続きました。
高野信さん「初めてここ来た時に、うそでしょと思うような場所だったんですが、すごく危険な場所だったので少しでも歩きやすくと思って」
高野信さんは福島県で中学校の教員をしていましたが2023年に島民となり、島の魅力を伝える活動を続けています。
橋が架かることで島を訪れる観光客が増えること期待し、地域おこし協力隊のメンバーなどと島内を一周するトレッキングコースの整備を進めてきました。
高野信さん「トレッキングするような格好でこの島に来て、灯台はどう行くんですかなんて聞かれるとすごくやってよかったなと思いますね」
この日、出島に集まったのは松島町を拠点にトレッキングを楽しむグループの10人です。橋が開通したことから今回初めてこの場所を選びました。高野さんたちが整備したルートを約3時間かけて歩きます。
「天気も良いし風も無くて、道も非常に歩きやすい所で大満足です」「景色すごいきれいだなと。知らない人いっぱいいると思うので、橋ができたことは大きいと思います」
最後に向かったのは、縄文時代の遺跡とされているストーンサークルです。出島大橋の絶景を楽しみました。
ごしゅらん松島鈴木由美子代表「これまで船だとなかなかちょっと(来るのが)難しい人も車で来て、色々な方がこの島の良さを分かるきっかけになるんじゃないかな」
橋の開通に合わせてオープンしたJUURISAUNAは、フィンランド製のサウナ用ストーブがこだわりで女川湾を見下ろす絶景も楽しめます。この日は宮城県各地から集まった女性4人がサウナを楽しんでいました。
「このサウナができるまで出島の存在もあんまり分かってなくて、女川町に来たのも初めてだったんですけど、橋が開通してサウナができたって聞いたので実際に来てみて景色も素敵だし、街並みものどかですごくいい場所だなって」
オープンから間もなく2カ月、遠くは関東から訪れる客もいて土日を中心に予約は好調です。
JUURISAUNA鹿又陸さん「出島まだまだ知らない方々も宮城県でも多いと思うんですけど、サウナをきっかけに出島を知ってもらえたらいいなという思いはあります」
島に生まれた新たなにぎわいの一方で、不安を抱える島民もいます。
島民「船具とか漁具とか全部みなほったらかしですよ。どこに置いても大丈夫だっていう。どういう人が入ってどういう状態になるのか」「前は本当に何人も来なかったから。定期船で来て釣りして定期船で帰って行くぐらい。不安なところ色々な人たちがもちろん来てるからさ、何か物が無くなったりするのが今からね」
顔なじみだけだった島での暮らしに多くの人が訪れることで、防犯への不安を抱えている人も少なくありません。女川町と警察は島の巡視を強化していて、2025年度には橋にカメラを設置することを検討しています。
高野信さん「島民の方にとってもこんなに人がやって来るということはある程度予想はしていたと思うんですけどね。生活面で色々不安を抱えることも多いだろうと思うんです。これから話し合いのきっかけを作って、しっかり行政に要望を出すような取り組みはしていきたいと思っています」
陸路がつながり離島ではなくなった出島は、これから多くの人が訪れることになります。橋の開通で生まれたにぎわいと不安を抱えながら、出島は新たな歩みを進めます。