アメリカのトランプ大統領が就任して今月29日で100日が経ちます。政権が推し進める政府のコスト削減で国立の研究機関でもリストラが断行され、人材流出への懸念が広がっています。

 トランプ大統領は実業家のイーロン・マスク氏を「政府効率化省」のトップに任命し、政権発足直後から連邦政府のコスト削減を進めてきました。

 研究機関もその例外ではなく、多くの職員が解雇されました。

国立衛生研究所 元職員 カディーフさん 「国立衛生研究所で懸命に働くことに喜びを覚えていた分、悲しい。ショックです」

 アメリカのNIH(国立衛生研究所)で編集者として働いていたボシュラー・カディーフさんは2月にメールで突然、解雇の知らせが届き、所属する部署の全員が解雇扱いとなりました。

国立衛生研究所 元職員 カディーフさん 「研究に関する透明性がなくなり、NIHが何を研究しているのか誰も分からなくなってしまいます」

 解雇の理由は「業績不振」。去年12月には「非常に良い」との評価を受けていたにもかかわらず、具体的な説明はありませんでした。

国立衛生研究所 元職員 カディーフさん 「公衆衛生の向上や研究の促進の仕事を探しています。しかし、そうした仕事は少なく、就職は非常に困難です。応募しても返答がなく、同僚の多くも同じ状況です」

 専門家は研究機関のリストラによって人材が外国に流出する可能性を指摘しています。

ブルッキングス研究所 イングラム上席研究員 「我々の教育システムは世界中から最も賢く、最も努力する人材を引き寄せています。この国で行われる学術研究はアメリカに移住した外国人によって行われています。その人材を失うことで研究の質だけでなく、将来の経済にも影響を与えます」

 連邦政府のコスト削減を政権100日の成果としてアピールしたいトランプ大統領ですが、研究機関で繰り広げられる空前のリストラはアメリカの未来に暗い影を落としています。