コロナ禍の医療現場についてです。オミクロン株が猛威を振るった第7波。医療現場はひっ迫しました。感染者の急増を背景に、重症ではない患者の死亡例も確認されています。最前線の医師が見た第7波です。
仙台徳洲会病院加藤一郎医師「分かります?」大丈夫かな?うん」
オミクロン株に感染した中等症の女性。医師の問いかけに口を動かして反応します。
患者を診て回る仙台徳洲会病院の加藤一郎医師です。この病院の新型コロナウイルス感染症対策の統括をしています。
仙台徳洲会病院加藤一郎医師「結構救急からの入院患者さんが多くて、本当に24人じゃ収まらないぐらい入院したりとかで、結構大変だった時期はありましたけど、今はもう落ち着いているので、今はたぶん7、8人しか入院してないんじゃないかな。(当時は)かなり大変だったかな」
非常に強い感染力のオミクロン株BA.5が猛威を振るった第7波。宮城県の感染者はこれまでで最も多かった第6波を大きく上回り、8月20日には過去最多の4782人に達しました。
加藤医師「体調は?」
患者「体調は今一歩ですね。せきがね、やっと薬が効いてきて楽にはなりました」
加藤医師「(せきは)結構残るかもしれない」
新型コロナの県内の指定医療機関となっている仙台徳洲会病院。4月に仙台市泉区の七北田から高玉町に新築移転し、感染症への対応を強化しました。7階の北側フロアの40床を未知の感染症にも対応できる病床にし、このうち24床を新型コロナの中等症と重症患者用として使用しています。現在は、70代から90代までの患者9人が入院しています。
これまでにない危機に直面したのは7月。
上野比呂企アナウンサー「正面玄関裏手にある駐車スペースに並ぶこちらの車列ですが、発熱外来に訪れた皆さんです」
仙台徳洲会病院加藤一郎医師「陽性なので、おふたりともコロナにかかっていらっしゃるみたいなんですね。65歳以上だとちょっと(重症化)リスクが高くなってしまうので、ラゲブリオっていう抗ウイルス薬がありますので、それを処方させていただいて、あとは症状を抑えるお薬を」
発熱外来に訪れる人が1日当たり100人を超え、陽性率も75%に達しました。
仙台徳洲会病院加藤一郎医師「本当に病院の機能が全部停止しちゃうんじゃないかくらい来てましたので。トラネキサム酸というのどの炎症を抑える薬が無くなりましたね。(風邪症状に使う薬が)無くなることがあるのかって本当思うんですけど、あるんだなと思って」
入院患者も7月27日には、24のコロナ病床を上回る36人まで増え、救急の受け入れを数日中止するほど、医療現場はひっ迫しました。
仙台徳洲会病院加藤一郎医師「(救急車は)一番来た日で1日に(通常の2倍の)51台くらい。(他の診療科から)応援とかやってもらったりという形でも、みんなで今乗り切れば何とかなるんじゃないかって言って」
看護師「(第7波は)急変率がすごく高くて。さっきまで部屋にいた時は全然バイタルサイン(脈拍・血圧・呼吸・体温)も普通だったのに、急にガクッと下がったりとかして、よくみんなでデルタ株みたいだねって。(ニュースで)30代の方が亡くなったとか見るんですけど、現場で見ているとあり得なくはない」
第7波で目立ったのは、重症化していない患者が亡くなるケースです。県内の重症患者は、重症化リスクの高いデルタ株が猛威を振るった第5波では、過去最多の34人となりましたが、ワクチン接種が始まったことで亡くなった人は28人でした。
一方で、第7波での重症者は最も多い時で19人でしたが、亡くなったのは190人に上っています。重症ではない患者の死亡は、仙台徳洲会病院では初めての経験でした。
仙台徳洲会病院加藤一郎医師「コロナで入院したけど、その他のもともとの原疾患が悪くなってしまって、結果コロナじゃなくてその病気で亡くなるという方がおられたりはしました。(その他のケースとして)高齢者だったんですけど、別に特に基礎疾患もそんな大したことなくて、軽症として入院していて前の日までごはん食べた人が突然、お亡くなりなったというのがあったんですね。何でこの人亡くなったんだろうというような。それが今回7波のちょっと不思議なところではあるかもしれないですね」
9月に入り、感染者は減少傾向にあり医療現場は落ち着きを取り戻しつつあります。しかし、加藤医師は再び押し寄せるかもしれない感染の波に気を緩めず備えたいと話します。
仙台徳洲会病院加藤一郎医師「いつなったら終わるのかしか言いようがないかな。第8波も第9波ももしかしたら来るかもしれないですけど、精いっぱい本当にやって。
ああそういうこともあったねって言える時代が来るのは楽しみだというか、それを楽しみにするぐらいしか今はないかな」