すい臓がんと向き合う患者会です。がんの中でも難しいというイメージを変えたいと、自らも治療を受けながら会を立ち上げ活動する女性です。
色鮮やかなドレスやタキシードを着て笑顔で写真に収まる人たち。彼らがともに向き合っているのはすい臓がんです。宮城県を中心に活動する患者会、ぶどうの木のメンバーが開いた写真展です。
患者会の発起人で代表を務めるのは、宮城県塩釜市に住む濱端光恵さん(53)です。平日は仙台市の会社で事務の仕事をしています。
会社の同僚「お母さんみたいな存在です」
濱端さん「良かったおばあちゃんじゃなくて」
濱端さんは2017年、すい臓にステージ1のがんが見つかりました。自覚症状は無く、会社の健康診断で見つかりました。
濱端光恵さん「自分がどうなるのだろうという恐怖がずっとあって、入院する前も怖かったです。でも手術しなかったら死んじゃうのも分かっているが、自分がどうなるのだろうと不安が大きくて1日泣いてました」
遺影にする写真を準備しました。すい臓がんは、難治がんと呼ばれるがんの1つです。早期発見や治療が難しく、国立がん研究センターによりますと5年生存率は12.7%でがん全体の66.2%に比べ大きく下回ります。
すい臓がんと診断された人の数は増え続けていて、毎年3万人以上の人が亡くなっています。
濱端さんは6年前にすい臓を部分摘出する手術を終えて退院し、自宅に戻っての経過観察になりました。元の生活に戻ったつもりでしたが、周囲の反応は想像していたものではなかったと話します。
濱端光恵さん「元気になって普通の世界に戻れるのはすごくうれしかったのですが、私は元気で戻ったつもりが会う度に大丈夫?体調どう?と毎回聞かれます。ありがたいけれども心の中ではすごく寂しかったり悲しかったり、モヤモヤしたりということがものすごく大きかった」
濱端さんは気を使わずに話すことができる同じ病気と向き合う仲間とつながりたいと、3年前に患者会を立ち上げました。名前は、すい臓がん患者と家族のおしゃべりサロンぶどうの木です。
濱端光恵さん「ブドウは小さい実が集まって1つの実になっている。その姿と共通して私たちは寄り添って助け合って生きていきたいなと」
ぶどうの木は毎月、対面やオンラインで交流会を行っています。9月にオンラインで行われた交流会には、宮城県だけではなく山形県や新潟県、兵庫県など県内外から集まりました。
濱端光恵さん「私は今のところ、夏バテ以外は元気です。次の検査は1月で検査まで余裕があるので、それまでは楽しく生きていこうかと」
交流会の話題は治療の話から日常生活に及び、盛り上がります。
参加者「病気になったからあれやりたい、これやりたいが逆に出てきた。あれやってないな、あれやっておけばよかった。やらないと損」
9月末に開いた写真展。晴れの日の笑顔で写真を撮りたいという思いから、衣装は色とりどりのドレスとタキシードです。すい臓がんのネガティブなイメージを変えたいという濱端さんの思いが込められています。
濱端光恵さん「ドラマや映画でも最近亡くなるのは、大体すい臓がんの患者さん。どうしても暗いイメージを持たれてしまうのですが、楽しく生きている時間もあることを知っていただけたらうれしい」
すい臓がんでも楽しく生きる。写真展のサブタイトルにもなっている濱端さんの思いは、他の患者たちにも広がっています。
ぶどうの木メンバー石井重明さん「明るく明るく、病気だというだけで暗くなったら病気は治らないので。特殊な病気なので同じ病気を持っていれば平気じゃないですか、同じ仲間ですから」
東京都から訪れたという女性。自身もすい臓がんを抱えています。
来場者「皆さんすい臓がんという難しい病気を抱えてらっしゃるということが全然感じられなくて、すごく明るいなと。泣いて過ごすのも人生だし、笑って過ごすのも人生だし同じ人生過ごすなら笑っていたいですよね」
濱端さんは、ぶどうの木が枝分かれするように患者会が全国に広がっていくことを目指しています。
濱端光恵さん「堅苦しくなく患者さんたちの憩いの場になって、みんなで好きなことをおしゃべりして楽しく過ごせる場であることはずっと変わらないで続けていきたいなと」