盲導犬候補の子犬を育てるボランティア、パピーウォーカーになる人が不足していて盲導犬の育成に影響が出ています。仙台市でパピーウォーカーに取り組む家族です。
パピーと呼ばれる盲導犬候補の生後約2カ月の子犬たちです。日本盲導犬協会の仙台訓練センターで、パピーを育てるパピーウォーカーへの委託式が行われました。子犬を託される前に、訓練士から抱っこひもの使い方などを学びます。
杉浦愛理訓練士「パピー子犬が来た時に抱っこひもに入りますので、長さ調整をしていただきたい」
仙台市で暮らす阿部さん家族は、今回初めてパピーウォーカーになります。
杉浦愛理訓練士「それでは1頭ずつお渡ししたいと思います」
阿部さん家族が託されたのはオスのウリアです。名前は阿部さん家族の母親、まなみさんがある思いを込めて付けました。
母親・阿部まなみさん「光という意味があるのですが、この子がいて家族、お家が温かくなればいいかなという思いで付けた」
娘・阿部まりなさん「可愛くて。でも不安もあるのでドキドキしています。盲導犬になって目の不自由な方の役に立ってくれたらすごくうれしいなと思います」
盲導犬は、候補となる犬が生まれると2カ月後にパピーウォーカーに預けられ、訓練を受ける1歳まで育てられます。訓練を受けるまでの10カ月間、一般の家庭で生活することで盲導犬にとって大切な人との信頼を築きます。
ウリアを託されたまりなさんは、早速訓練士からレクチャーを受けます。
杉浦愛理訓練士「初めに教えるのは引っ張りっこです。目的は人とおもちゃを使って遊ぶ。おもちゃと遊ぶのではありません」
遊ぶ時も人を意識させて、人と一緒にいることが楽しいと感じてもらうためです。まりなさんはウリアと初めての引っ張りっこです。
杉浦愛理訓練士「そうそうそうバッチリ。グッドと声を掛けてあげます。グッドは楽しい言葉だよ」
人が求めることができたらグッドと言って褒める。褒められることは楽しいことと学ばせます。グッドは、盲導犬となり視覚障害者との生活が始まっても常に使われる言葉です。
愛情一杯に子犬を育てるパピーウォーカーになる人が不足しています。仙台訓練センターでは2024年度、15匹ほどの子犬をパピーウォーカーに預ける計画ですが10家族ほど不足しています。共働きで自宅に人がいる時間が少ない家庭や、既に犬を飼っている家庭が増えていることなどが要因だということです。
委託式から約1カ月後、阿部さん家族はウリアが生活の中心になっていました。家をあまり留守にできないことなど制約もありますが、苦にならないと話します。
娘・阿部まりなさん「本当に可愛くて家族の話題も増えるし、みんなウリアはこうだね、ウリアは何したねみたいな感じで色々話せるので来てくれてよかったと思います」
母親のまなみさんは、月に一度のレクチャーを受けるため訓練センターを訪れました。レクチャーでは、ウリアに様々な体験をさせます。
杉浦愛理訓練士「まず初めにマイクで音を出します。犬が嫌がっているのか楽しんでいるのか、何も感じていないのか耳の様子や体の力、力み具合を観察してみましょう」
音が出ると、ウリアは少し不安そうな表情でまなみさんの顔を見ています。続いて用意されたのは動く人形です。好奇心を抑えきれずにかみついてしまいました。訓練士の島田奈央子さんは、新しい刺激を受け入れることができるのは子犬のうちだけと話します。
島田奈央子訓練士「将来的に盲導犬になった時に、電車や地下鉄に乗って揺れたりする所にも行ける犬たちにしたいので、色々な経験を是非させてください」
この日、ウリアは母親のまなみさんと外に出て散歩の練習をしました。盲導犬は人の左側を歩くように訓練されます。ウリアもまなみさんの左側を歩き、まなみさんはリードを使い誘導します。自由に歩くのではなく、人が歩くスピードや方向に合わせることなどを徐々に学ばせます。阿部さん家族とウリアの生活は、2024年の夏まで続きます。
母親・阿部まなみさん「無事に大きくちゃんと成長してくれればいいなと思います。今は飛び跳ねたり元気いっぱいなので、将来はちゃんと落ち着いて人のそばにいれるようになってほしい」
視覚障害者の生活を支える盲導犬の数を減らさないためにも、パピーウォーカーの確保が求められています。
日本盲導犬協会によりますと、盲導犬を必要としている人は全国で約3000人いますが、現在活躍している盲導犬は830頭ほどしかいないということです。協会ではパピーウォーカーに関心がある人は、協会のホームページを見て条件などを確認してほしいと話しています。