キーウの小児病院など、ウクライナ各地に対して行われたロシア軍によるミサイル攻撃で、これまでに42人が死亡したと発表されました。

がんをはじめ、重い病気と闘う子どもたちが数多く入院していた病院。当時、患者とスタッフ合わせて1200人以上がいたそうです。

避難した人 「病気の子どもがいる病院が攻撃されるなんて、考えもしませんでした。言葉になりません」

病院では、医師ら2人が亡くなりました。子どもたち8人がけがをしています。

ロシアが病院を攻撃するのは、いまに始まったことではありません。 全面侵攻以降、医療施設に対する攻撃は1600回以上繰り返され、128人が亡くなっています。

今回の大規模攻撃の前日、ロシア南西部・ボロネジ州の空に立ちのぼった煙。ウクライナは、ドローンで弾薬庫を攻撃したとしています。けが人は出ていない模様です。

ロシアは、今回の大規模攻撃について“報復”としつつも、民間施設は狙っていないと主張しています。

ウクライナ当局は、病院への攻撃は巡航ミサイル『Khー101」』によるものとして、残骸の写真を公開しました。爆撃機から発射するタイプの巡航ミサイルです。高価で、命中精度も高いとされています。病院近くで撮影された映像には、ミサイルが空から落ちてくる瞬間が記録されています。

ウクライナ・ゼレンスキー大統領 「テロリストが破壊したすべてを再建します。人でなしのロシアの行動に報復します」

◆ウクライナ政府などによりますと、ロシア軍は、首都キーウのほかに5つの都市に38発のミサイルで攻撃。このうち30発は迎撃したものの、キーウの小児病院や幼稚園など、あわせて100近くの施設が被害を受けたとしています。一連の攻撃で、少なくとも42人が亡くなり、190人が負傷したということです。

一方、ロシア国防省は、今回の攻撃について「ウクライナの軍需産業施設や空軍基地に対する攻撃だった」と主張していて、ウクライナによるロシア領内への攻撃に対する報復だとしています。

◆ロシア情勢に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんは、ロシア側の2つの狙いを指摘します。

一つ目は『越境攻撃の阻止』。 兵頭さんは「ウクライナからドローンを使った石油施設・レーダー施設の攻撃などが始まっていて、さらに欧米製兵器を使用した攻撃も認められている状況。国民の厭戦ムードを高めかねない領内への攻撃を抑止したい」といいます。

もう一つは『ウクライナの防空体制の弱体化』。 「複数都市へミサイルを撃ち込み、パトリオットなど迎撃システムを稼働させ、弾薬など消費させることで、防空体制の弱体化を図る」のが狙いではないかということです。

兵頭さんは、小児病院への攻撃について「ロシアにとって、どこまで意図したものかはわからないが、結果的に“誤算”だったのは小児病院の被害。“支援疲れ”で結束に緩みが見えていた欧米が再び支援強化で結束する可能性もある。ロシアにとっては“逆効果”となった」といいます。

さらに、今後については「ロシアによるウクライナへの攻撃はもちろん、ウクライナによるロシア領内への“越境攻撃”もさらに激しくなるだろう」としています。