兵庫県の齋藤元彦知事(46)が10日、会見に臨みました。

兵庫県・齋藤元彦知事 「本当に心からお悔やみを申し上げたいと思っています。私も本当にショックです。もちろん本当につらい気持ちでいます」

齋藤知事が語るのは、今月7日に亡くなった元幹部職員についてです。知事の“パワハラ疑惑”などを告発していました。関係者によりますと、自殺とみられています。

男性による告発の内容です。

告発文書 「知事のパワハラは職員の限界を超え、あちこちから悲鳴が聞こえてくる」 「気に入らないことがあると机をたたいて激怒するなど、枚挙にいとまがない」

疑惑を向けられた齋藤知事は、総務省の官僚出身で、就任3年目を迎え、『攻めの県政』を掲げてきました。

当初、疑惑を完全否定。さらに、男性をこう非難していました。

兵庫県・齋藤元彦知事(3月) 「何か不満があるからといって、自分の業務時間中なのに、嘘八百含めて文書を作って流す行為は、公務員としては失格ですね」

10日の会見で、こう述べました。

兵庫県・齋藤元彦知事 「『嘘八百』という発言が、強い言い方だったということは、反省しなくてはいけない」

自らの態度をこう振り返りました。

兵庫県・齋藤元彦知事 「感謝の気持ちと信頼関係。仕事を任せするという思いを持って、仕事をしていくことが、やはり十分ではなかったという面があるかと思います」

知事による“嘘八百”発言の後、男性は県の『公益通報窓口』にも通報。本来、組織内の不正に関する内部告発は、公益通報として、告発者は、不当な扱いをされないよう保護されるはずですが、男性には懲戒処分が下されました。知事の下で行われた調査により、文書は誹謗中傷だと認定されたからです。

これに対して、県議会から「調査は不十分」との声が上がります。

批判を受けた知事は、第三者機関による再調査を表明しましたが、批判はやまず、県議会では、より権限の強い調査特別委員会、いわゆる“百条委員会”も設置されました。

疑惑の解明に向けて、19日には男性も証言に立つ予定でした。

兵庫県・齋藤元彦知事 「百条委員会などへの対応への大きな心理的な負担、プレッシャーがあったものと推察しております」

男性は、60歳の幹部職員。退職を間近に控え、次の就職先も決まっていたといいます。

県職員 「(Q.亡くなった方の人柄は)いろいろ相談にのっていただけて、親分肌で頼りになる人」

県職員 「職員の方を思い、県民の方を思い、包容力のある、みんながついて行きたいと思う方でした」

別の職員は、調査の結果も待たずに“嘘八百”と断じた齋藤知事の対応に不信感を募らせます。

県職員 「(Q.知事の初動は)よくないと思う。ちゃんと調べないで、あんなこと言って。やり方が、ちょっと普通じゃないと思います。真実が明らかにされないまま、終わってしまうのではないか」

県によりますと、県庁には、この3日間で、300件以上のクレームが寄せられ、日に日に増えているといいます。

さらに、約4000人が加入する県職員の労働組合が、10日、齋藤知事の辞職を求める申し入れを行いました。

県職員労働組合・土取節夫中央執行委員長 「告発した職員を守ることができなかったことは、痛恨の極みです。知事として責任ある対応を求めます」

異例の申し入れを受けて、知事は、こう述べました。

兵庫県・齋藤元彦知事 「私自身、知事が変わったと。私自身が生まれ変わって、より良い県政を進めていくために、職員の皆さんとの信頼関係の再構築をやるべきだと。それが私の大きな責任だと考えています」

続投する考えを示しました。

県民の声です。

「兵庫県としてはあるべき姿から逸脱してるのではと。(Q.続投は正しい姿か)続投して自分はいいと思いますけど、はっきりさせたうえで、続投をするべきだと思います」

「ちょっとひどいですよね。僕らが1票投じた知事ですから、僕にも責任あると思うけど、早めに退陣したほうがいい」

◆改めて経緯をまとめました。

3月中旬:兵庫県の元幹部職員の男性(60)が、齋藤知事のパワハラ疑惑などの告発文書を、県議や報道機関などに送る、いわゆる“外部通報”を行います。

3月27日:齋藤知事が会見で、通報者の元幹部を批判。「事実無根の内容がたくさん含まれる」「嘘八百含めて、文書を作って流す行為は公務員として失格」と述べ、元幹部の役職を解きます。

4月4日:元幹部が、県の公益通報制度を利用し“内部通報”を行います。    『公益通報制度』とは、組織の不正行為などを組織内部で発見、是正する制度。通報者は解雇や減給・不自然な異動などから、法的に守られます。

5月7日:「文書に書かれていることが基本的に事実ではない」として、元幹部に対し、停職3カ月の懲戒処分が出ます。ただし、これは、公益通報制度にのっとった調査で出された処分ではありません。

5月中旬:県議が県の職員に対し、独自にアンケートを実施した結果、21人中、7人が「パワハラがあった」と回答しました。

6月13日:県議会が強い調査権を持つ“百条委員会”の設置を決定します。

今月7日:元幹部が死亡しました。

元幹部は、内部通報の前に外部に通報しています。鹿児島県警の元職員が告発文書を送ったのも、まず外部でした。内部通報というのは、ハードルが高いのでしょうか。

組織や企業の内部通報制度に詳しい光前幸一弁護士に聞きました。

光前弁護士は「内部通報は、対象者が、首長、社長といった大きな権力を持つ相手になるほど難しくなる。周囲がトップに忖度して、通報を握りつぶしてしまうことも考えられる。今回と鹿児島の件は、まず外部への通報を行った点が似ている。組織の通報制度が機能していないことの表れだ」と話します。

また、一連の県の対応については「今回の“告発文書”が事実無根だった場合、処分は相当。一方で、4月に内部通報したにもかかわらず、その結果が出る前に懲戒処分の判断を下していることが問題。県が公益通報制度を無視している」と厳しく指摘しました。