イランの大統領選挙で当選したペゼシュキアン氏は約19年ぶりの改革派の大統領として欧米との関係改善を訴えています。

 しかし、これまでの保守強硬派の路線から大幅に転換することは難しいとみられ、改革と保守との間でどのようにバランスを取るかが焦点です。

 イランで5日、大統領選挙の決選投票が実施され、改革派のペゼシュキアン氏が保守強硬派のジャリリ氏に約300万票の差を付けて勝利しました。

 ペゼシュキアン氏は核開発などで対立する欧米との緊張を緩和することや制裁で疲弊する国内経済の立て直しなど、欧米諸国と「対立」ではなく「対話」する方針を訴えています。

 しかし、最高指導者ハメネイ師は6日、次の政権について「ライシ前大統領の方針を引き継ぐことを勧める」と保守強硬派の路線から転換することを抑制する姿勢をみせていて、ペゼシュキアン氏は早速、大きな課題に直面しています。

 これまでのところペゼシュキアン氏は8日、ロシアのプーチン大統領と電話で会談したほか、イスラエルと敵対するイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」のトップに手紙を送り、協力関係の継続を伝えるなどこれまでの外交・軍事政策を踏襲する姿勢をみせています。

 アメリカに拠点を置く「中東研究所」のアレックス・バタンカ氏は、ペゼシュキアン氏が大統領として方針を転換することは難しいと分析します。

中東研究所 アレックス・バタンカ氏 「彼にイラン人が望む変化を実現できるでしょうか。例えば、強制的なヒジャブの着用など強権的な法律に反対できるでしょうか。彼にはできません」

 また、バタンカ氏はペゼシュキアン氏が当選できた背景には最高指導者をはじめとするイラン上層部の思惑もあったと分析します。

中東研究所 アレックス・バタンカ氏 「イラン上層部は社会をよく理解して国民が非常に怒っていると判断しました。ペゼシュキアン氏のような人物は少なくとも短期的に、この状況を和らげることができるのです。それが恐らく、彼が出馬を許されて、そして勝利することができた理由です」

 最高指導者・ハメネイ師の事務所によりますと、ペゼシュキアン氏は28日、大統領に就任する予定です。

 就任後は閣僚名簿を議会に提出し、信任投票で承認される必要があります。

 議会は保守強硬派が多数を占めていて、閣僚候補の顔触れ次第では反発が起き、厳しい政権運営を迫られる可能性もあります。