愛媛県の松山城が建つ山の斜面で土砂崩れが発生しました。

警察や消防によりますと、12日午前4時前、複数の近隣住民から「土砂崩れが起きている」と119番通報がありました。

松山市によりますと、幅50メートル、高さ100メートルに渡って崩れ落ち、ふもとの住宅地に押し寄せました。

巻き込まれた木造住宅の住人3人と連絡が取れなくなっています。

愛媛県によりますと、行方不明となっているのは、90代の男性、80代の女性、40代の男性です。現場周辺には、警戒レベル5の『緊急安全確保』が出されていて、警察と消防が、手作業で救助活動を進めていますが、流入した土砂の量や、土砂に含まれる水分量が多いことから、作業は難航しているとみられます。

つぶされた住宅の横にあるマンションの住民は、こう話します。

現場近くの住民 「全部、窓開けて寝ていて、パーンって音が鳴ってから、家の中が臭くなって。木のニオイみたいなのがまん延してきて。パーンって雷が鳴ったのかなと思って、また寝たんですよ。そうしたら、パトカーの音が鳴って、『避難してください』みたいになって出たんですよ。土砂が流れてから『逃げろ』と言われて逃げたんですよ。家に入ろうと思ったら遅かった。家の前に流れたので、逆方向に抜け出した」

松山では、48時間雨量が、213.0ミリに達しました。これは、平年の7月一カ月に降る量と、ほぼ同じです。特に、12日未明にまとまった雨が降りました。

土砂崩れの発生は、午前4時前。ただ、警報が出たのは、その後です。午前4時32分に大雨警報・洪水警報、午前5時に緊急安全確保、午前7時に土砂災害警戒情報が出されました。

地元の大学で、自然災害の研究などを行う専門家は、こう話します。

愛媛大学防災情報研究センター・木下尚樹副センター長 「反対側斜面でも過去に斜面崩壊しているし、小規模な崩壊は、たびたびというか過去にもあった。今回、土砂崩れが起こった場所は、少し緩やかな谷地形になっていて、おとといからの雨が集水されて、その結果、斜面が不安定化して崩れたと考えられる」

現場近くの住民 「ここの物件を借りるときにも、土砂崩れの被害が強い可能性があると、一応、承知のうえで借りてはいたので、身構えてはいた。実際、起こってみると、ちょっと怖い」

松山城の周囲には、火災などに備えて、消防車などが通る緊急車両用の道路があります。路肩には、ガードパイプが設置されています。その向こう側は、急な斜面になっていて、擁壁と呼ばれるもので、整備されていました。

市によりますと、去年夏の大雨で擁壁が傾き、さらに、今年の大雨で、傾きがひどくなったそうです。応急処置として、擁壁の撤去工事を行い、3分の2を取り除き、雨に備えてブルーシートを設置していました。

松山市の担当者 「擁壁を撤去したことで、今回の土砂崩れを誘発したとは考えにくい。重さを取り除き、軽減しているわけだから、有利な方向に働くことはあっても、不利な方向に働くことはない」

毎日、この場所を通っているという住民は、路面に亀裂があるのを目にしていました。

現場を知る住民 「6月のときは亀裂がこれくらい。毎日、通って上がるから、7月1日、工事しているときに20センチぐらい亀裂が入っていた」

市も、この亀裂のことは把握しています。原因究明は、今後の調査に託されます。

愛媛大学防災情報研究センター・木下尚樹副センター長 「斜面災害に関しては、今回のような谷地形になっているところが注目のポイント。松山や愛媛に限ったことではない。防災の観点から、昨今の豪雨の状態を見ると、まず、もう一度、危険箇所を洗い出すことが大事」

◆土砂崩れが発生するまで、現場周辺では何が起きていたのか。

松山市では、10日から、断続的に雨が降り続いていて、松山地方気象台によりますと、12日午前7時までの48時間雨量は213.0ミリ。これは、松山市の平年の7月1カ月分と匹敵するほどです。この大雨のなかで、土砂崩れが発生しました。

午前4時前、近隣住民から「土砂崩れが起きている」と119番通報がありました。

そして、午前4時32分に、松山地方気象台は、大雨注意報を切り替えて、大雨・洪水警報を発表。また、土砂災害警戒情報は、この時点で出ておらず、2時間半後の午前7時に発表されました。

もっと早く、警戒を促すことができなかったのでしょうか。松山地方気象台に聞きました。

大雨警報については「災害があった午前4時時点では、大雨警報の基準を超える予測ではなかった。その後、超える予想となったため、切り替えた」といいます。また、土砂災害警戒情報についても、「午前4時時点では、基準を超える雨ではなかったが、土砂崩れが発生し、その後も弱い雨が予想されたため、午前7時に発表した」ということです。

今回の土砂崩れを受けて「大雨警報の基準を超えていないなかで土砂災害が起きた原因を検証し、関係機関と今後の対応を検討したい」と話しています。