アメリカのバイデン大統領が21日、自身のSNSで、選挙戦からの撤退を表明しました。

つい数日前まで出馬に強い意志を示していましたが、週末にスタッフからさまざまなデータを見せられ、考えを大きく変えたようです。

CNN 「大統領は、コロナ陽性と診断され、別荘で自主隔離中に熟考を重ねていました。家族にも相談したということです。家族の存在は、バイデン氏の決断に大きな役割を果たしてきました。まさに極秘でした。バイデン氏が公式に発表したのは、政権高官や選挙参謀に電話で撤退を伝えた1分後でした。ハリス副大統領も、きょうまで知らなかったそうです」

撤退について、支持者は、好意的に受け止めています。

民主党支持者 「意味がある決断だと思う。民主党支持者ですが、トランプを倒すためなら、価値があると思う」

民主党支持者 「英断です。いずれ辞めるつもりだったと思う。1期務めたから十分でしょう。他の人にチャンスをあげなきゃ。(Q.トランプ氏に勝つチャンスが出てきた)そう願います。『グッ』とマシになったはず。誰が名乗り出るか楽しみです」

民主党の大統領候補は、来月19日から行われる民主党大会で正式に指名されます。いまのところ、バイデン大統領に推薦された副大統領のハリス氏(59)が最有力です。

バイデン大統領のX 「私は、カマラがわが党の候補者となることを全面的に支持し、推薦したい。民主党よ、いまこそ団結して、トランプを打ち負かすときだ」

ハリス氏に期待されているのは、ディベート力です。ディベートの強さは、大統領選の勝敗を大きく左右します。バイデン大統領が失速したのも、先月の討論会がきっかけでした。

そのトランプ氏ですが、早速、このような反応です。

トランプ前大統領のX 「ハリスの方が、バイデンよりも倒しやすい」

ハリス氏の地元、カリフォルニア州バークリーでは、すでに大盛り上がりです。

地元の人 「(Q.カマラは、トランプを倒せると思う)もちろん。120000%違いない」

ハリス氏の幼なじみ 「カマラは、政治が好きで、私の母ともよく話していました。『カマラ、いつか大統領になるかも』と母は言っていました。実現するかもしれませんね」

黒人女性として初のカリフォルニア州の司法長官を務めるなど、ガラスの天井を打ち破ってきたハリス氏。バイデン大統領の選対が使うSNSのアカウント名は、すでに変更済み。資金もすでに70億円以上が寄付されたそうです。

ハリス副大統領のX 「大統領の推薦をいただき、光栄に思いますし、私はこの指名を獲得し、勝ち取るつもりです」

ただ、対抗馬が名乗り出たときに、最終的にどうするかなど、細かいことは決まっていません。また、ペロシ元下院議長など、民主党の重鎮の一部も、まだハリス氏の支持を明言していません。

同じく大きな影響力を持つオバマ元大統領は、こう述べました。

オバマ元大統領 「私たちは、この先、未知の海を航海することになるだろう。しかし、民主党の指導者たちが、優れた候補者を選出するプロセスを作り上げることができると、私は固く信じている」   

◆アメリカ政治に詳しい上智大学・前嶋和弘教授に聞きます。

Q.バイデン氏の“撤退表明”は、局面を展開する要素になり得るのでしょうか。

私は、なり得ると思います。共和党の追い風を止めるには、このタイミング。民主党大会まで1カ月を切った。急いで対応する。そのためにも民主党がまとまれるか。これがポイントだと思います。 共和党大会がピークで、この1カ月くらいトランプ氏が有利だったけど、そこで、民主党が一気に変えると。政治用語で「スピン」という言葉があります。トランプ氏の回転を逆にしようということです。

Q.バイデン氏は“後継”にハリス副大統領を推薦していますが、このまますんなり“ハリス候補”でいくのでしょうか。

みんなで予備選を戦う時間はない。さらに、党内が割れちゃいます。オバマ元大統領が「優れた候補者を選出するプロセスを作り上げる」と言った言葉ですが、ニュアンスとしては、選挙みたいなことはあり得るかもしれませんが、ハリス氏でまとまるように党を動かしていきましょうと。そういうことをバイデン氏も、みんなもそう信じているということだと思います。 そもそも、バイデン氏とハリス氏が一緒に戦っています。これは選挙資金を積むことができます。一方、ほかの人は、これから登録で、まだゼロです。いま、いろいろ名前が挙がっている人は、2028年、4年後の大統領選狙いです。

Q.賭けではありますよね。

すごい賭けです。そもそも、バイデン氏がハリス氏で大丈夫かなと。政策・運営能力とか。バイデン氏は、そこで迷いながら、決定しなかった。そのなかで、急にハリス氏を大応援となっても、本当かなと思う人もいるわけです。

Q.実績がないともいわれているハリス氏ですが、どんな層に訴えかけることができるのでしょうか。

人となりですよね。ジャマイカ系、黒人であり、インド系は、アメリカでアジア系とみられます。そして、女性。女性・黒人・アジア系の初の副大統領。3年半、やったけど、実績がまだまだない。バイデン政権というのは、オバマ政権の3期目みたいなもので、自分のやりたいことが動かせなかった。そういう意味で、まだ物足りないところがありますが、逆にいうと、未知であるがゆえに、今後が、まだ開けると。未来があるハリス氏となりますよね。

Q.今後の戦い方のポイントは。

ポイントは副大統領候補。誰をもってくるか。例えば、ミシガン州知事のウィットマー氏(53)。女性なわけです。民主党としては、間違いなく女性の大統領を生むんだと、ガラスの天井を破るんだとPR。ミシガン州は激戦州です。そして、同性愛者のブティジェッジ氏(42)。アメリカは同性愛者も結婚できるので、結婚しています。新しい変化、多様性の民主党。シャピロ氏(51)は、まだ若いですけど、ペンシルベニア州は激戦州中の激戦州です。この副大統領でうまくいって、党内をうまくまとめることができたら、大きなポイントになります。

Q.2016年の大統領選では、ヒラリー・クリントン氏がトランプ氏に敗北した際に「ガラスの天井を誰かが打ち破ってくれると期待」と発言。ハリス氏は“ガラスの天井”を破る、誰かになり得るのでしょうか。

なり得ます。そもそも、アメリカは分断の世界なので、共和党支持者と民主党支持者で固定層があります。トランプ氏にだいぶ寄ったように見えますが、まだ数字だけ見ると、数ポイントの差です。あの討論会があって、銃撃事件があって、まだ、2、3ポイントの差。バイデン氏のところにハリス氏が入ることで、むしろ若手になります。トランプ氏は、史上最高齢の大統領候補になってきます。まったく局面が変わってくる。だから、新しいスタートということになります。そういう意味では、ガラスの天井を破るかもしれません。

Q.トランプ陣営は、どんな戦略でくると思われますか。

「3年半やって何も実績がないじゃないか」とか、トランプ氏が演説で、いつもの汚いあだ名で言う。共和党支持者はこれで結束しますが、トランプ氏が来るぞとなると、民主党も固まるわけです。トランプ氏は、やっぱり劇薬です。そういう意味で、ほぼトラ、かくトラという言葉がありますが、時期尚早です。完全に。まだまだ競って競っていくと思います。この1日で大きく変わりました。

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