■台風5号 お盆休みの東北直撃へ

午後8時半すぎ、岩手県釜石市。徐々に雨が強まってきました。 (石田瑠美子 記者)「午後6時半すぎの釜石市内の海水浴場です。風がかなり強くなっていて、波も次第に高くなってきています。」 海上の見通しも悪くなっています。東北の太平洋側に上陸する可能性が高くなっている台風5号。東北地方では、平年の8月、1カ月分(約150~250mm)を上回る記録的な大雨となる恐れがあります。 ■台風上陸へ「かなりの危機感」気象庁警戒

(気象庁会見)「24時間に300mmという降水量の予想については、かなりの危機感を持っています。」 東北の東の海上を時速10kmほどで北上している台風5号。自転車並みの遅い速度のため雨や暴風の影響が長引く恐れがあります。台風はこの後も北上を続け、12日の午前中には岩手県または宮城県付近に上陸する可能性が高まっています。その後、東北を横断する見通しですが、日本海で動きが遅くなり影響が長引く可能性があります。 ■お盆“帰省ラッシュ”直撃「台風が来る前に…」

台風の影響はお盆の帰省ラッシュにも―。 (仙台に帰省する家族)「色々と予定が変わって、月曜日に行く予定ではあったんですけど、『台風が来る前に早め早めで動いて』とばあばから言われてね。もう会いたい会いたいと泣いていて」 「ばあばと遊ぶの。動物園と花火」 (福島に帰省する家族)「台風が来ているので、たぶんどこにも出かけられないのかなと思って、実家でゆっくり過ごそうと思います。湖行きたかったよね?湖行こうと思っていたんですけど、たぶん行けないので家でゆっくり」 JR東日本によると、12日、山形新幹線や秋田新幹線に遅れや運休が発生する場合があるといいます。空の便も、東北地方を発着する便を中心に、12日、80便以上の欠航が決まっています。 気象庁は、11日夜から12日の午前中にかけて青森県、岩手県、宮城県で線状降水帯が発生し、大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があると発表しました。土砂災害や河川の増水、暴風などに厳重な警戒が必要です。 ■地震発生から3日…避難所通う高齢夫婦

(撮影者)「ヤバい!倒れない?この建物」 「うそでしょ!」 8日に発生した地震による、南海トラフ地震“巨大地震注意”の発表は、想定震源域内の自治体に影を落としていました。 最大で34.4mの津波が襲うとされる、高知県黒潮町。 (山本将司ディレクター)「こちらの避難所には、地震発生から3日経った今も避難している方がいらっしゃいます。」 (避難者)「(避難所まで)坂を上って歩いて来られないから私が連れてきている。南海トラフ南海トラフとずっと聞いてきましたけど、初めて正式な発表(巨大地震注意)が出されたでしょ。だからすごくドキドキがずっとしている。以前よりは。」 ■「避難タワー」「カルテ」“犠牲者ゼロ”目指す

津波による“犠牲者ゼロ”を掲げる黒潮町は、高台避難では、全ての住民の避難が間に合わないなどから、町内6カ所に“津波避難タワー”を建設しました。その1つが、高さ25m、約230人が収容できる国内最大級の避難タワーです。 (山本将司ディレクター)「1階からは人がのぼれるように階段が設置されています。その横に大きなスロープも設置されていて、車椅子などがのぼりやすいように配慮されています」 津波に対する防災意識は、住民にも… (高知県 黒潮町鞭地区 松井和久 地区長)「これが鞭地区の避難カルテになっております。全住民の避難カルテ。」 津波による浸水が予想される、約3800世帯ごとに作られた『戸別津波避難カルテ』。そこには、自宅から避難所までの経路から家族構成、自力避難の可否などが書かれていました。このカルテは、官民一体となってワークショップなどを開き、作成したもの。黒潮町では、カルテをもとに避難訓練を行い、いざという時のため、備えをしています。 (高知県 黒潮町鞭地区 松井和久 地区長)「高齢の方とか、体の不自由な方からは、私らはいいからとかいうようなところはないわけでもなかったと思いますが、やっぱり犠牲者ゼロの街というような形で、地区も含めてそういう(避難の)意識を持っていってくれた」 ■津波対策に差…避難所「寝るスペース足りない」

同じ高知県でも、対策の進捗には大きな差がありました。背後に山々が迫る家々に、約110人が暮らす大月町橘浦地区。 (高知県 大月町橘浦地区 山本梅市 地区長)「(津波は)あちらから来てあそこの川を直撃でしょうね。真っすぐね。これ(堤防を)越えて来たら全滅ですね」 予測される津波は10m以上。ほとんどの家が浸水する高さです。地区長の山本さんは、住民の避難に危機感を抱いていました。 (高知県 大月町橘浦地区 山本梅市 地区長)「(避難場所までは)きついですよ。実際、高齢者の方はよういかんでしょうね」 この地区は、約8割が高齢者。高台にある避難場所への移動も容易ではありません。 (高知県 大月町橘浦地区 山本梅市 地区長)「ここが避難所ですね」 Q.ここが避難場所? 「これだけの広さがあります」 避難場所となっているこの神社には、50人の収容を想定していますが、広さは20畳ほどしかありません。 「今のところここに50人が生活できる、寝泊りできるスペースはありませんね」 さらに不安は備蓄品にも… 「これが300食です。水もまだ足りませんのでね。」 備蓄や設備が整った避難所までは、1本の道路しかありません。そのため、落石などで道が寸断した場合、地区は“孤立”する可能性があるのです。 (高知県 大月町橘浦地区 山本梅市 地区長)「(町も)海岸部のことは頭では理解してくれていると思うんですよ。ですけれども、海岸で実際に24時間寝起きしている住民とは温度差が全く違います」 町では、適した場所さえあれば、新しい避難所の建設を検討したいとしているものの、見合う高台がないのが現状です。 (高知県 大月町橘浦地区 山本梅市 地区長)「(いま津波が来たら)手の打ちようがないですね。平時でもこの階段をお年寄りが上がってくることは大変なことですから、津波が来るまでに避難広場までたどり着けるかどうかということが第一の苦労になりますね」 ■発生1時間前に“予兆” 研究者「命救える」

こうしたなか、地震の発生を約1時間前に予測する研究が進んでいました。 (京都大学大学院 梅野健 教授)「(この研究で)命が救えるのが最大のポイント」 梅野教授の研究では、これまで熊本や能登など、地震発生の約1時間前に予兆をとらえていました。8日に発生した宮崎の地震でも… Q.何時間前に地震がおこる予兆があった? (京都大学大学院 梅野健 教授)「2時間くらい前から1時間(段階的に)直前まで」 その研究とは、地球のまわりにある“電離層”という大気の領域を観測すること。過去の地震を分析したデータを見せてもらうと… (京都大学大学院 梅野健 教授)「赤くなっているところが(電離層の)異常を示しているところなのですが、そこの場所に地中で電気が生まれている」 地震発生の約1時間以上前、地中の微妙な振動で発生した電気に電離層が引き寄せられて異常が起き、その後、地震が発生すると言います。 (京都大学大学院 梅野健 教授)「大きな地震が来たとしても、(この予測で)時間が稼げますので、逃げるとかいろんなことができる」 8月11日『サンデーステーション』より