イランの後ろ盾を受けるイスラム組織ヒズボラが、隣国イスラエルに対する大規模攻撃に踏み切りました。司令官殺害に対する報復だといいますが、さらなる攻撃も示唆していて、中東に緊張が走っています。

■イスラエルは直前に“先制攻撃”

レバノンを拠点とするヒズボラによる攻撃。イスラエルの北部に、大量のドローンや320発以上のロケット弾が発射されました。ヒズボラは、11カ所の軍事施設や防空システム『アイアンドーム』の基盤を標的にしたとしています。

きっかけは先月、イスラエルによってヒズボラの幹部シュクル司令官が殺害されたこと。ヒズボラの指導者ナスララ師は「報復の第一段階が終了した」としたうえで、場合によっては、さらなる攻撃の可能性も示唆しました。

ヒズボラ最高指導者 ナスララ師 「もし戦果が十分でないと判断されれば、別の機会に報復する権利があるものとする」

一方、ヒズボラによる大規模攻撃の予兆を察知し、拠点の先制攻撃に成功したとしているイスラエルも…。

イスラエル ネタニヤフ首相 「我々はヒズボラに驚異的な打撃を与えました。これは終結ではない」

そもそもイスラム教シーア派のヒズボラと、ユダヤ教徒が多いイスラエルとの対立は長い間、続いてきました。そして、ガザ地区でイスラエルとハマスの紛争が始まって以降、ハマスに連帯を示すヒズボラは度々イスラエル北部に攻撃をしかけ、対立は激化してきました。

なかでも、今回は最大規模の攻撃の応酬。アメリカは懸念を強めています。

ホワイトハウス サリバン大統領補佐官 「今も対立激化の回避に取り組んでおり、昨夜の出来事が地域紛争に発展しないことを願っています」

■“侵攻のコスト”意識させる狙いか

しかし、イスラエルとヒズボラが全面戦争に突入する可能性は、今のところ低いとみられ、双方が「これ以上の緊張激化は望まない」と伝えあったとの報道も出ています。

慶応義塾大学 錦田愛子教授 「イスラエルの背後にはアメリカがついている。それだけ大きな軍事力をもっているイスラエルに対して、正面衝突で全面戦争に突入したくはない。報復としてシンボル的な意味で攻撃をする、やり返す必要はあるが、本当に全面戦争をするつもりはないと。そこは自制をかけた形になると思う」

一方でイスラエルは、ハマスとの停戦協議において合意が見通せない状況が続いています。そこに、今回の攻撃で間接的な影響が出るかもしれないと指摘します。

慶応義塾大学 錦田愛子教授 「戦力をガザに集中できない。北部にもある程度の反撃能力を割いておかなければならない。イスラエルにとって間接的に『コストのかかる戦争をいつまで続けるんだ』『早めに停戦をした方がいいのではないか』というような圧力として作用する可能性はあると思う。(停戦交渉で)譲歩をする結果につながる可能性はあると思う」