東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出が始まってから、8月24日で1年が経過しました。中国や香港などが日本の水産物の輸入停止措置を続ける中、宮城県の漁業にはどのような影響が出ているのでしょうか。
福島第一原発の処理水をめぐっては、2023年8月から海洋放出が始まり、これまでに7度の放出を終え、8月に8度目の放出を行っています。
宮城県気仙沼市唐桑町でホタテの養殖を行う鈴木章登さんです。
処理水放出で中国が日本の水産物の輸入を停止したため、北海道産のホタテが国内市場に流れ込みホタテの価格が下落しました。
処理水の放出前は1キロ当たり600円ほどでしたが、現在は300円ほどと半値に下落したままです。
東京電力からは価格の下落分を補填する賠償があり、鈴木さんへの支払いも2023年12月に始まりましたが、申請から支払いまでに4カ月ほどかかるため、人件費や施設の維持費などの資金繰りに追われています。
更に猛暑の影響で8割以上のホタテが死ぬ被害があり、先行きに不安を感じています。
県漁協唐桑支所鈴木章登運営委員長「補填があるから何とかやっていけるという感じで。猛暑の被害は年々ひどいけど、また半成貝(ホタテの種)が入ってくるけど、それが駄目ならばホタテに見切りつける人が増えるのではないかな」
石巻市雄勝町でカキやホヤなどを養殖加工している伊藤浩光さんです。
コロナ禍、国内の飲食店での需要が落ち込んだことを受け、シンガポールや香港などへのカキの輸出を始めました。
取引先からの評判も良く、順調に出荷量を増やしていましたが、処理水の放出により大半の取引が停止し1年が経った今もほとんど回復していません。
伊藤浩光さん「(注文が)ほとんど無い状態で、たまに来る程度で話は来るんですけどね」
伊藤さんは、売り上げを維持するために国内販売に舵を戻し商談会に何度も通うなどして販路の確保に奔走しています。
新型コロナが落ち着きを見せ、国内需要が回復してきたことも幸いしてどうにか売り上げを維持してきました。
国には、中国などによる禁輸措置の解除や風評の払しょくに努めてほしいと話します。
伊藤浩光さん「これからも国内、海外もやるとは思うんですけど、国内をメインにやっていって、それでまだ売り上げが足らなければ海外もやっていこうと思ってます」