価格高騰を受け、ようやく政府は「備蓄米の放出」を発表しましたが、これで本当にコメの価格は下がるのでしょうか?専門家からは、不安視する声も。(2月15日OAサタデーステーション)

■都内のおにぎり専門店「最大120円値上げ」

15日、サタデーステーションが訪れたのは、都内にある「おにぎり専門店」。 炊き立てのご飯に「サケ」などの具材を入れ、海苔で包む、ニッポンのソウルフード。その「おにぎり」に使用するコメの価格が2024年の夏ごろから急激に高騰。今年1月は、5キロの平均価格が4000円を超え、2024年のおよそ1.7倍となっています。こちらのお店では、価格高騰を受けて2024年12月から、おにぎりの価格を20円から120円値上げしました。

おにぎり米農園 中尾義貴店長 「(おにぎりの)質を落とさずに、良いものを提供するとなったときに、考えたのが、値上げする方法しか無かったので、さらに上がったら、より厳しい状況にはなる」

■備蓄米放出の効果は“限定的”か「今夏も高値の可能性」

こうした価格高騰の抑制に繋がるのでしょうか? 政府は14日、備蓄米を21万トン放出すると発表。早ければ、3月下旬にもスーパーなどに並ぶ予定です。 江藤農水大臣は、これにより「価格が落ち着くことを期待している」としていますが、楽観視できないという指摘もあります。元農水省官僚で農政アナリストの山下さんは今年の夏には、再び米不足になる可能性があるといいます。

元農水省官僚 キヤノングローバル戦略研究所 山下一仁 研究主幹 「今年の夏に去年と同じような猛暑で不作などが起きたら多分不足する。価格が変わらない可能性があるということです」

■コメ不足の背景に“実質的な減反政策”?

なぜコメ不足が続くとみているのでしょうか。要因にあげるのが、“実質的な減反政策”です。

元農水省官僚 キヤノングローバル戦略研究所 山下一仁 研究主幹 「もう需要ぴったしにコメを生産させる、それによってある一定のコメの価格を狙っている」

コメの価格を安定させるために生産量を調整する「減反政策」は、2018年に廃止。 しかし、その後も国が示す「需給見通し」を元に、自治体が生産量の目安を決めていること。 さらに、主食用米からの転作に「補助金」を出すことなどによって、実質的にコメの“生産調整”をしていると指摘します。

元農水省官僚 キヤノングローバル戦略研究所 山下一仁 研究主幹 「コメの需要ギリギリの生産しかしないから、今回のようにちょっとでも不足が生じるとコメの価格が上がったり、スーパーの棚からコメがなくなったりするわけです。余裕を持って生産していれば今回のようなことは起こらない」

2023年産のコメの生産量は、661万トンに対し、需要量は705万トンと需要の方が上回っています。 コメの生産量が人為的に低く抑え込まれ、そこに記録的な猛暑やインバウンド効果などが重なり、コメ不足に陥ったとみられます。

また、別の要因として言われているのが本来はコメを扱わない業者が買い占めて「売り時を探っている」という可能性です。

江藤 拓 農水大臣(3日) 「投機的なものであってマネーゲームであるということは、もう明らかだと思います」

こうした現状に解決策はあるのでしょうか。

元農水省官僚 キヤノングローバル戦略研究所 山下一仁 研究主幹 「根本的な解決は実質的な“減反政策”の廃止なんです。もうそこでピリオド、コメの価格も下がる」

高島彩キャスター: 備蓄米は3月下旬ごろから店頭に並び始めるということですけれども、実際に価格が下がるとすればいつごろからなのでしょうか。

板倉朋希アナウンサー: 15日午前中に都内数か所のお店に取材をしたところ「まだ備蓄米出回っていないので価格が下がっていない」とのことで、「備蓄米が出回るまで、どのくらい実際価格が下げられるかは不明」といった声や、「政府発表はあったが、まだ本社からの情報も入ってきていないので価格の見通しは立っていない」という声がありました。 では、専門家はどう見ているかというと、米の流通に詳しい宇都宮大学の小川真如助教によりますと、「売り渋っている業者の中で早めに利益を確定させようという人が、どのタイミングで出てくるかにかかっている」ということなんですが、「政府の備蓄米放出の発表で潮目が変わったので、早ければ3月中旬ごろには価格が下がってくる可能性がある」ということでした。ただし「全ての米が一気に下がるというわけではなく、複数の産地などを混ぜたブレンド米などから下り始めると思うので“〇〇産コシヒカリ”など産地や品種にこだわらず探すというのも手」ではないかということでした。 また価格がどれぐらいになるのかですが、平均価格に関しては、コシヒカリは現在4000円台ですが、これが「3800円から3900円ぐらいになれば政策的には成功ではないか」と小川助教はおっしゃっています。

高島彩キャスター: 備蓄放出の発表で潮目が変わったということではありますが、柳澤さんはどう見ていますか。

ジャーナリスト柳澤秀夫氏: 3800円程度に下がったということでは、成功とは言いにくい気がしますよね。いまは価格をめぐって政府と米を売り渋っている業者との間で、まさに心理戦の状況だと思うんです。いずれにしても米が投機の対象として、また同じようなことが起きないとは限らないわけですから、米をめぐる政策そのものを改めて考え直さなければいけない時期にあることは間違いないと思いますね。