プロ野球の開幕まであと2週間です。去年、千葉ロッテマリーンズを引退し、セカンドキャリアをスタートさせた男性がいます。かつて4番バッターとして光を浴びたユニホームからスーツに着替えて奮闘する姿を追いました。
3月初旬。朝の通勤通学などでにぎわう駅からひときわ目立つ、体の大きな男性が。職場へ歩いていると…。
井上さん 「ファンの人が…」 ファン 「アジャ~!!!」 井上さん 「ありがたいんですよ、ほんとに」
井上晴哉さん(35)。11年間にわたってプロ野球・千葉ロッテマリーンズでプレーしていました。持ち前のパワフルかつ柔らかいバッティングで、一時は主砲として活躍し、「アジャ」の愛称でファンに親しまれてきました。
そして去年、惜しまれつつも引退。今年1月から、球団の法人営業としてセカンドキャリアをスタートさせました。
BtoB本部 法人営業部 井上晴哉さん 「率直にこのお話をいただいた時にうれしかったですし、それに加えて恩返しもしたいなという気持ちがあった」
しかし、順調なスタートとはいかないようです。
井上晴哉さん 「パソコンを触る機会がなかったので、パソコン教室に行こうかなっていうぐらい」
一方で「元プロ野球選手」の強みを聞いてみると…。
井上晴哉さん 「あいさつがちゃんとできるとか、気配りとかも常に言われてましたし、先輩への目配りもそうだし、その3つぐらいですかね」
そんな井上さんに、球団は大きな期待を寄せています。
BtoB本部 本部長 吉川雅也執行役員 「おそらく今、苦労していると思います。ただ、他の営業マンではできない、ものすごく大きなアドバンテージを井上さんは持っていると思うんですよね。井上さんが提案するだけでチャンスが広がるし、そういった機会も多くなると思うんですね」
2月下旬。井上さんは、6月に行われる試合のスポンサーとの打ち合わせに向かいました。
スポンサー 「去年(の冠試合)と同じなんですけど、うちのイベントとかまだ考えられてなくて」 BtoB本部 法人営業部 大石賢央部長 「それはまだ時間がありますんで」 スポンサー 「コアラのマーチは配ろうかなって」 井上さん 「コアラのマーチ…」
まだまだ慣れない打ち合わせに、おぼつかない様子でメモを取る井上さん。
スポンサー 「何かいい提案あります?井上さんの方から」 井上さん 「提案ですか」 スポンサー 「盛り上がるやつほしい」 井上さん 「期間限定で僕が登場させていただくとか」 スポンサー 「イベント会場で担当自ら、それ面白いですね。井上さんがよければ、うちはぜひやりたいですね」 井上さん 「僕は全然いけます。大丈夫です」
提案が通りました。スポンサーからの期待も大きいようです。
3月、ZOZOマリンスタジアムのオープン戦初戦。井上さんは引退後初めて、練習中のグラウンドに足を踏み入れました。遠慮してグラウンドの隅に立つも、姿を見つけたかつての仲間が次々とあいさつに来ます。井上さん、どことなく照れくさそうです。
第2の人生を踏み出した井上さんには新しい目標ができたといいます。
井上晴哉さん 「優勝も日本一も何もしてない選手だったんですけど、こうやってまた皆さんの力になれるように、会社に入ることに決めましたし、一緒に(日本一を)味わいたいっていうのもあるんで、僕ももちろん頑張りますのでよろしくお願いします」
チームをサポートして日本一を味わいたい。夢の実現に向けて、まだまだ努力の日々が続きます。