埼玉県八潮市の道路陥没事故からまもなく3か月。現在も、取り残されている運転手の救助に向けた工事のため、穴は拡大。周辺住民の生活への影響も、深刻さを増しています。(サタデーステーション4月26日OA)

■上空から見る陥没事故現場 運転手の捜索再開へ「2つの救助方法」

報告・仁科健吾アナウンサー(26日 埼玉・八潮市) 「陥没事故の現場です。当初の陥没箇所が分からないほど規模が大きくなっています」

事故直後は、直径10メートルくらいだった穴が100メートルほどまで広がっていました。

報告・仁科健吾アナウンサー(26日 埼玉・八潮市) 「多くの重機が確認できます。作業員も以前より増えているように感じます。この黄色い重機です。この四角く区切られた柵で覆われたところに真下にトラックのキャビンがあるとみられています」

26日、作業員たちが集まっていたのは、この穴。青いネットを外すと同時にクレーン車を動かしているのが確認できます。

今も取り残されているトラック運転手。救出するために2つの工事が進んでいます。 1つ目が、バイパス工事で設置した仮の排水管に下水を迂回させ、真上から救出する方法。

報告・仁科健吾アナウンサー(26日 埼玉・八潮市) 「穴の断面は、金属製のもので補強されています。ここから見る限り、5メートルくらいは穴が掘られているのではないでしょうか。作業員が集まって穴の方を覗いています。トラックのキャビンがある場所のすぐ横でも穴を掘る作業が確認できます」

もう1つ、掘削が行われていたのは横から救出するための穴。 下水道管をつたって徒歩でキャビンに近づく方法です。この3カ月、昼夜を問わず、復旧工事が進められていました。キャビンの救出活動は5月中旬にも再開される予定です。

■本格復旧まで5~7年 看板が崩落した和食レストランは

そして24日、発表されたのが本格復旧の見通しです。5年から7年かかるといい、影響の長期化が懸念されています。 道路陥没により看板が崩落した「和食レストランサガミ」番組の取材に文書で答えてくれました。

和食レストラン・サガミ 「現時点では、安全確保と関係各所との調整を最優先としており、営業再開の時期については、まだ見通しが立っておりません。一日も早く救助が行われることを心より願っております」

■目の前が道路陥没現場 従業員を悩ます「臭い」

私たちが訪ねたのは、家具工場。

石井木工 石井昇一さん(26日 埼玉・八潮市) 「ここから見てもらうとバイパスと本管と全部見えるもう真横、5メートルも離れていないです」

事故直後から従業員たちを悩ませているのが下水道管から出る「臭い」です。

石井木工 石井昇一さん(26日 埼玉・八潮市) 「窓を開けると、窓から臭気が入ってくるということで、非常に今、苦労しています」

室内に臭いが入らないよう事故後は、シャッターや窓を閉め切った状態で換気扇もフル回転しないと作業にならないそうです。さらに、会社の駐車場は…

報告・富樫知之ディレクター(26日 埼玉・八潮市) 「こちら工場の前ですね、重機とそして下にはたくさんの資材が置かれています」

少しでも早く工事が進められるよう、事故直後から会社の駐車場を貸しています。25日、県の職員と復旧工事をする担当者から補償について説明があったといいます。

石井木工 石井昇一さん 「(駐車場の)借地契約をするという形ですよね。営業損失なところの部分がメインになります。協力しないことにはうちの会社も成り立ちませんので」

■現場周辺の弁当店 事故前よりも売り上げが減少

周囲では、売り上げに影響が出ている店もあります。現場から徒歩5分のところにある弁当店。道路陥没事故が起きてから売上が減少。

ほっかほか大将 泉勝樹さん 「(1カ月の売上は)大体2~3割は減っていますね。完全にお客さんが離れていますね」

陥没事故前は、ひと月に200万円ほど売り上げていましたが、事故後は40万円以上減少しています。売上を少しでも取り戻すため配達するエリアを拡大していますがそれでも赤字ギリギリだといいます。

ほっかほか大将 泉勝樹さん 「不安はありますね、もちろん(お店は)固定のお客さんも多いのでそういった意味でも出来るだけ長くここで出来ればと思っています」

高島彩キャスター: 八潮の陥没事故を受け国は緊急点検の実施を要請しましたが、改めてその結果はどうなっているのでしょうか。

板倉朋希アナウンサー: 2月に行われた点検では、東京や大阪など7都府県13の処理場につながる下水道管を調査しました。その結果、埼玉県内の3か所で腐食などの異常が確認されましたが、これらについては既に県で改修工事に着手しているということです。また、この時の緊急点検は一部の地域が対象だったため、3月に国は全国の自治体に対して設置から30年以上が経過している直径2メートル以上の下水道管の調査も要請しました。総延長は約5000キロにもなりますが、1年以内をめどに実施するということです。

高島彩キャスター: 総延長5000キロの下水道の調査は本当に大変だと思いますが、もし事故が起きたときの具体的な対策などは検討されているのでしょうか。

板倉朋希アナウンサー: 国では事故後の迅速な復旧や今後の修繕や改修も見据えて、有識者委員会を設置しました。そこでは、例えば下水処理場までのルートを複数にする「複線化」や別の下水管とつなぐ「連絡管」の整備、また家庭から処理場までの中継地点にある「ポンプ場で下水処理」をする案や下水道の水位を下げるための「調整池などの設置」などの案が検討されているということです。

高島彩キャスター: さまざまな案が検討されていますが、市民生活を維持しながら古いものを直していくのは難しいですよね。

ジャーナリスト柳澤秀夫氏: 国は対策を始める具体的な時期、費用については示していませんが、点検の結果、リスクが高い所から点検作業を進めるという方針にはなっているようです。ただ社会生活を維持しながら工事を進めるということになると、とくに都会部などでは簡単ではないと思いますね。

高島彩キャスター: ひとたび事故が起きると生活が立ち行かなくなりますし、それが長期化しますから、しっかりとした対策を進めていただきたいと思います。