4月26日にバチカンで執り行われた、フランシスコ教皇の葬儀。各国の首脳らが参列する中、いま世界が注目する2人が対面しました。停戦をめぐる交渉の行方はどうなったのでしょうか。
■ローマ教皇葬儀直前 トランプ×ゼレンスキー“15分”会談
4月21日に88歳で亡くなったローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇の葬儀が26日午前10時すぎに行われ、バチカンのサンピエトロ大聖堂の広場とその周辺は、25万人以上の信者らで埋め尽くされました。フランシスコ教皇は、13億人以上の信者をもつローマ・カトリック教会の最高指導者として、12年に及ぶ在位期間中、平和を訴え続けました。
ローマ・カトリック教会 ジョバンニ・バティスタ首席枢機卿 「フランシスコ教皇は『必ず解決策があるのであきらめてはいけない。世界の英知を集めて、いま起こっている破壊行為を止めさせなければならない』と訴え続けました」
世界160以上の国や地域の代表が参列するなか、葬儀には、2期目就任後、初の外国訪問となるトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領も参列しました。2人が顔をあわせるのは、前代未聞の大口論となったあの会談以来、およそ2か月ぶりです。実は、葬儀の前、2人は15分にわたり言葉を交わしていました。その場には、フランスのマクロン大統領とイギリスのスターマー首相の姿もありました。
フランシスコ教皇は亡くなる前日の復活祭のミサで最後のメッセージを遺しました。
ローマ・カトリック教会 フランシスコ教皇 「最も弱い立場の人々や、疎外された人々、移民に対して、どれだけの軽蔑がはびこっていることでしょうか。今日この日、わたしたちが希望と他者への信頼を取り戻すことを望みます。紛争当事者に呼びかけます。攻撃を止め、人質を解放し、飢えに苦しみ、平和な未来を切望する人々に、手を差し伸べてください」
葬儀に参加したトランプ氏とゼレンスキー氏はフランシスコ教皇のこのメッセージを、どう受け止めたのでしょうか。
■ゼレンスキー氏「1対1で多くを議論」
ウクライナメディアによると、26日もロシア軍による攻撃があったといいます。 モスクワ郊外でもロシア軍参謀本部の幹部が死亡する爆発事件が発生。ロシア側はウクライナの関与を主張しています。和平交渉が行われている中での過激な攻撃。こうした中で、電撃会談がありました。
教皇の葬儀前、バチカンで会ったトランプ氏とゼレンスキー氏。 まさに、ひざを突き合わせて話し込んでいる姿がありました。2人の身長差は約20センチありますが、トランプ氏は背中を丸め、ゼレンスキー氏と目線を合わせ話しています。横から見ると、目線の高さが同じなのがよくわかります。ホワイトハウスは、2人の会談が非常に生産的だったと発表しました。そしてゼレンスキー氏は会談の様子をSNSで明かしました。
ゼレンスキー大統領のSNS 「いいミーティングでした。1対1で多くのことを話し合うことができた。完全かつ無条件の停戦。戦争の再発を防ぐ信頼できる恒久的な平和。歴史的な会談になる可能性を秘めた非常に象徴的な会談」
■和平交渉に進展は?ゼレンスキー氏の発言の背景
25日、トランプ氏は和平交渉の手ごたえを語っていました。
トランプ大統領のSNS(25日投稿) 「ロシアとウクライナは合意に近づいている。主要な点のほとんどが合意された」
トランプ政権は今週、ウクライナの東部と南部の4州のうちロシアが占領している地域の実効支配を認め、さらにクリミア半島の支配を承認するなどロシア寄りとも取れる和平案を提示していました。
一方のゼレンスキー氏は。トランプ政権の提示は認められないと強調。しかし。
ゼレンスキー大統領(25日キーウ) 「武器を使ってクリミア半島を取り戻すための十分な武器がないという点についてはトランプ大統領の意見に賛成です。しかし、私たちと世界は、経済圧力という選択肢を持っています」
トランプ氏に一部賛同する姿勢も見せました。和平交渉に進展はあるのでしょうか。ゼレンスキー氏の発言の背景について筑波大学東野教授は…
筑波大学 東野篤子教授 「ウクライナ側が(トランプ氏と)話をする機会があるなら全ての機会を捉えて話したいと思っていると思います。停戦交渉でこれを飲まなければアメリカはいなくなりますよという脅しまでかけられている状況でアメリカにもう少しウクライナの立場を理解してもらうために何かのきっかけや機会があるのであればそれはすべて捉えたいということだと思うんですよね」
2月に激しい口論となった会談以来の再会を果たしたゼレンスキー氏。葬儀後もトランプ氏と会談を行うとしています。一方でクリミア半島などをロシア領とする案は認められないという姿勢は崩していません。では、決着はつくのでししょうか。
筑波大学 東野篤子教授 「ウクライナの国民感情を見てこれほどまでに不利な条件をどうして私たちが飲まなければならないのかと停戦を受け入れるメリットがむしろ、ウクライナ側にどこにあるのかという声が高まって来た場合に『アメリカからの仲介は受けません』というメッセージを出してしまう可能性もあると思います」
トランプ氏は、就任後24時間以内で停戦交渉をまとめると豪語していました。その数、53回。それがもう3か月過ぎています。
■日米「合意まであと一歩」トランプ氏 “円高ドル安”に期待の声も
一方、関税政策について進展が…
トランプ大統領(25日ワシントン) 「日本との関係は非常に良好で合意まであと一歩だ」
日米交渉に明るい兆しが見えてきたようですが相手はトランプ氏。為替問題に不満を持っているので、この先、何を言い出すかわかりません。トランプ氏が就任してからドルは下落しています。円高を期待しているのは、千葉県にあるステーキハウス。その名も…
アメリカンステーキ16イチロー 店主 相馬一郎さん(26日千葉・袖ケ浦市) 「アメリカンステーキイチローです。アメリカ産の牛肉を使ってお店とかもアメリカっぽくして」
実は、現在のお肉は、なんと、オーストラリア産。
アメリカンステーキ16イチロー 店主 相馬一郎さん(26日千葉・袖ケ浦市) 「アメリカ産の方が全然高くなっちゃいますよね。1.2倍とか3倍とかそのくらいの価格にはなりますよね」
お店のオープン直後は、1ドル100円前後になることもありました。それが、今140円前後。仕入れ価格が高くなったのでオーストラリア産に変更したと言います。ほとんどが輸入品に頼っているこちらのお店。円高になることに期待を寄せます。
アメリカンステーキ16イチロー 店主 相馬一郎さん(26日千葉・袖ケ浦市) 「このまま(牛肉の)価格が円高の影響でもっと下がってくれれば、お客さんにもまた(アメリカ産牛肉を)出せる日が来ると思うので、ほんとに期待しています」
政府は、アメリカと「為替レートは市場で決まる」という認識を確認し、今後も協議することで合意しています。
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高島彩キャスター: ウクライナを巡る和平交渉に関しては、新たな動きもありました。
板倉朋希アナウンサー: ロイター通信が報じたウクライナとヨーロッパ各国との新たな和平案ですが、領土問題についてはアメリカ案では「クリミア半島のロシア支配を承認する」としていますが、ヨーロッパ各国の和平案では、「陸海空で完全かつ無条件の停戦を前提として、領土に関する具体的な交渉は停戦成立後」としています。また、安全保障については、アメリカ案では「ウクライナのNATO加盟を認めず、ヨーロッパの有志国がウクライナの安全を保証する」としていますが、ヨーロッパの和平案は「NATOの条約に準ずる形で、アメリカを含む加盟国がウクライナを守る」ことを求めています。
高島彩キャスター: 全く異なる和平案が出てきたという感じですけれども、柳澤さんこの後どうなっていくんでしょうか。
ジャーナリスト柳澤秀夫氏: 領土に関するウクライナ国民の世論調査見ると、「領土の一部を放棄する、つまり領土的な譲歩をしてもいい」という声が急に増えてきてるんです。一方「領土を放棄すべきではない」という声は下がっていて50%ほどになっているんです。またキーウ市長も、「和平のためには一時的に領土を諦める必要があるかもしれない」、ゼレンスキー大統領も「クリミア半島の奪還のために武器が必要だ」と、これは事実上、“クリミア奪還が困難である”ということを認める発言もしてるんですよね。こういった変化を踏まえた上で、ウクライナとヨーロッパの和平案が出てきているということなんですが、ただアメリカの提案があまりにもロシア寄りですから、これで妥協点を見いだすのはそう簡単ではないと思います。
高島彩キャスター: そうですよね。そう簡単ではないように感じますが、トランプ大統領は「合意は近い」というような楽観的な発言もしていますがそのあたりは?
ジャーナリスト柳澤秀夫氏: トランプ大統領は今月の29日に大統領就任100日を迎えるんですよね。それを控えてウクライナ和平の仲介工作でそれなりの成果があったということを誇示したい、そういう思惑があることははっきりしてるんです。ですからその思惑を軸にして、各国の駆け引きが活発化してきてるっていうのが今の現実だと思います。