光熱費の高騰や物価高を受け、患者に24時間対応する病院の経営が厳しくなっています。病院の収入に当たる医療費は国が決めるため、価格転嫁が難しい現状があります。
宮城県の石巻赤十字病院は、ベッド数460床を誇る地域医療の拠点です。
この病院が今、経験のないコストアップにさらされています。前年度の水道光熱費は前の年に比べて2億円近く増え、1.5倍以上に膨らみました。
内訳は電気代で約1億2000万円、ガス代が約7400万円の増加です。
更に、5月から病院で使う電気料金が約2割引き上げられました。2023年度の電気代は、前年度より更に6000万円上乗せされる見通しです。
石巻赤十字病院千田康徳事務部長「CT撮影装置です。電気代が高かったとしても止めるわけにはいかない。患者の治療を優先するためには、必要な装置と思っております」
院内での節電には限界があります。患者の体調悪化を防ぐため、24時間空調機器で温度や湿度を保つ必要があるほか、人工呼吸器などの命に関わる医療機器も多く使用しています。
医療機器のほか、マスクやガーゼといった消耗品などの価格も上昇しているため、賃上げにお金をまわす余裕はありません。
石巻赤十字病院千田康徳事務部長「もともと人件費率が高い、病院はそうなので。そこに賃上げで人件費にお金を多くまわすということは、今の状況ではなかなか難しい」
病院の収入は、国が2年に一度改定する診療報酬です。去年4月に変わりましたが、光熱費が高騰した分は盛り込まれていません。
上昇した価格への対応として、一般的には価格転嫁が考えられますが、病院がその価格を医療費として患者側に転嫁することはできません。
石巻赤十字病院千田康徳事務部長「これって悪循環なんですよね。ここでやっぱり病院の経営がそこで苦しくなって、十分な人材が確保できない。そうすると、患者さんにより良い医療、質の高い医療を提供できなくなってくる。病院だけが努力しても何とかなる問題ではない」
石巻赤十字病院は前年度、宮城県と石巻市の支援を受け補助金約1300万円を受け取りました。しかし、1カ月当たりの水道や光熱費の上昇額は平均で1500万円を超えていて補助金ではひと月分にも及ばない状況となっています。