宮城県石巻市雄勝町で2022年から始まった、漁村留学です。都市部に住む小中学生が1年間共同生活を送りながら地元の学校に通う取り組みで、2年目は2人の小学生が参加しています。

 石巻市雄勝町の複合体験施設、モリウミアスです。
 漁村留学が始まる4月、共に暮らす仲間の到着を今か今かと待ち構えているの、神奈川県出身の小学4年生、池田小夏さんです。
 やって来たのは、東京都出身の森村咲紀さん。小夏さんよりひとつ年上の小学5年生です。

 漁村留学を企画しているのは、モリウミアスを運営する公益社団法人です。都市部の子ども向けに2015年から短期滞在プログラムを実施してきましたが、2022年から新たに1年間親元を離れて生活する留学の取り組みを始めました。

 池田小夏さんの母親「(年長から来ていて)3年生の夏休みも来て、そのあと秋にももう1回、1泊のプログラムに来たんです。その時に隣に漁村留学生がいるのを見ていて、彼女の中で火がついたのか『え、行きたい』って言いだして」
 森村咲紀さんの両親「(2022年)隠岐の島に行って」「そこで親子留学というのがあって。共働きなのでさすがにちょっと行けないなということで(ここを見つけた)」「めちゃめちゃさみしいですよ」
 小夏さんと咲紀さんは留学2年目となる中学2年生の川村貴羽さんと一緒に、料理や洗濯、風呂たきなど全てを自分たちで行うことになります。

小学生2人が漁村留学

 留学開始から3カ月。2人の朝は毎日午前6時20分から始まります。この日の朝は皆で世話をしているひよこの餌やりと掃除を担当するのが咲紀さん。
 小夏さんは、先輩の貴羽さんと一緒に朝ごはんの準備です。
 池田小夏さん「(朝は)野菜切るのが大変」
 川村貴羽さん「小4なのにできててすごいなって」

 宿直のスタッフと一緒に朝ごはんを食べると、スクールバスに乗って10分ほど離れた石巻市立雄勝小学校に向かいます。
 全校生徒21人の雄勝小学校。2人はすっかり学校に溶け込んでいます。
 池田小夏さん「みんな優しい」
 クラスメート「(小夏さんは)分からないこととか教えてくれるし(授業中に)話とかも進めてくれる。頭のいい女の子でまぁ人気者です」
 この日の5時間目は、地元の人の指導の下、雄勝町伝統の踊り雄勝法印神楽を学びます。こうした地域ならではの学びがあるのも、漁村留学の魅力のひとつです。

小学校にも溶け込む

 2人が学校から帰ってくるのは午後4時半ごろ。学校の授業が終わっても、夕食の準備や風呂たきなど、やらなければならないことはたくさんあります。この日の風呂たき担当は咲紀さん。
 森村咲紀さん「空気をちゃんと入れるところを作らないと。あと上に燃えるものを置いておかないと」
 ニワトリの世話も大切な仕事のひとつですが、卵を運び出している隙にニワトリが脱出。格闘すること6分。何とか全て、鶏舎に戻すことができました。

 身の回りのことは、全て自分たちでやらなければならない自然の中での暮らし。3カ月ほどが経ち、スタッフの安田さんは2人の成長を感じています。
 モリウミアス安田健司さん「(時間の使い方の)こつをつかんできているような印象を受けますね。前はそれだけやるだけでいっぱいいっぱいだったけど、今は隙間時間で本を読んだり。苦なくこなし始めたんじゃないか」

 9日、子どもたちは近くにある羽坂地区と熊沢地区に向かいました。地域の人たちに自分たちのことを知ってもらおうと、手作りの漁村留学通信を配布するためです。
 住民「今度来た人?」池田小夏さん「(雄勝の)みんなとしゃべれるのが楽しい」

地元の人たちと交流

 震災前4000人だった人口が、1000人にまで減少した雄勝町。過疎化や高齢化が進む地域の人との交流は、漁村留学の目的のひとつでもあります。
 雄勝町に住む藤井宮子さん「ここは本当に年寄りしかいないんですよ。子どもの声もしないから、だからうれしいよね」
 雄勝町に住む阿部ひさこさん「人口が少なくなるでしょ。だから大変いいことだなと思って」

 漁村留学は2024年3月まで。地域との交流をさらに深め、そして成長していくことができるでしょうか。
 池田小夏さん暮らすのに難しいことが面白いから、毎日面白いことをしてみたかった」
 森村咲紀さん「これを終わった時には、自分のことを自分でちゃんとやったりとかいろいろなことに挑戦したからそれを生かせることをしたい」