秋の褒章を受章した料理人です。日本料理一筋に半世紀余り、震災を乗り越え地元産の旬の食材と生涯現役にこだわり続けます。
仙台市宮城野区の日本料理店、多津味の高橋正行さん(71)は、全国的なコンクールで裏打ちされた技術と地産地消への貢献、後進の指導が評価され黄綬褒章を受章しました。
高橋正行さん「まさか僕が受章とは思ってもいなかったですからね。はい」
宮城県東松島市生まれで、母親たつみさんが勤め先の旅館や自宅で包丁を握っていた背中を見て、中学生のころには料理に興味を持っていたと振り返ります。
高橋正行さん「鶏もいたので卵も手に入るし、自分なりに卵焼きとかね」
料理人へと導いてくれた母親たつみさんは、震災で亡くなりました。その名にちなんだ日本料理店、多津味は震災で営業を休止しましたが1カ月後に再開しました。
高橋正行さん「やっぱり、やるしかないんですね。(お客さんで)毎日ほとんどいっぱい、震災後はいっぱい来ていただいたですね」
東日本大震災から12年8カ月が経過しました。
高橋正行さん「思えば、あっという間ですね」
受章が発表された11月2日も厨房に立ちました。地元の旬の食材を生かし、巧みな包丁さばきと手間暇をかけた調理で重層的な味わいと季節感を表現します。
ヒラメやカブラのお椀、タイや海老芋、ゴボウを使った焚き合わせです。
高橋正行さん「今ちょうど松に松ぼっくりが出てるんですね。松葉が散っていく時期なんで、そのように作ってみたんですけどね」
高橋さんは、独立前に宮城県内外のホテルで料理長を務めるなど次世代の料理人を数多く育ててきました。
弟子の1人はわが子同様に接してきたおいで、多津味の料理長を託した車塚啓さんです。
車塚啓さん「包丁を持っている背中を見て育ってきたので、必然とそういう流れで(料理人に)なりました。常に探求心を忘れずに情熱のある料理人だと思いますね」
高橋さんは褒章の受章が決まっても「日本料理は奥が深く極められてはいない」と言います。
高橋正行さん「まだまだ勉強です。終わりはないですね」